放送局: ABC

プレミア放送日: 2/13/03 (Thu) 20:00-22:00

製作: テレピクチュアズ・プロダクションズ、ネクスト・エンタテインメント

製作総指揮: マイク・フレイス

共同製作総指揮: スコット・アインジガー、マイク・ニコルズ

監督: ケン・フュークス

ホスト: J. D. ロベルト

ジャッジ: ランドルフ・デューク、レイチェル・ハンター、ロレンゾ・ラマス


内容: フェイス、ボディ、セックス・アピールという外見だけを採点することによって、アメリカで最もセクシーな人間を選出する。優勝者は賞金5万ドルを獲得する。


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いわゆるビューティ・コンテストなるものを見なくなって久しい。ミス・ワールドを決める世界大会は今でもネットワークで中継されているのだが、アメリカに来てしばらくして、そういうコンテストで優勝する者よりももっと美人が周囲に掃いて捨てるほどいるのに気づいてから、この種のコンテストにはまったく興味がなくなった。


だいたい、昔からこの種のコンテストは、いやにお利口さんぶった参加者が、いかにも優等生的な受け答えをするのが常で、とにかく見ててまったく面白くない。それに、本当の美人というものは本人も周囲もそれをわかっているから、こういうコンテストには出ない。出る必要がないのだ。それが良家の子女だったりなんかすると、こういうコンテストに出ること自体、家の体面を汚すこと以外の何ものでもないだろう。


多分そう考えている者が私以外にも大勢いるのだろう、ABCが中継しているミス・ワールド・コンテストの近年の視聴率は、下がる一方である。コンテスト自体がいきなりなくなるということも考えられないが、はっきり言って、現在ではコンテストを開催する意味はほとんどないと私は思っている。結局各地のこの種のビューティ・コンテストの優勝者は、何か地域の催し物があると、パレードで車に乗って手を振ったり、どこぞの慰問をして写真に収まって一時雑誌のグラヴュアを飾るのがほとんど唯一の仕事で、そういう、何か華を必要とする時にだけ担ぎ出される応援要員として以外、存在価値はほとんどない。あるいは履歴書を作成する時、どこぞのビューティ・コンテストの優勝者、なんて一行があると、確かに他の応募者よりは目に留まる確率は高くなるかもしれないが、せいぜいそれくらいが関の山だろう。


つまり、私はこんなコンテストには意味がないと思っていた。まったく綺麗事で胡散臭く、だいたいができレースじゃないのかというのが、私がこの種のコンテストに対して持っていた先入観であった。今でもそう思っているし、ミス・ワールドあたりになると、完全に政治的な思惑で優勝者が決まるのがはっきりわかるので、よけい面白くない。だったら、せめて綺麗事で選ぶのは止して、ただ単純にプロポーションのバランスで選ぶとか、万人が納得できる基準をどこかで導入するかした方が、まだましなんではないかと思っていた。だいたい、ミス・ワールドに出る参加者より、FOXの勝ち抜きリアリティ・ショウの「ジョー・ミリオネア」に出ていた参加者の方がよっぽど美人で、うまくすれば彼女らのあられもない姿が見られるというのに、今時ミス・ワールドに興味を持てる視聴者なんかいないだろう。


そういう視聴者の声を聞き届けたかのか、このほどABCが編成してきたのが、この「アー・ユー・ホット?」である。ただただ、顔、ボディ、セックス・アピールの外観だけを採点して、アメリカで最もセクシーな人間を決めてしまおうという、この言語道断な設定が、いっそくだらなくていい。いずれにしたって、どう考えても万人が納得する美男美女なんてものは存在するはずがないし、さらに知性なんてよくわからない判定材料を付け足すミス・ワールドなんかよりは、エンタテインメントに徹すると製作者が自分たちで宣言しているこちらの方が、いっそ好感が持てる。それに、最終的に優勝者を決めるのはジャッジではなく、視聴者の投票だ。こちらの方がまだ民主的だと言えるだろう。


番組は、まずアメリカを4つの「ホット・ゾーン」に分割、それぞれで男女16人ずつ、計32人の予選通過者を選出する。その32人は、今度は客を集めた会場で、セレブリティ・ジャッジによって「ホット (Hot)」かそうでない「ナット (Not)」かの烙印を捺され、「ホット」に選ばれた16人がいよいよ水着審査へ進む。そこで今度は念入りに、ジャッジがフェイス、ボディ、セックス・アピールのそれぞれを10点満点で採点し、その結果により、男女4人ずつ、計8人を選出する。その後4つのゾーンで選ばれた8人ずつ、計32人を交えて決勝ラウンドを行い、最後には視聴者の投票によって、晴れて全米一のセクシスト・パーソンを選び出すという趣向だ。


もちろん、それでもこんなのに公平なぞ期すべくもないから、こちらもエンタテインメントとして割り切って見ているのだが、それでもやはり、結構ジャッジと私の美的感覚には大きな違いがあって、私がなら選ぶなと思っているのが落ちるし、まさかこんなのがと思っているのが通ったりする。まあ、そんなもんでしょう。それでも、結果的に選ばれた者は、それなりに粒が揃っているように見える。


特に私が気になるのは、どうしてもこの国ではおっぱいの大きいことが、イコールセクシーと思われているようなところで、ポイントは、どうしても出るところは出て、引っ込むところが引っ込んでいることにある。しかし、私はどうしても作り物めいた巨乳にはセックス・アピールなど感じない。いかにも人工的で、シリコン入っているんだろうと思われるおっぱいなんかよりは、小振りでも形が整っている方が感度もよさそうでずっといいよと思っているのだが、ジャッジはずばり胸が足りないね、などと平気で口にしている。


そのセレブリティ・ジャッジとして毎回登場するのは、デザイナーのランドルフ・デューク、モデルのレイチェル・ハンター、俳優のロレンゾ・ラマスの3人で、この3人が誰だ誰だかすぐわかるのは、結構のアメリカ芸能界通である。デュークは、ジェニファー・ロペスやブリトニー・スピアーズのドレスとかをデザインしているそうだが、私はまったく知らなかったし、ハンターは今ではモデルという職業よりも、ロッド・スチュワートの前妻ということでの方がよく知られている。今見ても、まあ、昔は綺麗だったのかも、くらいの印象しか持てない。ラマスは「レネゲイド (Renegade)」の俳優で、こちらも今では過去の人だ。こういう、はっきり言って2流のセレブリティばかりがジャッジとなってしまうのは、まあ番組の内容上しょうがないだろう。本当に今人気のあるセレブリティがこんな番組のジャッジなど引き受けるわけもないし。ついでに付け加えると、ホストのJ. D. ロベルトもまったくの無名で、聞いたことすらない。


とはいえ、だからこそ参加者に対し、歯に衣着せずにずばずばと言いたいことを言ってのけられるというメリットもある。どうせ何言っても既に沈んでしまったキャリアに傷がつくなんてことはないしね。というわけで、ラマスがレーザー・ポインタで参加者の太腿を指して、ここに肉が足りないとか、セルライトがあるねとか、はたまた歯並びが悪いなんて言いにくいことをずばずば言えば言うほど、会場は同意やブーイングで盛り上がるという寸法になっている。しかし、やはり参加者の立場から言えば、今や落ち目のセレブリティ、特に既にお肌の曲がり角に達してしまった元モデルなんかから、シェイプアップが必要とか何とか、とやかく言われたかないだろうと思うが。


ところでこれまでの時点で、実は私が最も好感を抱いた参加者のテレサは、最初の段階で落とされた。彼女はグラマーというよりもスキニーに近かったため、ジャッジから出るところが出てないと酷評されていたのだが、私はどっちかっつうとそういうのにセックス・アピールを感じる方だから、これは永遠に意見の一致を見ないだろう。こういうのは、やはり主観の問題だ。一方、男性の方では、コリアン系のケンが、ヘンにムキムキし過ぎず、やや両目じりが吊り上がったオリエンタルな顔立ちで、彼が最も雰囲気があっていいと思っていたら、こちらの方は最終審査まで残った。アジア系がこの種の番組で優勝するというのはまず無理だと思うのだが、そういうわけで今は彼を応援している。


しかし、この番組、本当なら3月いっぱいで優勝者を決める手はずになっていたのに、戦争勃発の煽りを受けて、最後の2回分は4月まで放送延期になった。もちろんすべての番組はなんらかの形で戦争の影響を受けているのだが、やはり人気番組はそれでも定時に放送され、それほど人気のない番組が一時的に棚上げされるか、延期され、その枠で戦争関連の臨時特番をやったりする。つまり、「アー・ユー・ホット?」は、それほど人気のある番組ではないわけだ。まあ、プロポーションのいい女性をTVで見ること自体には私は異議はないが、とはいえ、確かにこの番組を「アメリカン・アイドル」のように毎週追っかけで見たいとも思わない。


番組製作総指揮は、「ハイ・スクール・リユニオン」「ザ・バチェロレッテ」と、最近引っ張りだこのマイク・フレイスで、最近編成される3本に1本のリアリティ・ショウには、なんらかの形でフレイスが関係しているような印象がある。FOXの低俗系リアリティ・ショウの総元締め、マイク・ダーネルと共に、現在のアメリカのリアリティ・ショウを代表する顔だろう。とはいえ、「アー・ユー・ホット?」に第2シーズンはないだろうなあ。








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Are You Hot? The Search for America's Sexiest People

アー・ユー・ホット? ザ・サーチ・フォー・アメリカズ・セクシスト・ピープル   ★★1/2

 
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