Baby Driver


ベイビー・ドライバー  (2017年7月)

カー・アクションはある程度アクション映画の基本と思っているので、その手の映画を見るのに吝かではない。ただしこの場合、実写撮影というのが基本条件だ。 

 

CGによるカー・アクションは、全面的に却下というわけではないが、見る作品を選ぶ。近年の「ワイルド・スピード (Fast and Furious)」フランチャイズも、マンガとして見ると面白いとは思うが、なんとなく段々距離を置くようになった。これならいっそ「マッハGoGoGo (スピード・レーサー/Speed Racer)」でいいと思ってしまう。 

 

007シリーズでも時々海を潜ったり奇想天外なことをするが、やはり基本は実写撮影だ。他に今でも確実に面白いカー・アクションを見せてくれるのは、ジェイソン・ボーン・シリーズだろう。「ミッション・インポッシブル (Mission Impossible)」ももちろん悪くない。最近は「ジョン・ウィック (John Wick)」が新たなシリーズとして頭角を現してきた。 

 

単体としては、近年 (といっても既に6年も前だが) の「ドライヴ (Drive)」が記憶に残っている。考えたら、ライアン・ゴズリング扮する「ドライヴ」の主人公も、職業は逃がし屋だった。そういや「ザ・ドライヴァー (The Driver)」という、やはり逃がし屋が主人公のカー・アクション映画もあった。むろんカー・アクションにうってつけの商売であることは言うまでもない。 

 

「ベイビー・ドライバー」の主人公ベイビーの場合、ほとんど自ら進んで人とコミュニケイションをとることもなく、常にサングラスをかけて耳にイヤフォンを差し込んで四六時中iPodで何か聴いている。自宅での趣味は、外で録音した音をサンプリングして自分の音楽ライブラリを拡充することだ。 

 

ほとんど人と会話せず、サングラスをかけて目も合わさず、耳にイヤフォンが刺さって人の話を聞いているようにも見えないため、一見知恵遅れのようにも見える。しかし家では啞のご老体の世話をしているため読唇術が使え、実は相手の言う一言一句をすべて完璧に記憶して理解している。 

 

最近は人は音楽はだいたいスマートフォンを用いて聴いている者が多いため、iPodでクリック・ホイールをかちかちと回しながら音楽を聴くという行為が、既にノスタルジックというか、逆に新鮮に見える。そのベイビーの聴く、いかにもアップ・テンポな曲に合わせて観客も乗れるところがミソで、なかなかつくり方がうまい。 

 

冒頭のつかみのカー・アクションでベイビーがドライヴするのは真っ赤なスバルの四駆で、予告編でも使われている一番印象的なドリフト、というか後ろ向きでトラックの横を抜けて行くシーンや、同じく赤い車3台を使ったシーン等、最初から魅せてくれる。 

 

出演は主人公ベイビーに扮するのが「ダイバージェント (Divergent)」のアンセル・エルゴート、他にケヴィン・スペイシー、ジョン・ハム、エイザ・ゴンザレス、ジェイミー・フォックスと、脇に微妙にピンポイントからずれたような印象を与えるキャスティングで、私個人としては、冒頭に出てきてそれっきりのジョン・バーンサルが最もはまっているように感じた。しかし実は最もよかったのはベイビーが惚れるデボラ役のリリィ・ジェイムズ。「シンデレラ (Cinderella)」より今風のこちらの方が何倍もよく感じた。演出は「ショーン・オブ・ザ・デッド (Shaun of the Dead)」のエドガー・ライト。 

 

この映画、今年は火曜に当たっていた独立記念日の休日の日中に見たのだが、まず、チケット代が7ドル50セントと、このマルチプレックスの通常の週末のマチネーよりも2ドルも安い。たとえ月-金でも祝祭日だと割り引き利かねーかもと思っていたら、それどころか週末より割り引き率が高い。それだけでもだいぶ得したと思っていたら、入り口のもぎりのにーちゃんから、はいといってポップ・コーンの紙袋を手渡される。なんと火曜日はフリー・ポップ・コーン・デイだった。私がすげえラッキーと無料のポップ・コーンをつまみながら「ベイビー・ドライバー」を見ていたことは言うまでもない。 

 

しかもその日はもう一つおまけがあって、映画見た後に隣りのモールでうちのネコのドライ・フードを買った。実はe-メイルでクーポンが来てたからこれを使おうと思ってのことだが、これがまたえらいお得なクーポンで、使ったら定価20ドルのドライ・フードがタダになった。あまりに信じられなかったので、本当に金要らないのか訊いたら要らないと言う。ここまで太っ腹なクーポンは初めてだ。 

 

かつてTLCで「エキストリーム・クーポニング (Extreme Couponing)」という、クーポンを使って買い物を限りなく無料に近づける家庭に密着するリアリティ・ショウがあったが、それを思い出した。彼らはいつもこんなお得気分を味わっていたんだな。 

 

ついでに言うとその日はその後、スーパーをはしごして買い物したら、一軒目でチェリーが1パウンド1ドル99セント、次の店でブルーベリーが1パイント1ドル49セントと、私の大好物がこれまた破格の安さで、いくら今が旬とはいえ、半端じゃなく安い。しかも共に大粒。共に大量に買い込んで帰途についた。この日はなんかえらく得した気分で、これも「ベイビー・ドライバー」さまさま、やはりカー・アクションは実写に限る、とキッチンで買ったばかりのブルーベリーとチェリーを立ったままばくばく食いながら、一人で納得していたのだった。


 








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ベイビー (アンセル・エルゴート) は雇われのプロのドライヴァーだ。ボスのドク (ケヴィン・スペイシー) が集めた仲間で銀行や現金輸送車を襲い、彼らを無事逃がすのがベイビーの役目だ。ベイビーは幼い時に仲の悪い両親が喧嘩しながら運転して事故を起こし、天涯孤独の身になった。元々音楽好きのベイビーは以来特に音楽に逃避するようになり、ほとんど外界を遮断してどんな時でもiPodで何か聴いている。ある時ベイビーはダイナーでウエイトレスのデボラ (リリィ・ジェイムズ) と出会う。二人は親しくなるが、いったんこれまでのツケは払ったとしてベイビーを自由にする素振りを見せていたドクが、また新しく仕事をオファーする。今度こそこの仕事が済めば、晴れて自由になれるはずだった。一度仕事をした者と再度仕事はしないというのがドクのポリシーだったが、最後の大仕事に、かつて一緒に仕事をしたバディ (ジョン・ハム)、ダーリン (エイザ・ゴンザレス)、バッツ (ジェイミー・フォックス) が再び呼び戻される‥‥


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