Annihilation


アナイアレイション -全滅領域-  (2018年3月)

3年前 (もう3年前だ)「エクスマキナ (Ex-Machina)」で強く印象を残したアレックス・ガーランドの新作は、ジェフ・ヴァンダミアの同名原作の映像化だ。今回はたぶんエイリアンの侵略を受けた近未来の世界を描く。たぶん、というのはエリアXと呼ばれる電磁波で覆われた森の中の世界を人々は見ることができず、エイリアン自体が姿を現すわけではないため、状況がよくわからないからだ。


しかし中で何かが起こっているのは間違いないようで、派遣した調査隊は消息を断つ。その後一人だけひょっこりと姿を現すが、その男ケインは記憶がなく、エリアXでの出来事を何も覚えていなかった。しかしいきなり体調を崩したケインと妻のレナは二人共エリアXそばの施設に収容される。生物学者のレナはそこでエリアXを調査しようとする4人の女性と出会い、自ら参加を希望する。


エリアX内では、怪物化したワニや、クマだかライオンだか知れない従来の常識とは相容れない特異な生物が住む世界が展開していた。そして彼女たちは、植物化して死去したような前調査隊の痕跡を発見する‥‥


話は、調査に出向いた5人の女性から成る調査隊のうち、レナが施設の者から尋問されるシーンから始まる。つまり調査隊は全滅し、レナ一人だけが帰還したことが知れる。果たして何が起こったのか、エリアXでいったい何が起きているのか、レナはいったい何を見たのか経験したのか。


主人公のレナに扮するのはナタリー・ポートマン。「エクスマキナ」のアリシア・ヴィカンダー同様、正統派の美形で、ガーランドの趣味が知れる。これまではどちらかというと細身でか弱いという印象の方が強かったが、今回は元軍経験者という設定で、意外にも小銃を持ってのアクションも悪くない。


夫のケインに扮するのは、「エクスマキナ」に続いて起用されたオスカー・アイザック。実はポートマンもアイザックも「スター・ウォーズ (Star Wars)」サーガに出ている。ただしポートマンが出ているのは第1期3部作、アイザックが出ているのは現行シリーズなので、両者が共演したことはない。その二人が夫婦、しかも最後はもしかして種を超えた夫婦だ。


他に人類学者のアニャ・ソレンセンに扮しているジーナ・ロドリゲスも印象に残った。現在CWの「ジェイン・ザ・ヴァージン (Jane the Virgin)」で、ヴァージンなのにクリニックの手違いから人工授精を施され妊娠してしまった、というコメディ・ドラマに主演している。それがここでは疑心暗鬼に陥って切れた武闘派の学者を演じており、しかもなかなかはまっている。


「エクスマキナ」ではたぶんじわじわとロボットに乗っ取られる世界の可能性を描き、「アナイアレーション」ではいつの間にかエイリアンに侵食されつつある世界を描いたガーランド、自分が自分であるアイデンティティのあり方に多く興味を持っているようだ。あるいは、気がついたら世界は変わっていた、もしくは乗っ取られるという世界観がポイントか。どうやら知らないうちに世界は反転していた、という視点が好きらしい。


謎だらけの導入部、アクション横溢の中盤、そしてどちらかというとトンデモ展開のクライマックスと、今回も飽きさせない。勝手知らない異様なものが一部の場所を覆い、交通やコミュニケイションを遮断するという舞台設定で思い出すのは、スティーヴン・キング原作でCBSで放送された「アンダー・ザ・ドーム (Under the Dome)」だ。ただし見えない壁で町の中と外側で分断された「アンダー・ザ・ドーム」と異なり、「アナイアレーション」では、ザ・シマーと呼ばれるエリアの中に入ることはできるし、稀に出てきた者もいる。ただし再び外に出てきた者が本人その人であるかの確証はないし、基本的に足を踏み入れたら帰ってこられないと思っていた方がよさそうだ。


そして「アナイアレーション」のラストで思い出すのは「彷徨える河 (Embrace of the Serpent)」、あるいは「ファウンテン 永遠につづく愛 (The Fountain)」で、ちょっと度肝を抜かれるというか、意表を突かれる。「エクスマキナ」では理詰めという印象があったが、ガーランドはそれだけでもないようだ。あるいは原作を忠実になぞっているのかもしれない。











< previous                                      HOME

海岸沿いの町が閃光に包まれ、電磁波で覆われる。エリアXと呼ばれるようになったその場所に軍人の調査隊が派遣されるが、そのまま消息を断つ。時が経って調査隊の一人だったケイン (オスカー・アイザック) だけが突然、生物学教授である妻レナ (ナタリー・ポートマン) の元に帰ってくる。しかしケインはすぐに体調を崩し、レナ共々エリアXの近くの施設に隔離される。レナは心理学者のヴェントレス (ジェニファー・ジェイソン・リー)、人類学者のアニャ・ソレンセン (ジーナ・ロドリゲス)、測量技師のジョシ・ラデク (テッサ・トンプソン)、言語学者のキャス・シェパード (ツヴァ・ノヴォトニー) の5人の女性から成るティームを組み、エリアXの内部へと足を踏み入れる。そこでは地球の生態系とかけ離れた異様な世界が展開していた‥‥


___________________________________________________________

 
inserted by FC2 system