年4回開催されるワールド・ゴルフ・チャンピオンシップスの一環、 アメリカン・エキスプレス・チャンピオンシップ。昨年は息詰まる勝負の上、タイガー・ウッズが栄冠を手にしたが、さて、今回、ウッズはタイトルを保持できるのか。先週ツアー選手権があったばかりで、PGAツアーの名だたるゴルファーがウッズ以外出場していないのがちょっと寂しい。わざわざ大西洋を越えていくのが嫌で、フィル・ミッケルソンもデイヴィス・ラヴ3世もデイヴィッド・デュヴォールも出場をパスし、アーニー・エルスは初日途中で腰痛のため欠場、ジャスパー・パーナヴィクも3日目でリタイヤと少しばかり寂しいメンツとなったが、まあ、いい、また去年のような面白い展開を見せてくれるならば。


勝負は初日、ニック・プライスが一人だけ断トツのできで63の9アンダーと一歩リード。しかしフェアウェイの狭いヴァルデラマはちょっとでもショットがぶれるとすぐ大叩きするから、勝負はまだ全然わからない。案の定、プライスは3日目で追い付かれる。しかもプライスに代わってトップに立ったのは日本のタナカヒデミチ。私も知らなかったがABCの報道陣も知らなかったようで、慌ててタナカの戦歴を調べていたようなのがおかしかった。


しかしこの手の世界のトップが出場するトーナメントは、近年、それなりの戦歴のないゴルファーがいきなり勝てるほど甘くはない。頑張ってはもらいたいが、最終日持ちこたえるのは難しいだろうなと思っていたら、やはりずるずると後退していった。最終日、リーダーボードは代わってプライス、ウッズ、マイク・ウィアー、マーク・カルカヴェッキアらが入れ代わり立ち代わり首位に並ぶ混戦で、しかもヴィージェイ・シング、リー・ウエストウッドらも虎視眈々と隙を窺っている。地元のヒーロー、セルジオ・ガルシアもいきなり首位に絡んできて、地元のファンを沸かせる。そしてやはり勝負は‥‥あの魔の17番パー5で決したのであった。


3年前のライダー・カップ、昨年のこのトーナメントと、ウッズは17番グリーン手前の池にボールを落として負けたり苦しんだりしている。終盤に来て大詰めの17番の池越えのショットは、プロといえどもheart throbbing, nerve wrenching -- と、ここの新聞に書かれることが多いが、心臓ドキドキ、神経キリキリの難所なのだ。しかもスロープはきついしラフはないし、いったん転がり始めたらもう止まらない。まるでオーガスタの15番と同じ。スロープはどう見てもオーガスタよりきつい。


そして最終日の17番、まずウエストウッドがティ・ショットを右側のブッシュに撃ち込み、トリプル・ボギーで脱落、続いてプライスが池に落とす。プライスはその後のショットも動揺したのか完全にダフり、やはりトリプル・ボギー。そしてついにウッズが。ウッズは今回もこの池に悩まされ、初日、2日目と連続して池ポチャ。3日目やっとのことでグリーンに乗せた時は、帽子を取ってギャラリーにお辞儀をしていたが、最終日は極め付けだった。まずウエストウッド同様右ブッシュに打ち込み、そこから出るのに2打使う。結局4打目が池越えのウエッジ・ショットとなったのだが、それが昨年の最終日の第3打とまったく同じような軌跡を描いて、ゆるゆると池に向かって転がって行ったのであった。結局ウッズもダブル・ボギーで、完全にチャンスは潰えた。一緒に回ったカルカヴェッキアもやはり池に打ち込み、ことごとくトップ・ゴルファーを粉砕する。


結局、この17番をパーで切り抜けたウィアーが11アンダーで9アンダーのウエストウッドに2打差をつけて勝ったのだが、しかしこの17番、TV解説のカーティス・ストレインジもアンフェアと口走っていたが、確かにそうだと思う。しかし全員が同じホールをプレイしているわけだから、全員にアンフェアということはフェアだと言えなくもない。バーディで上がるゴルファーもいるわけだから、池ポチャする方が悪いと言われればそれまでとも言える。実際、勝ったウィアーだって、2日目、このホール連続して池ポチャで、トリプル・ボギーを叩いているのだ。それでも勝ったのだから、ホールのせいにするのはとんだ筋違いというものか。それに最後のこの難所があるから、このコースで開催されるトーナメントが盛り上がるのも確かだ。全英の開催コースの一つであるカヌースティは、あれは確かにアンフェアだと思うが、ヴァルデラマがアンフェアかどうかは意見の分かれるところであろう。ファイン・ショットまでがちょっとした差で池ポチャになるのを見ると、やはり可哀相ではあるが。


しかし、とにかくゴルファーに過度のストレスを与えるこの17番、当然のごとくプレイするゴルファーには不評であり、ウッズはもう二度とここではプレイしないと言っていた。実際、来年のこのトーナメントはアメリカ本土で開催され、その後ヴァルデラマにまた戻ってくるかは、現時点ではまったく未定である。ヴァルデラマの17番が今後見られなくなるのは、ドラマティックなゴルフを見たいファンにとってはやはり一抹の寂しさが伴わないこともない。


さて、基本的に今年のPGAツアーは、来月の南米ブエノス・アイレスで行われるワールド・チャンピオンシップス最終戦、ワールド・カップを除いて終了だ。今回大挙して不参加のゴルファーを見てもわかるように、ツアーの主要ゴルファーは、アメリカ国外で開催されるトーナメントに興味を示さない者が多い。唯一の例外がメイジャーの一つ、全英オープンであろう。果たしてブエノス・アイレスにはどれくらい主要ゴルファーが集まるのであろうか。それよりも私が心配なのは、来年末に日本で開催されるワールド・カップである。PGAツアーのゴルファーは、ほとんど時差のないブエノス・アイレスでのワールド・カップですら、行くことに難色を示しているものが多い。それが完全に地球の裏側の日本での開催となったら、考えるだろうなあ。果たしてどうなることやら。







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アメリカン・エキスプレス・チャンピオンシップ

2000年11月9-12日   ★★★1/2

スペイン、ソトグランデ、ヴァルデラマ・ゴルフ・コース

 
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