Jackass Presents: Bad Grandpa


jackass クソジジイのアメリカ横断チン道中  (2013年11月)

最初ロバート・レッドフォードが熱演していると評判の海難劇「オール・イズ・ロスト ~最後の手紙~ (All Is Lost)」 を見に行こうとしていたのだが、ちょいと目にした評が、ヴェテランの海の男がいざという時のなんの準備もしないで海に出ていくことの不合理さ、あり得なさをクソミソに貶していて、そうなのかと、いきなり見る気が萎む。普段は見ようと思う映画の評に先に目を通すことなどしないのだが、たまたまそうしてしまっ た時のネガティヴな意見というのは、経験からしてだいたい当たる。 

 

さらにこの手の漂流サヴァイヴァルものは昨年もアン・リーの「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日 (Life of Pi)」を見ており、数年に一度の頻度で見れば充分という気もし、先頃海と宇宙での遭難という違いこそあれ、アルフォンソ・クアロンの「ゼロ・グラビティ (Gravity)」を見たばかりでもある。とまあ、シリアスなドラマを見ようとしていてそれがおしゃかになった時の反動で、まったくノリが正反対のジョニー・ノックスヴィル率いるジャックアス軍団の最新作、「jackass クソジジイのアメリカ横断チン道中」に食指が動いたのであった。 

 

しかし「ジャックアス」も長い。私がこのサイトで最初に「ジャックアス」を採り上げたのは2000年、既に13年も前の話だ。さすがにMTVではもう放送はしてないが、まだこうやって新作映画が公開される。13年間もこういう過激なギャグをやり続けてきたジョニー・ノックスヴィルが辿り着いたのは、年老いてもなお同様のことをやっているという、最高に懲りないジジィなのであった。 

 

今回ノックスヴィルはそのジジィ、アーヴィングに扮している。時に被りものをしたりすることはあっても、基本的に誰かを引っかけるというよりも自分たち自身 で完結する身体を張ったギャグが基本だった「ジャックアス」が、変装して最初から誰かを騙すことを前提として話を作る。これは進化なのか退化なのか。 

 

冒頭、アーヴィングの長年連れ添った老妻が死ぬ。ずっと首根っこを押さえられていたアーヴィングは、嬉しくて仕方がない。しかし葬式で思わぬハプニングがあったことから、妻の死体をクルマのトランクに詰め込んで、孫のビリーと共にビリーの父のいるサウス・カロライナまで旅することになる‥‥ 

 

最初この設定で、これはもしかしたらサム・ペキンパーの「ガルシアの首 (Bring Me The Head Of Alfredo Garcia)」か、はたまたもしかして「バーニーズ/あぶない!? ウィークエンド (Weekend at Bernie's)」みたいな死体と共にのジジィと孫の道行きか、これはもしかしたらとんでもなく面白いものができたかも、と思わず期待したのだが、実はでき上がったのはとんでもなくお下劣な、最近ここまでばっちい下ネタは見たことがないというくらいキョーレツな下ネタ満載映画だった。なんだなんだ、「ジャックアス」っていつの間にこんな下方修正していたんだ。 

 

しかも今回の趣旨は下ネタでまったく赤の他人をひっかけるというもので、私は最初、引っかかる者も含めての演出なんだろうと思っていたのだがそうではなく、 最後のクレジット・ロールで、本当に何も知らない一般人を下ネタで引っかけていたと知った。あんた、天下の往来やバーやダイナーで、ちんぽこ垂れ下げたり ウンコぶちまかしたりしたら、これは犯罪としてとらえられて逮捕されてもしょうがないと思うのだが、どうだろうか。それでも、これはギャグでした、あっ はっはーと種明かしして皆で笑い合えるのは、民度の高さを表しているのだろうか。うーん、よくわからない。一部では種明かししても明らかにまだ不愉快面し ている者もいた。むしろこちらの方が正当な反応という気がする。 

 

特殊メイクで完全な別人ジジィになったノックスヴィルはともかく、同様に驚かされたのが、そのババァ妻に扮して見事な死体振りを見せてくれたキャサリン・ キーナーだ。キーナーは昔から市井のごく普通の家庭の妻なんて役をやらせるとこれ以上なくはまる。最近では体重や年齢も自由自在という感じになってきて、 「キャプテン・フィリップス (Captain Phillips)」に出てた時も、私は見ている間中これがキーナーとはまったく気づかなかった。そしたら今回は歳も生死もごまかして、私は今回も同様に騙された、というか気づかなかった。さり気なく彼女、すごい女優だよなと思わざるを得ない。 

 

それにしても世界中の誰が喋って誰が聞いてもジャックアスでしかない単語を、なんで日本だけはジャッカスと言うんだろうと常々思っていたが、今回、邦題でジャッカスという日本語を引っ込めてJackassと英語表記にしたのは、間違いを訂正する前向きの気持ちの現われと受け止めていいんだろうか。 










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御年86歳のアーヴィング・ジスマン (ジョニー・ノックスヴィル) の長年連れ添った妻エリー (キャサリン・キーナー) が死んだ。もちろんアーヴィングには悲しみの感情なぞはなく、ここへ来てやっと自由になれたことに嬉しさがいっぱいだったが、エリーの葬式を営んでいる最中に娘のキミー (ジョージーナ・ケイツ) が現れ、ドラッグ関連で刑務所に逆戻りしないといけないので息子のビリー (ジャクソン・ニコル) の面倒を見てくれと言い残して去る。アーヴィングはビリーの父チャック (グレッグ・ハリス) と連絡をとり、ビリーを引き取ると国から養育費が支給されると知ったチャックは、アーヴィングにサウス・カロライナの自分のところまで連れてきてくれと要請する。かくしてアーヴィングとビリー、そして車のトランクに積んだエリーの死体との珍道中が始まるのだった‥‥


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