アメリカTV界の今年の印象を決定づけた重要なポイントを振り返る。



1. リアリティ・ショウの復活


昨年の9月11日の同時多発テロは、それまで隆盛を誇っていたリアリティ・ショウのブームを一気にしぼませた。「フー・ウォンツ・トゥ・ビー・ア・ミリオネア」「ウィーケスト・リンク」はついに編成から外され、「サバイバー」は何とか頑張ってはいるものの、その他のリアリティ・ショウも似たり寄ったりと、リアリティ・ショウの終焉は誰の目にも明らかなように見えた。


それが春先頃からまた徐々にリアリティ・ショウが編成されるようになった。元々リアリティ・ショウが大量に製作されるようになったのは、製作にかかる費用がドラマやシットコムに較べ、大分安く上がるということがある。しかも当たればでかいのは、「ミリオネア」や「サバイバー」が既に証明している。米ネットワークがそう簡単に金が成る木を諦めるはずもなかったのだ。


しかし、それにしても今夏、シーズンが終わった直後から秋の新シーズンが始まるまでに編成されたリアリティ・ショウの氾濫は、目を見張るものがあった。ほとんど秋の新シーズンが始まったのかと勘違いさせるほどの新リアリティ・ショウが、これでもかというほど編成された。


その中で言及するに値するものは、何といっても今夏どころか今年を通して最大のヒット番組になったと言っても過言ではないFOXの「アメリカン・アイドル (American Idol)」、放送禁止用語連発のMTVの「ジ・オズボーンズ (The Osbournes)」、春の第1シーズンより秋の第2シーズンの方が人気が出たABCの「ザ・バチェラー (The Bachelor)」、それにNBCの「ミート・マイ・フォルクス (Meet My Folks)」と「ドッグ・イート・ドッグ (Dog Eat Dog)」、それにもう一つ、FOXの「30セカンズ・トゥ・フェイム (30 Seconds to Fame)」を加えてもいいかもしれない。


ヒット番組が出るとすぐに二番煎じ番組が登場するのは世の倣いだが、その中でも特に「オズボーンズ」の成功は、この種のセレブリティの私生活暴露ものという類似番組が直ちに企画された。特に機を見るに敏だったのが、E!の「ジ・アナ・ニコール・ショウ (The Anna Nicole Show)」であった。


アナ・ニコールとは日本人にはとんと馴染みのない名前であるが、アメリカ人には、特にゴシップ記事が好きな人間を中心によく知られている。ニコールは元「プレイボーイ」誌のプレイメイトであり、ほとんど寿命で余命幾ばくもない80代の大金持ちの老人と結婚して、金目当ての結婚とマスコミから叩かれまくった。そして多分予定通りにそのお爺さんがぽっくり死んでしまうと、遺族からおまえには金を渡せないと言われたために訴訟沙汰に発展、勝訴したものの、遺族はやはり金を払わず、全然金がない (とは本人の弁) という、ゴシップ系セレブリティの代表とも言えるアナ・ニコールの私生活を収録したのが、「アナ・ニコール・ショウ」だ。


とにかく、元プレイメイトのニコールの私生活暴露ということで、わりと期待した視聴者、特に男性視聴者が多かったのだろう、この番組は「オズボーンズ」ほどではないにしてもわりと高い視聴率を獲得したのだが、しかしその内容はというと、近来稀に見るほどのひどいものだった。番組が始まって3分で、既にこの女の脳みそは猿並みということが知れただけでなく、容姿の方も、かつてのプレイメイト時代の面影は既になく、ただのけばいデブ年増に過ぎなくなってしまっている。それでも男の気を惹くためには露出と色気というバカの一つ覚えを繰り返すニコールが、カメラに向かって身をよじってみたり、ウィンクしたりするのを見て、鳥肌立つほど悪寒が走ったのは私だけではあるまい。究極の勘違い女、ニコール。しかし、それはそれで、確かに充分な見世物であるとは言える。


その「アナ・ニコール・ショウ」と前後して企画の上がったVH1の「ライザ・アンド・デイヴィッド (Liza and David)」は、こちらはまだ最初の方は「アナ・ニコール」ほどゲテモノ的な企画であったわけではない。まだ新婚ほやほやの (何回目だっけ?) ライザ・ミネリとデイヴィッド・ゲストの私生活をとらえるというこの番組は、しかし、ゲストが極度の仕切り魔であるということが後に判明した。ゲストは収録に向かったカメラマンに、あれは撮ってはいけない、これも撮ってはいけないといっては注文をつけ、スタッフに対しても、あれは触るなこれも触るな、これも汚すな弁償しろと、とにかくいちゃもんをつけまくった挙げ句、ついに撮影隊は音を上げ、この企画はボツになった。ところがこの番組の出演料を充てにしていたゲストは、今度は契約不履行としてVH1を訴えるという愚挙に出て、関係者の嘲笑を買った。ライザが間違った男を選んでないことを祈る。


その他にも、「アメリカン・アイドル」と「バチェラー」に関しては、既に模倣番組が続々と製作進行中であり、それらは年明けから続々と編成されることが発表になっている。今年、既に飽和状態になっているとあれほど言われたリアリティ・ショウが、来年はさらに今年を上回る量が投入されるのだ。このブームの行き着く先に待っているものは何か。アメリカ、リアリティ・ショウの今後に要注目である。



2. 米TV界の新ブランド、「ジェリー・ブラッカイマー」


現在、アメリカTV界で最も気を吐いているプロデューサーが、ジェリー・ブラッカイマーである。ブラッカイマーはもちろん、「パール・ハーバー」や「アルマゲドン」等、ハリウッドの大型アクション映画で知られているプロデューサーだ。しかし数年前からTV番組製作にも進出しており、CBSで「CSI」「ジ・アメイジング・レース」をヒットさせた。ついでに言ってしまうと、消費者参加勝ち抜き型リアリティ・ショウにおいて現在最も面白いのは、私は「サバイバー」ではなく、「アメイジング・レース」だと思っている。


ブラッカイマーは今年さらに、「CSI」のスピンオフ「CSI: マイアミ (CSI: Miami)」と、「ウィズアウト・ア・トレイス (Without a Trace)」という2本の新番組をまたまたCBSで製作、これらも確実にヒットさせ、今ではCBSで人気のあるドラマは、すべてブラッカイマー製作番組となってしまった。いまやブラッカイマーは、デイヴィッド・E・ケリーやスティーヴン・ボチコ、ジョン・ウェルズらといったヒットメイカーを凌ぐ、アメリカのTV界きっての人気プロデューサーである。


今年から始まった新番組「CSI: マイアミ」は、「CSI」でつかんだ成功の方程式をそのまま踏襲している。つまり、最初に事件が起き、それを最新の科学捜査法で地道に (時に派手に) 証拠を積み立てながら、そこに意外なプロットを絡ませ、最後には犯人逮捕に結びつける、というのが、ほとんどすべてのエピソードに共通する大まかなストーリー・ラインだ。特にこの、これまで素人には未知の世界だった、何をやっているかはよくわからないが結構見ていて興奮させる最新の科学捜査法、というものが視聴者にアピールしたことは想像に難くない。


その点を除けば、段々謎が解かれて最後に真実が明らかにされるという構成は、現在NBCで人気放映中の「ロウ&オーダー」と結構似ていると言えなくもない。「CSI: マイアミ」に主演のデイヴィッド・カルーソは、「NYPDブルー」の第1シーズンに主演し、その時に人気爆発したが、態度不良で番組を辞め、その後泣かず飛ばずで、いつの間にやら誰も彼の噂をしなくなった。そのカルーソが復帰なるか? という話題性もあって、プレミア直後から新シーズンで断トツの人気を誇る。


とはいえ、私が気に入っているのは、実はもう一方の「ウィズアウト・ア・トレイス」の方であったりする。「CSI」シリーズではどちらかというと焦点は事件そのものに当たっているのに対し、「トレイス」の方は、ある日突然失踪した人物の行方を追うFBIのユニットの活躍を描くもので、興味の対象は人間である。番組は「なぜ」人が失踪したかという、失踪したその理由を執拗に追跡する。失踪した理由がわかれば、たとえ自分の意志で失踪したにせよ、誘拐されたにせよ、自然とその人間がどこにいるかは明らかになるからだ。足を使った地道な捜査により、この消え去った人間像が段々焦点を結んでいく過程がこの番組の醍醐味であり、結構スリリングで、見てて結構熱中する。結構よくできた推理小説を読む感じ、例えて言えば、宮部みゆきの「理由」を読む感覚に近いと言えばわかるだろうか。「CSI: マイアミ」ほどの視聴率を稼いでいるわけではないが、私は断然「トレイス」の方を推す。



3. 放送デジタル化遅延とHDTV番組の増加


アメリカのデジタルTV放送は、本来ならばとうに本格始動しているはずだった。2002年は政府によってデジタル元年として予定されていたのだが、地方放送局はデジタル化を終えることができず、ネットワークもデジタル番組を放送しない、ケーブル事業者も後手に回り、家電業界のデジタルTVは高値で消費者は手が出ないとなっては、何がデジタル元年か、といった具合である。


しかし、それでも遅々とではあるがデジタル化は進んでおり、今秋にはFOXとUPNを除くABC、CBS、NBC、WBの4つのネットワークが、遅まきながら幾つかの番組でHDTV放送を開始した。特にCBSは最も進んでおり、プライムタイムにおける番組では約7割方が既にHDTV番組となっている。


とはいえ、そのHDTV番組を見るためのTV受像機がまだ高嶺の花であるというのが、視聴者の側から見ると最大のネックである。私だって現行のTV画像とは較べものにならないHDTV番組を見たいとは思うが、まだ30インチ前後の一番安い機種でも3,000ドル以上、どうせ買うなら40インチ以上の壁掛けプラズマをと考えると、どうしても8,000ドルから10,000ドルはする。どう考えてもそんな金額、出せるわけがない。というわけで、プライムタイムのネットワーク番組放送開始の時、画面下部に出る「HDTV番組サイマル放送」の文字を毎回羨ましく思うのであった。早くHDTV受像機はもっと値下がりしてくれないだろうか。



4. 終わらない「フレンズ」の功罪


「フレンズ」が今シーズン限りというのは、業界の者だけでなく、TVファンなら誰でも知っている、ほとんど公然の事実だった。なにせ6人の出演者が全員、もういい、もうやりたくないと口を揃えているのを、どうしようもないだろう。それが一転して12月中旬、あと1年間「フレンズ」は継続するという電撃発表があった。その最大の理由は、昨年9/11後の視聴者の視聴傾向の保守化によって、今年「フレンズ」が最も注目を集めたTV番組になったことが挙げられる。


これまで「フレンズ」は人気のわりにはあまりありがたがられてない嫌いがあって、出演者はそれを気にしていたように見える。それで全員、TVはこれで終わりにして、映画スターへのステップ・アップを図っていた。しかし、既にTV界ではスターだからといって、映画界ではそう簡単に問屋は卸さない。全員が全員様々な映画に出ているのだが、ここまでまがりなりにも映画界に足がかりをつかんだのは、せいぜいジェニファー・アニストンとリサ・クドロウくらいだ。アニストンは最新作の「グッド・ガール」が好評だし、クドロウも「アナライズ・ダット」等、個性的なバイ・プレイヤーとして地道に活動している。


しかし、あとの4人は出演作こそ結構あるものの、ほとんどが失敗作となっており、TVスターだからといって消費者を劇場に運ぶ力のないことは誰の目にも明らかだった。多分自信はぐらついていただろう。そういう時、「フレンズ」がここへ来て初めてエミー賞のコメディ部門最優秀賞を獲得、アニストンも主演女優賞を獲得と、一挙に注目度が高まった。初めて評価されたわけであり、これならもう一年くらいやってもよかろうと出演者の皆々が考えたのも無理からぬ話である。


「フレンズ」はとにかく人気があったから、別に彼らのその選択をどうこう言う気はないが、しかし、気になるのはそのことが及ぼす影響である。特に来年、やはり番組終了が宣言されているHBOの「ザ・ソプラノズ」と「Sex and the City」が、「フレンズ」にあやかってまたもう一年やるなんて言い出さないだろうなと、私なんかはふと不安になったりする。ネットワークでも「フレンズ」に次いで人気のあるシットコム「エヴリバディ・ラヴス・レイモンド」が、実は来年契約更改だ。「レイモンド」は「フレンズ」が終わるならアメリカで最大の人気番組になることは必至だった。「フレンズ」がもう一年続くことが、契約更改の交渉にいったいどういう影響を及ぼすか。人気番組は続こうが辞めようが、やはり周りに影響を与えないではいられない。



5. 著名プロデューサー製作番組の明と暗


一気にアメリカTV界の新ブランドと化したジェリー・ブラッカイマーのようにプロデュースする番組が続けてヒットするプロデューサーばかりではなく、そこには当然のように失敗するプロデューサーもいる。今年、その躓きが最も大きく話題になったのは、なんといってもFOXがたった2度放送しただけでキャンセルされた「ガールズ・クラブ (Girls Club)」プロデューサーのデイヴィッド・E・ケリーだろう。


ケリーは今年、5シーズン続いた「アリーmyラブ (Ally McBeal)」が最終回を迎え、その後継ぎとして大々的に鳴り物入りで宣伝、注目、期待されていたのが、「ガールズ・クラブ」だった。それがたったの2回放送されただけで、誰も見てないからキャンセルされるとはいったい誰が予想できたか。その他にもマイケル・マンがCBSで製作した「ロバリー・ホミサイド・ディヴィジョン (Robbery Homicide Division: RHD)」が、年を越せずにキャンセルされた。これは私にとっては非常に残念である。


「ガールズ・クラブ」のキャンセルは、番組を実際に見てみると、実は意外でもなんでもない。結局舞台を変え、登場人物を増やした「アリー」の二番煎じに過ぎず、新番組にする意味はほとんどない。しかし「RHD」はさすがマンで、非常にレヴェルの高い番組を提供してくれたのだが、TV番組としては、視聴者に緊張を強い、エモーショナルに過ぎるその内容が、逆に視聴者を獲得するのに逆効果となった。見ていて引き込まれる、熱中するという点では、今シーズンの新番組の中では「ウィズアウト・ア・トレイス」と1、2を争うんだが、はっきり言って暗い内容に視聴者はついていけなかった。


著名なプロデューサーではなく、れっきとしたハリウッド・スターのベン・アフレックが製作した謎解きドラマ「プッシュ、ネヴァダ (Push, Nevada)」(ABC) も、話題性は高かったわりには、3回放送されただけでキャンセルが発表、しかし、視聴者参加型ドラマとして、犯人を当てた者には賞金100万ドルと大々的に宣伝していただけに、とにかく曲がりなりにも犯人が推定できる回までは放送された。犯人を見事に当てた視聴者には無事100万ドルが授与されたが、番組として話題を提供したのはそこまで、後は完全に人々の記憶から消えた。


その他、著名な番組プロデューサーが関与していながら成功しなかった番組としては、「バフィ 恋する十字架」のジョス・ウェドンがFOXで製作した「ファイアフライ (Firefly)」や、「ER」のジョン・ウェルズがCBSで製作した「プレシディオ・メッド (Presidio Med)」等がある。「プレシディオ・メッド」だけは少なくとも今シーズン一杯は持ち応えることが決まっているが、「ファイアフライ」のキャンセルはほぼ間違いないところで、結局、ジェリー・ブラッカイマーの一人勝ちが目立つシーズンとなった。



6. デイヴィッド・レターマン、CBS残留


春先のデイヴィッド・レターマンのCBS残留かABC移籍かを巡る報道合戦は、近年で最もドラマティックなニュースだったと言える。詳しくはこちらに書いたので参照してもらうとして、ありとあらゆるソースを用いて事実を暴こうとするアメリカのマスコミの情報収集能力は、心胆寒からしむものがあった。また、その当事者となったレターマンのマスコミのさばき方も年季のいったもので、さすがプロだと実感させてくれた。視聴率の点では裏番組のジェイ・レノの「トゥナイト」(NBC) にまだ一歩及ばないが、レターマンの「レイト・ショウ」はまだまだ当分安泰だと言える。



7. エミー賞授賞式中継、HBOが中継権獲得?


11月、ペイTVのHBOがエミー賞授賞式を中継したいと言い出したために、アメリカTV界にちょっとした波乱が巻き起こった。アメリカTV界の祭典、エミー賞の授賞式は、現在、各ネットワークが毎年持ち回りで中継している。ところが近年、ペイTVのHBOが放送するオリジナル・シリーズが、ネットワーク番組を尻目にエミー賞の主要な賞を独占するという事態が連続して発生している。HBOはエミー賞授賞式を中継することにより、もっと自社番組を有効に宣伝できると踏んだのだ。エミー賞は、アメリカのTV界の発展のために設立された賞だとはいえ、元々「アメリカTV界」という言葉が意味していたものはネットワークということであり、ネットワーク幹部がこのことを快く思っていなかったことは想像に難くない。


エミー賞は業界内部の賞であり、ネットワークの宣伝にもなるため、アカデミー賞やグラミー賞等の他の業界の著名なセレモニー中継に較べると、中継料が非常に安く抑えられている。因みにABCが中継するアカデミー賞の中継権は4,000万ドル、CBSが中継するグラミー賞の中継権は2,500万ドルであるが、エミー賞はたったの300万ドルに過ぎない。これはともかく、エミー賞主催のTV芸術科学アカデミーとネットワークの利害が一致しているためである。アカデミーにとってはエミー賞はまたとない宣伝の場であるし、それはネットワークの立場からも言える。だからこそお互い様ということで、これまでエミー賞の中継権は非常に低く抑えられていたのだ。


ここでその利害に関係のないHBOが、うちに中継させてくれれば1,000万ドルの中継料を支払いましょうとしゃしゃり出てきた。ここでアカデミーが少しぐらついた。労せずして一気にこれまでの3倍以上の金が黙っていても懐に入ってくるのである。そりゃあ心も動くだろう。しかし黙っていなかったのはネットワーク側である。もしアカデミーが中継権をHBOに譲り渡すのなら、ネットワークの番組に出演しているスターを皆、賞には出席させないと息巻いた。


これはアカデミーも困る。いくら実際の賞をHBO番組が受賞することが多いとはいっても、ネットワーク番組のスターがいてこそのエミー賞セレモニーである。彼らが出席しないエミー賞に価値はない。というわけで、結局、最終的にネットワーク側もこれまでの中継権が異様に安過ぎたということを認め、550万ドルの中継権を支払うということでアカデミーと合意、結局エミー賞の授賞式中継は今後もネットワークで放送されることになった。とはいえ、550万ドルでもアカデミー賞と較べればまだ全然安いんだけれども。



8. ケーブルTVにおける報道番組の大混戦


今年注目されたケーブルTVにおける報道合戦とは、基本的にFOXニュース・チャンネル (FNC)、CNN、MSNBC間における視聴者獲得競争の過熱を意味する。特に端的に、平日夜8時台で現在無敵のニュース解説番組、FNCの「ジ・オライリー・ファクター (The O'Reilly Factor)」に、今夏からCNNが「コニー・チャン・トゥナイト (Connie Chung Tonight)」、MSNBCが「ドナヒュー (Donahue)」という新番組を編成、現在最も注目されるニュース番組の時間帯となっていることを指す。


元々この時間帯は、ビル・オライリーがホストのFNCの「オライリー・ファクター」が向かうところ敵なしを誇っていた。このおっさん、がちがちの頑固じじいで、そういう人間がばんばん歯に衣着せずに意見 (文句?) を言うところが受けている。右寄りの人間なのだが、右も左も寄りすぎると過激になって破壊的な言動に走るので、一見しただけでは右か左かわからない。「オライリー・ファクター」が出るまではこの種の番組ではCNNの「ラリー・キング・ライヴ (Larry King Live)」が長年にわたって視聴率No.1の座を保持していたのだが、現在ではケーブル局のニュース解説番組と言えば、誰でも即座に「オライリー・ファクター」を思い浮かべるまでになった。


その「オライリー・ファクター」に対しCNNが持ってきた「コニー・チャン・トゥナイト」は、著名な女性アンカーのコニー・チャンを起用した番組で、NSNBCによる「ドナヒュー」は、かつてネットワークの日中の時間帯で最も知られた同名トーク番組のホストを4半世紀にわたって務めたフィル・ドナヒューによる、新しい番組である。現在のところ、視聴率の点では「コニー・チャン」が「オライリー・ファクター」の半分、「ドナヒュー」がその「コニー・チャン」の半分といった感じで、特に「ドナヒュー」が苦戦している。


日中トークの代表的番組だった「ドナヒュー」は、会場に観客を入れ、ホストのドナヒューがその間を歩き回りながら意見を訊いたりするという、トーク番組の原型を確立した番組として知られている。ところが現在のニュース解説番組としての「ドナヒュー」は、勝手知ったるそのスタイルを止め、スタジオにドナヒューが一人座って時事解説を行うのだが、結局それだとドナヒューの十八番である、うまく相手の話を誘導するインタヴュウ技術を活かせず、結局、新番組はただのどこにでもあるようなニュース解説番組になってしまった。それでは視聴者を獲得することはできず、慌てたドナヒューはニュース解説番組なのにまた以前のようにスタジオに客を入れて番組を進めるスタイルに戻ったりして、色々工夫している。「ドナヒュー」は現在、キャンセルが囁かれているが、さて、来年はどうなるか。



9. TLCを中心とした家屋改修番組の勃興


数年前から始まっているのに今年ブレイクした番組というのはいくつかあるが、その代表と言えば、やはりTLCの「トレイディング・スペイシズ (Trading Spaces)」だろう。「スペイシズ」は2組のカップルに部屋を交換させ、お互いにその部屋をリフォームさせるという、ただそれだけのリアリティ・ショウである。隠しカメラがあるわけでもなければ、賞金が出るわけでもない、結構人畜無害の番組で、「サバイバー」の裏切りの世界に慣れ切った人間が見れば、ほぼ間違いなく退屈と言うに違いない類いの番組だ。


実はこの番組、元はと言えば英BBCで放送され、かの地でもわりと人気番組になっているという「チェンジング・ルームス (Changing Rooms)」をアメリカ風に焼き直しただけなのだが、これが「サバイバー」についていけない保守的な層を中心に、やたらと人気が出てしまったのだ。これに味を占めたTLCは、今年、スピンオフ番組の「ホワイル・ユー・ワー・アウト (While You Were Out)」を編成、今では両番組はTLCの看板番組となっている。朝から晩まで「スペイシズ」の過去のエピソードを続けて放送した「トレイディング・スペイシズ・マラソン」の視聴率がどのくらい高かったかを言うと、誰でもびっくりするくらいなのだ。


それだけでなく、「スペイシズ」人気と並行して、実は同様の部屋の改修や家庭菜園の改築とかいったテーマを持つ番組の人気が徐々に上がっている。この種の番組としては、アメリカには公共放送のPBSが放送している「ディス・オールド・ハウス (This Old House)」という最長不倒記録を持つ長寿番組がある。「ハウス」は既に放送開始して4半世紀が経つという、根強い人気のハウ・トゥ番組なのだが、最近の「スペイシズ」人気にあやかって、こちらも現在熱い眼差しを浴びている。こちらは完全にハウ・トゥものに徹した、エンタテインメント性なんてかけらもない実直な番組なんだが。その他にも、この種のリフォームやドゥ・イット・ユアセルフ的な番組に目を向けるならば、HGTV (Home and Garden TV) という、まさしくその種の番組を朝から晩まで放送している専門チャンネルがあり、うまくブームに乗っかって成長している。これらの番組がなぜ、今、突然人気が上昇しているのか。やはりポスト9/11の影響だろうか。それだけとも一概には言えないような気がするのだが。



10. 「アニメ」はアメリカTV界を制するか


現在、アメリカの子供向け番組の時間帯は、日本製番組の活躍が非常に目立つようになっている。その筆頭はもちろんアニメだ。アニメ番組以外でも、だいぶ以前から「パワー・レンジャー」みたいな番組が人気を持っていたが、「ポケモン」のブレイクは完全にアニメ (アニメーションではなく) に市民権を与えるのに貢献した。今、子供向け番組で最も人気のあるのは、ニコロデオンの放送するアニメーション「スポンジボブ、スクエアパンツ (SpongeBob, SquarePants)」だが、人気の上昇ぶりだけを見るなら、文句なしにWBが放送している「Yu-Gi-Oh!」こと「遊戯王デュエルモンスター」が他を圧倒している。さらに以前から人気の「ドラゴンボールZ (Dragonball Z)」や「デジモン (Digimon)」に加え、「とっとこハム太郎 (Hamutaro)」、「はれときどきぶた (Tokyo Pig)」なんてわりとヴァラエティに富んだアニメが続々と編成されている。


アニメに限らないが、FOXは今秋から土曜朝の子供向け番組の時間帯をすべて日本製番組で揃えており、「ウルトラマン・ティーガ (Ultraman Tiga)」や「キン肉マン (Ultimate Muscle: The Kinnikuman Legacy)」等の番組を編成している。これらの番組はそれなりに納得できる視聴率を獲得しており、アメリカと諸外国の番組の敷居が低くなったことを痛感させる。しかし、土曜の朝、目が覚めてTVのスウィッチをひねると朝から「ウルトラマン」をやっており、いきなり画面には日本語の看板が、しかもどう見ても日本人ヅラの登場人物が英語を喋っているのを見ると、ふとなにかしら時代の変遷というものを感ぜずにはいられない。



番外. カール・ルイスの俳優デビュー


9つのオリンピック金メダルを持ち、多くの人が史上最高のアスリートと考えているカール・ルイスが、引退後、何をしているのかはまったく知らなかった。6月にTBSが放送したTV映画「アトミック・ツイスター (Atomic Twister)」を見るまでは。


「アトミック・ツイスター」は、原子力発電所を竜巻が (二つも) 直撃するという奇想天外なTV映画で、そんなの、金をかけて迫力で圧倒できなければただのチープな発想のチープな番組にしかならないのはわかりきっているはずなのに、本当にチープな番組にしてしまったというかなり情けない番組である。しかし、「NYPDブルー」以来わりと気になっているシャロン・ローレンスが主演ということもあり、ついでに言うと、ローレンスが「NYPDブルー」を去った後に新レギュラーとして「NYPDブルー」に出演しているマーク-ポール・ゴセラーまで出ていることもあり、「NYPDブルー」ファンの私はついつい見てしまった。


そしたら、なんか見覚えのある顔の黒人が、その、被害を受ける発電所の守衛役で出ている。あの顔に見覚えはあるが、しかし、映画やTV番組で見知った顔ではない。はて、ではどこで見たんだっけ? と考えて、はたと思い出した。こいつ、カール・ルイスだ! 待て、でも、しかし、世紀のアスリートがあんな情けない役でB級TV映画にちょい役出演するか? しかも見ていたら、彼は直撃する竜巻に巻き込まれてしまい、あっけなく頓死するのだ。まさか、いくらなんでもかのカール・ルイスがこんな役で俳優稼業になんか精を出すなんて。第一、カール・ルイスなら竜巻が襲って来ようがなんだろうが、全力で走れば簡単に振り切れるだろう。カール・ルイスより速く走れる人間なんていないのだ。なぜ彼を、あの、指をすべて開いたまま大きく腕を振るカール・ルイス走法させない。後ろに竜巻が間近に迫っているではないか。何のためにわざわざカール・ルイスを持ってきてんだ。


しかし彼は私の動揺なんかには気づくことなく、結局強風に巻き込まれてしまう。その後発電所の中から外に出ようとしたローレンスがドアを開けようとしてもなかなか開かないので、どうしたもんかとえいやっと力を込めてやっとのことでドアを押し開き、ドアの前に倒れていたためドアをふさぐ形で絶命していたカール・ルイスを発見するのであった。これがあのカール・ルイスの末路か! こんなバカなことってあるか。しかもローレンスは、後で同僚のところに行き、彼の死を知らせ、皆で、そうか、あいつはいい奴だった、と軽く黙祷する、みたいなシーンが用意されており、うわあ、あんな情けない形でカール・ルイスが死んでしまった、と、私は気も狂わんばかりに身悶えたのであった。








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2002年アメリカTV界10大ニュース

 
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