Autumn Tale

恋の秋  (1999年7月)

エリック・ロメールの「四季の物語」最終作。彼はもう80を越えるくらいの年齢のはずなのに、いまだにこんな初々しい映画を撮るのかと、驚嘆の限り。主人公が中年で初々しいもないのだが、ロメールの映画はいつも初々しいのだからしょうがない。まいるよなあ。今回は舞台が完全に田舎になっているので、登場人物はフレンチにしては皆垢抜けなく、服のセンスもあまりいいとはいえないが、これはわざとやっているのだろう。ほとんど化粧気もないし。


冒頭の屋外シーンで、逆光になった人物に光を当てず、ほとんど顔が黒くつぶれて表情が見えないのを平気で映すところが、ヨーロッパだなあという感じでとても感じがよく、逆に安心してのれて見れた。ハリウッドなら撮影監督は首を賭けても絶対ライトを当てることを主張するだろう。新聞広告で探した友人の恋人候補者に、もう一人男を絡ませるという展開もうまい。欲を言うと登場する女性が皆あまりにも普通過ぎて、せめてもう少し可愛かったら、と思うのは私だけだろうか。クレールとかポーリーヌとかあんなに可愛かったじゃない。いずれにしても毎度のことながらフランス人て本当に色恋だけで人生終わるんだなと感じさせられる一編。


実はこれはロング・アイランドのわりと引退した人が多く住んでいる地域の映画館で見たんだが、「恋の秋」はエンド・クレジットに映像が被さるため、皆場内が明るくなるまで出ていかなかった(アメリカでは普通、エンド・クレジットになると皆ぞろぞろと館内を出ていき、最後まで見ている人などほとんどいない)。場内に明かりが点いて出ようかと後ろを振り返って、観客が皆じじばばばっかりだったのでびっくりした。80歳の映画監督が作った中年が主人公の恋愛映画をリタイアしたじじばばばかりが見て、にこにこして「very French」とか言いながらぞろぞろゆっくりと出口に歩いて行くのに挟まれながら、私までにこにこして映画館を後にしたのでした。






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