1回戦 (水曜)

1回戦最大の注目カードだったタイガー・ウッズ対マイケル・キャンベルは、大した山場もなくウッズが5&4で順当勝ち。パットが決まる時のウッズは誰にも負ける気がしないというのは確かにあるが、キャンベルの調子が悪すぎたよ。1番でウッズがすぐに1アップになった後、フロント9で既に4アップ、TVも勝負がついたと考えたと見えて、その後は他の勝負を写すのに忙しかった。ウッズは昨年も1回戦はニック・ファルドと当たって注目カードと見なされた割りには楽勝だったが、今年も似たような感じ。


最大の番狂わせというか、面白かったのがフィル・ミッケルソン対ビリー・メイフェア。もつれ込んだ第20ホール、2番パー5でメイフェアが第2打をグリーン横バンカーに入れた後、ミッケルソンは完璧なショットでホール手前6フィートに落としてイーグル・チャンス。これで勝負あったかに見えた。ところがメイフェアはバンカーから直接カップインさせてイーグル。プレッシャーのかかったミッケルソンは6フィートを外し、メイフェアが勝ってしまった。


この同じホールで数時間後雨の降る中、また20ホールまでもつれたセルジオ・ガルシアとロレン・ロバーツの勝負も面白かった。ロバーツはパワーがないため刻んで3オンを狙う。ここは圧倒的に第2打でグリーンを狙えるガルシア有利。しかしガルシアは引っ張ってしまい、20ヤードも反れた深いラフに打ち込んでしまう。一挙に残り120ヤードのフェアウエイからウエッジを使うロバーツが有利な立場に。ところがロバーツも引っかけてグリーン左手前ラフに。ここでガルシアがグリーンに乗せることさえできればまたまた立場が逆転。しかしガルシアの第3打はショート、一層深いラフの中に。これで状況はイーヴン。まだホールから遠いガルシアが打った第4打のチップ・ショットはピンを4フィートオーヴァーして止まる。


ここでロバーツが次打をピンそばに寄せることさえできれば大きなプレッシャーをガルシアに与えることができる。しかし、彼の第4打はほとんどトップして、何とカップを30フィートも超えて行ってしまった。返しのパットも4フィートオーヴァー。ロバーツはガルシアのパットをコンシードして勝負に決着がついた。しかしこのあたり、一打毎に劇的に戦況が変わるマッチ・プレイの面白さが詰まっていた。特に競っている時の終盤のショットは、1度のミス・ショットが命取りになったり、逆にたった1回のグッド・ショットで勝負に勝ったりして見逃せない。フレッド・カップルスに1アップで勝った尾崎直道も、オール・スクエアで迎えた最終18番ホール、ピンそば3フィートにつけた第2打だけで勝ったようなものだ。その他、昨年の優勝者のジェフ・マガート、準優勝のアンドリュー・マギーが揃って1回戦で姿を消した。やはり一発勝負のマッチ・プレイで勝ち続けるのは難しい。



2回戦 (木曜)

前半でレティーフ・グーセンに2アップとなったウッズは、その後ちょっと乱れてオール・スクエアで18番にもつれ込んだが、グーセンがボギーで自滅して1アップ。でもウッズは全然負ける気はしなかった。これで明日はジャスティン・レナードを1アップで破った丸山茂樹と対戦。うーん、カードが俄然面白くなってきた。尾崎も途中ジャスパー・パーナヴィクを2アップでリードしていてもしやと思ったんだが‥‥突き放すチャンスでパットが入らなかったのが惜しまれる。結局19番で15フィートのバーディ・パットを決めたパーナヴィクが尾崎をうっちゃったが、エキストラ・ホールになるとどちらが勝つかなんてほとんど時の運で、その時の流れに巧く乗った方が勝つという感じ。パーナヴィクは追いついて勢いがついてたからなあ。一方尾崎は後半息切れしたようだった。ガルシアは昨日青息吐息でやっと勝ったのだが、今日はマイク・ウィアー相手に7&6と、ほとんどバック9はプレイしないで完勝。ガルシアは明日はティム・ヘロンを破ったデイヴィッド・デュヴォールと対戦。これも面白そうだ。



3回戦 (金曜)

この数週間を見る限り最も出来のよいウッズが丸山に4&3で完勝。ウッズは身体の切れがいいのがTVで見てるだけでもよくわかる。ほんの僅かのミス・ショットの他はティからグリーンまでまったく危なげないゴルフで、こういう時のウッズに勝てるゴルファーはこの世にいないでしょう。丸山も調子悪いわけではなく、ロング・パットを決めたりむしろよかった方だと思うのだが、何回かカップの縁で弾かれたパットが悔やまれる。デュヴォールとガルシアのマッチは前半お互いにリードしたりされたりした後、デュヴォールがリードしてガルシアが追いかけるという展開。クールさを崩さないデュヴォールに対し、感情丸出しのガルシアのマッチは、見ていて面白い。多分今日のベストマッチだっただろう。結局最終的にデュヴォールがガルシアを2&1でうっちゃった。


これでベスト8が出揃った。ウッズはマーク・カルカヴェッキアを破ったポール・ローリーと対戦。ジム・フューリックを下したデイヴィス・ラヴ3世はボブ・エステスに勝ったミゲル・エンゲル・ヒムネスと。デュヴォールはパーナヴィクを破ったスコット・ホークと対戦。トマス・ビヨーンを下したダレン・クラークはダフィ・ウォルドーフに勝ったハル・サットンと対戦する。コリン・モンゴメリーやアーニー・エルス、ミッケルソン、シングといった強豪が姿を消してしまっているのは残念だが、それでも寂しい週末だった去年に較べれば断然今年の方が面白い。それもそのはずで、今回は昨年、全試合を通じてたった2回しかなかったエクストラ・ホールへの延長が既に7回もある。それだけ競った試合が多いということだ。この調子で週末頑張って貰いたい。明日は準々決勝、準決勝と、勝てば午前と午後で36ホールプレイしなければならない。もちろん決勝も36ホールだから、優勝するためには2日続けて36ホールプレイしなければならないわけだ。タフさも要求される。プロっぽくていいぜ。



準々決勝 (土曜午前)

ウッズは1番ホールでバーディを奪ったローリーにいきなりリードを許し、それを追いかける展開。勝負のポイントはウッズ1ダウンで迎えた10番パー4で、右ラフに打ち込んだウッズがアドレスに入り、テイクバックした時に起こった。木の下でテイクバックしたクラブは頭上を覆う枝に引っ掛かり、ウッズは途中でスイングを止めてしまった。なんとこれが故意に状況を改善したと見られペナルティ。マッチ・プレイでのペナルティは即ロスト・ホールということで、ウッズは第2打目を打たずしていきなり2ダウンになってしまう。あそこで途中で止めず、何でもいいから打ってしまえばペナルティにはならないのだそうだ。何か、ゴルフのルールって公平そうに見えてよくわからないところがある。あれがペナルティになる必然性ってあるんだろうか。


いずれにしてもこれが逆にウッズを怒らせた。マジでシリアスになったウッズは怖い。その後ドライヴァーがぶれだしたローリーを続く3ホールであっという間に捕まえた後、1アップのまま18番へ。ここをパー・セーヴで乗り切ってローリーを下した。ラヴもヒムネスを寄せ付けず、デュヴォールもホークを下し、クラークはサットンを逆転で破ってこれでベスト4はウッズ、デュヴォール、ラヴ、クラークと、世界ランキング1位、2位、4位、19位が顔を揃える文句のない展開。クラークの19位だけがちょっとという感じだが、アメリカ勢だけでなくアイルランドが入るっていうのもバランスがとれていていいかも。それに荒れに荒れて週末世界ランキング10位以内が残っていなかった昨年のマッチ・プレイに較べれば、断然こっちの方が面白い。決勝がウッズ対デュヴォールとなれば満点の筋書きなんだが。



準決勝(土曜午後)

怒ったウッズ?がその調子をそのまま持ち込み、とにかくラヴを圧倒、最初から最後まで寄せつけなかった。5&4でラヴを下したわけだが、その時点でウッズはストローク・プレイに換算すればなんと7アンダー。13番と14番はパーだったわけだから、実は12番ホールを終わった段階で7アンダーだったわけだ。これってコース・レコード・ペースじゃないの?パー5でイーグルを二つとり、決してラヴの調子が悪かったわけじゃないが、相手の調子がこれだけよかったらチャンスなんかないって感じ。解説のカーティス・ストレインジもあんぐりしていた。


一方デュヴォール VS クラークは、デュヴォールが朝ほど調子よくなく、クラークに4&2で破れた。同じ日なのに午前と午後で出来が変わるっていうのも面白い。というか、マッチ・プレイって1ホール、1ショットをきっかけに流れががらりと変わるからな。でもだからこそ面白いのだが。さて、明日の決勝はウッズ対クラーク。ウッズがラヴとやった時のようなゴルフをすれば誰がどう見てもウッズ有利なんだが、何が起こってもおかしくないのがマッチ・プレイ。とにかくいい勝負を期待するだけです。むしろ勝負自体を見れば3位決定戦のラヴ対デュヴォールの方が面白いかも。



決勝/3位決定戦 (日曜)

ウッズとクラークの決勝の午前中18ホールはオール・スクエア。午後の18ホールに入ってもクラークが19番でバーディを奪って1アップになった後、すぐ20番パー5でウッズが奪い返しいい勝負。しかしこの日のウッズのパットはなかなか決まらない。一方のクラークは好調で、バーディ・パットを随所に決め、じりじりとウッズを突き放しだす。特にバック9に入っては連続で2、3、4アップと、いくらウッズが勝負強いとはいえ、ちと不安になる。ウッズは次のホールで一つ返して3ダウンになったが、パットが決まらなければどうしようもない。多分ウッズはクラークに追いつくチャンスのパー5で第2打をバンカーに打ち込み、そこからのアップ&ダウンに失敗して結局ボギーとなり、逆にクラークに差を広げることを許した時点で負けを意識したのではないか。


これでまたクラークの4アップになり、ドーミー。残りのホールすべてバーディを取らなければ勝ち目のないウッズ。しかしドライヴァー、第2打と続けてバンカーに打ち込んでしまってはどうしようもない。ウッズのバンカー・ショットはホールを4フィート超えてしまう。2パットで優勝のクラークは手堅く10インチに寄せ、この瞬間、クラークの優勝が決定した。ABCは午前中のラウンドはよかったとこだけ録画で見せて午後を生中継したが、午前の方が面白そうだった。ちぇっ。3位決定戦は最初ラヴがリードしたが、追いついたデュヴォールはショットが乱れ出したラヴを簡単に抜き去り、5&4とこちらもちょいと大味なマッチだった。しかし昨年のトーナメントに較べれば今回は大分面白かったぞ。また来年も楽しみにしてます。







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アンダーソン・コンサルティング・マッチ・プレイ・チャンピオンシップ

2000年2月23-27日   ★★★

カリフォルニア州カールスバッド、ラ・コスタ・リゾート&スパ

 
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