放送局: ABC

プレミア放送日: 5/20 (Sun), 5/21/2001 (Mon) 21:00-23:00

製作: ミルク・アンド・ハニー・プロダクションズ、ドロシー・ピクチャーズ

製作総指揮: ハンス・プロップ

製作: カーク・エリス、デイヴィッド・カップス

監督: ロバート・ドーンヘルム

原作: メリッサ・ミュラー

脚本: カーク・エリス

撮影: エレメール・ラガリィ

編集: クリストファー・ラウス

音楽: グレーム・レヴェル

美術: ミシェル・ウェラー

衣装: バーバラ・レイン

出演: ハナ・テイラー・ゴードン (アンネ・フランク)、ベン・キングズリー (オットー・フランク)、タチアナ・ブラハー (イーディス・フランク)、ジェシカ・マンリー (マーゴ・フランク)、ブレンダ・ブレシン (アウグステ・ファン・ペルス)、ホアキム・クロル (ヘルマン・ファン・ペルス)、ニコラス・オーズリー (ペーター・ファン・ペルス)、ジャン・二クラス (フリッツ・フィファー)、リリ・テイラー (ミープ・ギース)


物語: 1938年、9歳のアンネ・フランクは物分かりのいい父オットー、時々衝突はするけれどもそれでもアンネのことを心配してくれる母イーディス、いつも相談にのってくれる姉マーゴらに囲まれ、将来は作家か女優を夢見る少女としてすくすくと育っていた。しかし第2次大戦が始まり、ナチス・ドイツの暗雲はアンネたちの住むアムステルダムにも押し寄せ、ユダヤ人であるフランク一家は、ナチスの隔離政策により住む場所や学校を限られ、裕福とは言えないまでも苦労はなかった生活が次第に貧窮してくる。ナチスのオランダ侵攻は避けられないと見たオットーは、運河沿いのオフィス・ビルの屋根裏部屋を改造して秘密裏に隠れ家の準備を進め、一家共々人の目を逃れるように引っ越す。


すぐにペルス家も加わり、フランク家とペルス家は、戦局に一喜一憂しながら、結局そこでひっそりと2年間も人目を忍びながら暮らすことになるのだった。しかし、やがてドイツの劣勢が支配的となり、戦争の終焉も間近となったある日、フランク家が隠れて暮らしていることを密告する電話がゲシュタポにかかる。アンネとマーゴはオットーとは別々の施設に送られ、結局イーディスとも離れ離れになる。アウシュヴィッツを経由してベルゲン-ベルセン収容所に送られたアンネとマーゴは、最低の食事と環境の中、チフスにかかり、既に体力も落ちていた二人は、共に段々と痩せ衰えていくのだった‥‥


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アンネ・フランクの物語は、戦後半世紀以上を経た現在でも、戦争の悲惨さを象徴する代名詞的な出来事として今なお語り継がれている。アンネの生涯に関してはいまだに新しい伝記本が出版されており、それぞれがこれまでに語られることのなかった新しい事実を含む決定版とうたっている。売らんかなの商魂のようにも見え、その真偽のほどはともかく、とにかくアンネの話はこれからも語り継がれるんだろう。


ABCが放送した4時間ミニシリーズの「アンネ・フランク」は、オーストリア人のジャーナリスト、メリッサ・ミュラーが1998年に出版した「Anne Frank: A Biography (邦題: アンネの伝記)」を底本に、番組プロデューサー兼脚色を担当しているカーク・エリスが新たな調査を行い、その結果を基に映像化したものだ。これまで何度も映像化されている「アンネの日記」の再映像化ではない。そのことは、番組の始まる前にもテロップが流れて強調される。


というのも、「アンネの日記」自体の映像化権は、この本の版権を持っているアンネ・フランク財団が管理しており、既に映像化権は20世紀FOXに売却済みだからである。そのためABCは今回の映像化に関し、「アンネの日記」の映像化ではないということを断った上で、しかも「アンネの日記」からアンネが書いたセリフは一言も借用していないと言明しておかざるを得なかった。結局、どんなにヒューマニズムを歌い上げる番組であろうとも、利権版権はそれにも勝るのが資本主義というもんだ。


これまでのアンネの物語の映像化は、ほとんどが日記にも書かれている通りの、2年間に及ぶ隠れ家生活を主体としたものが多かった。この手の作品で最も評価が高いのが、1958年にジョージ・スティーヴンスが演出して3つのアカデミー賞を獲得した「アンネの日記」である。この作品は、閉塞状況下での隠れ家生活がいつゲシュタポの手によって暴れるかという点がクライマックスとなっていたため、アンネの心情をとらえる戦時下の青春ドラマとしてだけでなく、スリル/サスペンス・ドラマとしてもいまだに高い評価を得ている。今回のミニシリーズにおいても、その点では変わらない。しかし今回の映像化がこれまでのどのドラマ化よりも異なっている点は、番組がアンネが9歳の、まだ戦争が始まる前のフランク家の生活の描写から始まり、そして、これが何よりも今回の映像化を特徴づけている点だが、強制収容所に入れられたアンネおよびフランク家の人間が、極悪の環境で身体を蝕まれ、死亡する様までもが描かれる点にある。


この、アンネたちの収容所生活の描写は、後半の最後の1時間で描かれるわけだが、ネットワークが放送する万人向けのTV番組でここまでよくやったと感心せざるを得ないくらい真に迫っている。とにかく、食い物も着るものも寝具すら満足に与えられない生活でアンネたちが弱っていく様が、これでもかというばかりに執拗に描かれるので、見てるこちらまで段々暗い気持ちになってくる。しかもABCは、この最後の1時間をコマーシャルを入れないノーカットで放映した (この部分の番組スポンサーは親会社のディズニーということになっている)。なんでここまで見てる者を暗い気持ちにさせる。


その他にこれまでの映像化と違う点が、これまで誰が密告したのかはわからないとされてきたフランク家の隠れ家生活のたれ込み屋を、階下のオフィスの掃除のおばさんと断定しているところにある。私は、いくらドキュドラマとはいえ必ずしも事実だとは言えない部分が入るのはしょうがないと思うので、作り手が真実だと思ってさえいれば、話を面白くするためにそのことを挿入することに関しては文句はない。しかし、これって、まだ生きている関係者にとっては、この人が誰かわかることになってまずいことにならないかと心配だ。名誉棄損で裁判沙汰にならない? それとももうこの人は死んでしまっているのだろうか。それは大いに有りうるな。当時40歳くらいなら、生きているとしたらほとんど100だし、まだ生存している可能性はほとんどないだろう。


この番組はそういう、これまでのアンネ・フランク物語とは異なる点が幾つかあるのだが、それでもこの番組を成功させている最大のポイントは、アンネを演じるハナ・テイラー・ゴードンのアンネになりきった自然な演技に負っているのは間違いないだろう。彼女は母方にユダヤ人の血が入っているそうで、実際結構アンネにも似ており、番組に信憑性を与えるのにも一役買っている。彼女が弱って死んでいく様は、正視できないくらい痛々しい。私は見てないのだが、彼女は「聖なる嘘つき/その名はジェイコブ」で主演のロビン・ウィリアムスを食うくらいの印象を残したと聞いている。それも第2次大戦のゲットーものだったから、やはりユダヤ人的な顔つきが買われているんだろう。私は今年のエミー賞のTV映画/ミニシリーズ部門での主演女優賞は、「ライフ・ウィズ・ジュディ・ガーランド」のジュディ・デイヴィスで完全に決まりだと思っていたが、シーズンも終わる直前になって思わぬ強敵が現れたという感じだ。


テイラー・ゴードンは3、4歳くらいから演技の道を歩んでおり、「愛と精霊の家」では、主演のウィノナ・ライダーの幼い頃を演じていたそうだ。そういえば、いたいた、なんか目がぽっちゃりしていた子が確かにライダーの小さい時分を演じていた。そうか、あの子がそうだったのか。「愛と精霊の家」は93年の作品だから、テイラー・ゴードンはその時6歳。それ以外でも「フォー・ウェディングス」にも出ていて、4つあるウェディングの一つで新婦の幼い付き人を演じていたそうだが、そちらの方はさっぱり覚えてない。そうそう、ケネス・ブラナーが演出した最大の失敗作「フランケンシュタイン」でも、ヘレナ・ボナム・カーター演じるエリザベスの、やはり幼い頃の役で出ていたそうだ。やっぱり覚えてないです。


テイラー・ゴードンだけでなく、脇に回っている者たちの隙のない演技も大したものである。今さらアンネの父オットーを演じたベン・キングズリーをうまいというのも気が引けるのだが、しかし彼はうまい。「シンドラーのリスト」でこの手に近い役を既に見ているだけに新鮮なショックというものはないのだが、こういううまい人が脇を固めると、作品自体が締まる。そのことは、フランク家と一緒に隠れ家生活を送るペルス家のアウグステに扮したブレンダ・ブレシンや、フランク家をかくまうミープに扮するリリ・テイラーといった役者にも言える。主にドイツを主体に活躍しているというアンネの母イーディスを演じたタチアナ・ブラハーや、ペルス家のヘルマンを演じたホアキム・クロルは、当地では確固としたヴェテラン俳優らしい。頷けます。個人的な好みを言わせてもらえれば、アンネの姉マーゴを演じるジェシカ・マンリーも、テイラー・ゴードンを立てる抑えた演技で好感が持てた。


先ほど「ライフ・ウィズ・ジュディ・ガーランド」にちょっと触れたが、実は「アンネ・フランク」の製作および脚本を書いているカーク・エリスは、「ジュディ・ガーランド」でも製作総指揮を担当している。今年エミー賞に間違いなく絡んでくる番組を続け様にプロデュースしたわけだ。同じく製作を担当しているデイヴィッド・カップスは、昨年最も話題になったSci-Fiチャンネルの大作SFミニシリーズ「デューン」を製作、製作総指揮のハンス・プロップは、やはり話題となった「エベレスト死の彷徨」を製作しているなど、なかなか見映えのする製作陣である。 同じく前述した「聖なる嘘つき/その名はジェイコブ」で撮影を担当していたエレメール・ラガリィも、「アンネ・フランク」の撮影も受け持っている。それなのに監督のロバート・ドーンヘルムだけは私には初耳だった。








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Anne Frank

アンネ・フランク   ★★★1/2

 
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