Ant-Man and the Wasp


アントマン&ワスプ  (2018年7月)

今年からついに長年付き合ってきたマーヴェル・コミックスやDCコミックスのスーパーヒーローものに見切りをつけ、これまでパスしていた。一人じゃ解決できない問題に対処するために大挙して寄り集まって、結局、船頭多くして船、山に登ることを証明してしまったスーパーヒーローたちには、もうほとんど頼むものはない。 

 

「アント-マン (Ant-Man)」に至っては、地球の平和をアリやハチに頼むくらいなら自分でなんとかするというのが本心だが、しかし、実はこの「アント-マン」が、少なくとも私にとっては今、スーパーヒーローものでは最もアピールする。なんとなれば、身体が極小化極大化と極端に変化する「アント-マン」は、単純に視覚的に最も楽しいからだ。  

 

また、そういう大きさの変化が視覚的ギャグに適していることを見抜いた製作者の英断により、「アント-マン」だけは唯一スーパーヒーローものの中でギャグ化している。「スパイダー-マン (Spider-Man)」もかなりギャグ的なノリがあるのが特色の一つだが、実際にコメディとして作っている「アント-マン」とは、本質的に大きな隔たりがある。 アント-マンがシリアス色を強めている「アベンジャーズ (Avengers)」シリーズ最新作の「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー (Avengers: Infinity War)」に出ていないのは、製作サイドの賢明な判断と言えよう。 

 

基本的にアント-マンは、アリがオリジナルということでもあり、姿形の大きさが変化するとはいっても、普通の人間の大きさとアリの大きさの二つのサイズを行ったり来たりするだけだ (ったと思う)。それが今回は、さらにスーパーサイズ化して巨大な怪獣サイズにも変化する。 

 

通常のサイズから身体が突然極小化する時に、ギャグになるというのはわかる。例えば喧嘩の最中や大勢から襲われたりクルマで追われている時に突然極小化して見えなくなったら、敵は対象を見失って戸惑うか、仲間同士で潰し合いになるのがオチだ。昨年公開された「ダウンサイズ (Downsizing)」がコメディだったのは、ある種当然だ。 

 

一方その逆もまた真なりかというと、それは違う。対象が大きいと本能的に恐れを感じたりするのは生物学的に当然のことで、だから怪獣もそれを倒すウルトラマンも大きい必要があった。それなのに今回の「アント-マン」では、不用意にスコットが必要以上に大きくなることで笑いを誘う。大きいものに対する畏怖ではなく、バランスを欠いたものに対する笑いの効果の方が大きいのだ。狭い場所で不用意に大きくなってしまい部屋を破壊してしまったり、なんとはなしに振り向くとそこにバカでかいアント-マンの顔が出現するおかしさは、驚愕と笑いは本質的に近いものだと思わせてくれる。 

 

正直言って、急激に身体が大きくなったり小さくなったりするというのは科学的にあり得ないし、クオンタム・ワールドに閉じ込められるとか、クオンタム粒子の影響で存在が不安定で身体がぶれたり瞬間移動したりするというのは、「X-メン」や「アベンジャーズ」なんかよりよほど眉唾なのだが、それでも、科学的リアリティではなく、笑いのリアリティはあるなと、個人的には納得してしまったりする。 











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「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ(Captain America: Civil War)」でソコヴィア協定に背いてキャプテン・アメリカに協力したことで、スコット/アント-マン (ポール・ラッド) は今では自宅から出られない自宅逮捕処分を受けていて、たまに遊びに来る前妻がひきとった娘のキャシー (アビー・ライダー・フォートソン) と遊ぶくらいが唯一の息抜きだった。その自宅逮捕もあと数日で終わりというある日、スコットはハンク (マイケル・ダグラス) の妻のジャネット (ミシェル・ファイファー) を幻視する。クオンタム世界に閉じ込められ、二度と会えないと思われたジャネットをこの世界に連れて帰ってくることができるかもしれない。ハンクと娘のホープ/ザ・ワスプ (エヴァンジェリン・リリィ) はスコットを強引に家から引きずり出して計画に参加させる。一方、ハンクたちを虎視眈々と付け狙う謎のスーパーパワーを持つゴースト (ハンナ・ジョン-カーメン) がいた‥‥ 


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