アトランタ・プラスティック   Atlanta Plastic

放送局: ライフタイム

プレミア放送日: 7/31/2015 (Fri) 22:00-23:00

製作: インチュイティヴ・エンタテインメント

製作総指揮: メシェル・コリンズ、ケヴィン・ディル、アダム・マタロン


内容: アトランタの整形クリニックに密着する。


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Atlanta Plastic


アトランタ・プラスティック  ★★1/2

アメリカには人の容姿をよくしようとするメイクオーヴァー番組が、それこそ履いて捨てるほどある。単純に服のセンスのない者におしゃれの仕方を教えるものから、激太りの者を運動させて痩せさせるもの、整形手術によって外見を変えるものまで、それこそ多種多様なメイクオーヴァー・リアリティが、ピンからキリまで編成されている。


そういうリアリティ・ショウだけでなく、だいたい日中のトーク・ショウには、こんなこんなで痩せました、綺麗になりました、なんていうコーナーが必ずと言っていいほどある。おかげでこちらはこの手の番組にはかなり食傷している。


だから最初「アトランタ・プラスティック」の話を聞いた時も、特に何も惹かれるものは感じなかった。どうせいつもの十把一絡げのその手のリアリティ・ショウの一つだと思っただけだ。アトランタの整形クリニックに密着するという体裁をとっているところを見ると、一番安易に手術で直してしまおうという手合いのやつか、あまり好きじゃないな。


実際、番組は予想通りで、例えば体重過多の人間をエクササイズや食餌療法ではなく、脂肪吸引手術によって痩せさせるという、最も安易な手段をとる。あるいは、女性にシリコンを埋める豊胸手術を行う。鼻を高くしたり逆に鷲鼻を直したり、最近流行りらしいブラジリアン・バットリフトというヒップアップ手術等、なんだかなあと思うものが大半を占める。また、アトランタという土地柄もあり、登場する者は医者、患者を含め、ほとんどが黒人だ。


が、しかし、「アトランタ・プラスティック」は、実はそればかりではない。単に努力をしないで手術によって痩せようとか綺麗になろうとか考えている者ばかりではなく、もっと切実な悩みを抱えている人間の面倒も見る。


例えば番組第2回に出てくるある男性はトランスジェンダーで、自分は本当は男だと思っているが、胸にはれっきとしたおっぱいがあり、それが苦痛でしょうがない。小さい頃に母から拒絶されたつらい経験もある。それで乳房除去手術を受けるのだが、その時、乳首を残して内部を取る形にするか、乳首もろとも切りとって、後で飾りの乳首をくっつけるかの二つの方法がある。それでだいぶ見かけに違いが出るらしい。男性は後者を選び、術後、やっと念願かなっておっぱいから解放された男性は、感極まった面持ちで涙を流している。


トランスの場合、性を変えるには外科手術によるしかないから、この場合はクリニックに来るのもしょうがあるまい。一方、乳房の話ばかりして男性器の話はまったく出なかったが、おちんちんはつけるのだろうか。乳房がまだあるのにおちんちんは既についているということはないと思うのだが。あるいは両性具有だとか。よくわからなかった。


また、そもそもの第1回の冒頭に登場する中年女性には、愛する夫と4人の成長した子供たちがいる。それはそれで仕合わせな人生だと思えるが、しかし、彼女は緩み始めた自分の身体に自分が我慢できない。手術を受けることに懐疑的な夫に対し、これはあんたのためではなく、自分のためなのだと一蹴する。そして彼女は緩んだ体を引き締めるための脂肪吸引、豊胸手術だけでなく、女性器のリコンストラクションの手術を受けるという。


ヴァギナのリコンストラクション -- 再建、再生って、なんだ、それ。初めて聞いた。レイプされたヴァージンが、処女膜再生手術を受けるという話は聞いたことがないではないが、しかしヴァギナ再生手術って、いったい、どこをどうするんだ。夫はさすがに妻がそこまでするとは思ってなかったようで、手術前の医者とのカウンセリングで初めて聞いて、思わず逆上する。


彼女は要するに自分の容姿に自信が持てなくなってきているようで、そういうのを一掃したいのだろう。しかし、それでその一部始終をとらえるTVに出るという発想もよくわからん。ヴァギナ再生というのは、医者曰く、要するに女性器の周りの見かけをよくするだけということで、内部の締まりとか、そういうのはまた別の医者の仕事と言っていた。まあ、手術後は、スタイルがよくなったように見えることは確かだし、きっとおまんこの見かけもよくなったんだろうが、しかし、ねえと、私も夫のように思わざるを得ない。そこまでする必要が本当にあったのか。とはいえ、これは確かの個々人の問題で、もしそれを本当にしたいのなら、他人が口出しする余地はない。彼女の場合、必要だったのだろう。


一番インパクトがあったのが、かなりガタイのいいヒップ・ホップ・アーティスト兼アメリカン・フットボールのプレイヤーで、この男、体格の割りにはイチモツが小さい。要するに短小だ。一般的に言って、黒人男性はペニスがでかい。時々公共のトイレで小用を足していて、ふと横を向いた瞬間に黒人が並んでてそれが見えたりすると、おわ、でけえと、思わず彼我の差を実感する。


それがこの黒人男性、おちんちんが親指サイズくらいしかないらしい。黒人でもアジア人と較べても短小というモノしか持ってない場合、その辛さはかなり切実だろうと思う。高校の頃、フットボールの後にみんなでシャワーを浴びてるとバカにされたそうで、小さいことが仲間内に知れ渡っており、今でも笑い者になっている。それで思い余ってクリニックを訪れ、ペニス増長手術を受けようと決心するのだ。


しかし男性器の場合、大きくしたいからといって、ことは単純ではない。女性のおっぱいのようにシリコンを埋めればそれで済むというわけではない。あれは大きくなったり小さくなったりと機能しなければならないのだ。さらに万が一感染症にでもかかった場合、その部分を切り取ればそれで済むという問題でもない。手術がうまく行かなかった場合の代償は倍返しでは済まないくらい大きく、しかも後戻りは利かない。ちょうどローカル・ペイパーのメトロを読んでいたら、ペニス増長手術が失敗して死亡した男性の話が載っていた。


リスクが大き過ぎるため、医者もこの手術には乗り気ではない。男性はたとえ短小だとはいえ、機能自体に問題があるわけではなく、ちゃんと性生活も行え、子供も二人いる。女性が満足するかどうかは不明だが。早く動いてみたりゆっくりしたりといろんなことを試してみたんだと言っているところを見ると、たぶん妻は満足はしてなさそうだ。


いずれにしても医者は、よく考えてみるよう男を諭す。男もメリット・デメリット、リスクとリターンを秤にかけ、結局手術を断念する。ラッパーでもある男は、この無念を歌にして、ミュージック・ヴィデオを製作する。オレのチンポコは小さいけれども、人生なんとか乗り切って行くんだ、みたいな歌詞をヒップ・ホップのリズムで歌うのだが、私はTVを見ていて爆笑してしまった。さすがに本職というだけあって、この男、結構歌がうまい。しかし、それにしても身体の悩みというものは色々あるものだと思わされる。










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