アメリカズ・ベスト・ダンス・クルー   America’s Best Dance Crew

放送局: MTV

プレミア放送日: 2/7/2008(Thu)22:00-23:30

第8シーズン・プレミア放送日: 7/29/2015 (Wed) 23:00-0:00

製作: ワーナー・ホライズンTV

製作総指揮: ランディ・ジャクソン

ホスト: マリオ・ロペス (第1-第7シーズン)、ジェイソン・ダンダス (第8シーズン)

ジャッジ: T-ペイン、ティヤナ・テイラー、フランキー・グランデ

出場チーム: クエスト・クルー (Quest Crew)、ウイ・アー・ヒーローズ (We Are Heroes)、スーパー・クルー (Super CR3W)、アイ・アム・ミー (I.aM.mE)、エレクトロライツ (Elektrolytes)、キンジャズ (Kinjaz)


内容: グループによるヒップ・ホップ・ダンス勝ち抜きダンス・リアリティ。


_______________________________________________________________

America’s Best Dance Crew


アメリカズ・ベスト・ダンス・クルー  ★★1/2

アメリカを代表する勝ち抜きダンス・リアリティ・ショウというと、現在第12シーズンを迎えているFOXの「アメリカン・ダンス・アイドル (So You Think You Can Dance: SYTYCD)」と、こちらはそろそろ第21シーズンが始まるABCの「ダンシング・ウィズ・ザ・スターズ (Dancing with the Stars: DWTS)」が、現時点では双璧だ。


かつては、特に2008-10年頃に、ブラヴォーの「ステップ・イット・アップ・アンド・ダンス (Step It Up and Dance)」とか、ABCの「ダンス・マシーン (Dance Machine)」、NBCの「スーパースターズ・オブ・ダンス (Superstars of Dance)」、CBSの「リヴ・トゥ・ダンス (Live to Dance)」等のダンス・コンペティション・リアリティが多く編成された時があったが、ほとんどが話題にならずすぐに消えて行った。


そんな中で、唯一SYTYCDとDWTSに対抗していたのが、MTVの「アメリカズ・ベスト・ダンス・クルー (ABDC)」だ。ABDCはFOXの「アメリカン・アイドル (American Idol)」プロデューサーの一人ランディ・ジャクソンがプロデュースした番組で、SYTYCDやDWTSと異なり、グループで、自分たちでコレオグラフィも考えて踊るというところに特色があった。ダンスのジャンルもヒップ・ホップ一色であり、特にパフォーマンス中に印象的な大技--トリックが必ず一つや二つ入るのが特徴だ。


ABDCはかなりSYTYCDと関係が深く、SYTYCDに出ていたヒップ・ホップ系のダンサーが何人もABDCに出ている。特に第3シーズン優勝のクエスト・クルーにはホックやドミニクという、SYTYCDでも印象的だったダンサーが出ている。個人技のSYTYCDでも上位に食い込んだダンサーがいるクエスト・クルーがABDCで優勝したのは、至極納得と言えた。因みにドミニクはその後D-Trixと改名し、ABDCの第6、第7シーズンではジャッジを務めている。


一方、ABDCの第4シーズンで優勝した女子オンリー・チームのウイ・アー・ヒーローズの一人、ヒロは、その後SYTYCDにも登場したが、二次予選までは進んだものの、本戦までは進めず、途中で落とされた。ヒップ・ホップだけに限らずすべてのジャンルを踊ることを要求されるSYTYCDで勝ち残るのは、かなり難しいと言える。ところでホックもヒロも日本人だ。NBCの「アメリカズ・ガット・タレント (Americas Got Talent)」でも2013年に日本人のエビナ・ケンイチが優勝している他、現行シーズンのSYTYCDファイナルに進んで活躍しているJJことジェシカの姉はタレントのベッキーであるなど、日系ダンサーが結構アメリカでも活躍している。


ABDCは2012年に第7シーズンを終えた後、放送が途絶えた。キャンセルという発表はなかったが、長らく新シーズンが始まらないため、このまま番組はなし崩し的に消えていくのかと思っていた。そしたらこのほど第8シーズン放送が始まった。この第8シーズン、過去の優勝チームによる勝ち抜き戦で、当然クエスト・クルーもウイ・アー・ヒーローズも出る。こういうガラ総集編みたいな編成を組むと、今度こそ最後のシーズンかという気もする。


ホストはこれまで全シーズンを担当していたマリオ・ロペスから、ジェイソン・ダンダスに代わった。ロペスが早口にABDC、ABDCと喋るのがお約束となって耳に残っている身としては、あれがないとちょっと寂しい。ジャッジも一新し、同様にこれまで全シーズンでジャッジを担当した元イン・シンクのJC・シャゼイとリル・ママもいなくなった。


因みに最初の4シーズンのジャッジで、これまたSYTYCDでもお馴染みのシェイン・スパークスは、未成年者との淫行容疑で逮捕され、ジャッジから降ろされた。わりとスキャンダルを契機に逆に人気を上げたりするタレントが多かったりするアメリカの業界だが、虐待やチャイルド・ポルノ関係だけはアウトで、これをやると完全に干される。


いずれにしてもABDCはやはり、この一回限りのガラ・シーズンをもって番組は終わるんじゃないかという気配が濃厚だ。出演チームは、上記のクエスト・クルー、ウイ・アー・ヒーローズの他に、スーパー・クルー、アイ・アム・ミー、エレクトロライツ、それに第1シーズンの優勝チームのジャバウォッキーズから分離したキンジャズの6チーム。


上で日本人ダンサーがアメリカで活躍していると書いたが、実は何も日本人に限らず、アジア系全般が結構多い。ラテン系も多い。キンジャズなんてほぼ全員アジア系だ。意外にヒップ・ホップを生み出した黒人がほとんどいないのは、個人主義のアメリカ人には、チームで踊るというスタイルが根付かないからという印象が強い。SYTYCDのオーディションで目の覚めるようなヒップ・ホップやアニメーション・ダンスを踊る黒人ダンサーが本選まで残れないのは、他人のコレオグラフィで踊る段階で、ほとんどが振り付けを覚えきれずに脱落していくからだ。よくも悪くも個人主義なのだった。


さて、ABDCの第8シーズン、まず最初に落とされたのはウイ・アー・ヒーローズ。私の目から見ても彼女たちが一番弱かった。次いでエレクトロライツ、アイ・アム・ミーと落ちて行った。ここまではジャッジがどのチームを追放するか決めていたが、最終回の結果は視聴者投票となり、スーパー・クルー、キンジャズとクエスト・クルーの最後の戦いで勝ったのは、クエスト・クルー。クエスト・クルーは前2回は落とされるかどうかの下の2チームに入っていたのだが、首の皮一枚で残った。そして最終回の前の回で踊った、黄色いベンチを使ったパフォーマンスが印象的だったのが、勝った理由だろう。


とはいえ最終回自体のパフォーマンスでは、唯一トリックを取り入れずにシンプルにほぼユニゾンでエド・シーランの「アイ・シー・ファイア (I See Fire)」に合わせて踊ったキンジャズが、実は一番よかったと思う。しかしそれまでの投票で勝者は既に決まっていたから、前回に印象的なダンスを踊ったクエスト・クルーが勝ったという印象が濃厚だ。


ところで今シーズンのABDCは、副題に「ロード・トゥ・ザ・VMAs (Road to the VMAs)」とついている通り、今年のMTVの「ヴィデオ・ミュージック・アウォーズ (Video Music Awards)」の直前にライヴで編成された。タイトルからして、これに勝ったチームがそのままVMAに流れ込んで何か披露してくれると思ったのは私だけではないと思うが、実はクエスト・クルーはそれっきりで、VMAには現れなかった。期待してVMAも全部見たのに。それに正直言って、マイリー・サイラスのホスティングは、あれは及第点はあげかねる。










< previous                                    HOME

 
 
inserted by FC2 system