2000年アメリカTV界で話題をさらったのは、なんといってもABCの「フー・ウォンツ・トゥ・ビー・ア・ミリオネア (Who Wants to Be a Millionaire)」とCBSの「サヴァイヴァー (Survivor)」に代表される、いわゆるリアリティ・ショウの全盛であった。もちろん圧倒的人気を示したこの両番組以外に、話題にならず消えていったCBSの「ビッグ・ブラザー (Big Brother)」のような失敗例も数多くあった。ABCの、インターネットとコメディとの融合と銘打った「ドット・コメディ (Dot Comedy)」に至っては、なんとたった1回放送されただけでキャンセルされ、人気がなければいつキャンセルされてもおかしくないという現状に慣れている関係者をすら驚かせた。私も連続ものじゃないからこれはいつ見てもいいなと思っていたので、テープにすら録らなかった。今となっては惜しまれる。こういうのを見ておくと、逆に後で箔がつくんだよね。


「ミリオネア」の成功も、雨後の筍のように数多くの類似ゲーム番組を生み出したが、そのすべてが失敗し、結局残ったのは本家の「ミリオネア」ただ一つだけだった。「ミリオネア」は今でも視聴率上位の成績を常時獲得しており、結局、この番組だけが視聴に耐える番組であることを証明している。


これらのリアリティ・ショウは実は、すべてアメリカ製のオリジナル番組ではない。「ミリオネア」も「サヴァイヴァー」も「ビッグ・ブラザー」も、すべてオリジナルはヨーロッパ製であり、そこで人気の出た番組の新たな製作権を購入し、アメリカ風に手直しを入れて放送しているものである。特に「ビッグ・ブラザー」を製作したオランダの番組製作会社エンデモルのアメリカ躍進はすさまじく、「ビッグ・ブラザー」はアメリカでこそヒットしなかったが、それに代わる第2、第3のリアリティ・ショウを続々とアメリカのネットワークに売り込んでおり、それらは2001年の年明け早々からどんどん放送されることになるだろう。私は、その中では、ABCが放送する、参加者の中に一人スパイを紛れ込ませ、それが誰であるかを当てるゲーム/リアリティ・ショウの「モール (Mole)」が、最も成功の可能性が高いと睨んでいる。というか、私の目から見てこれが最も面白そうに見えるということなんだが。


「サヴァイヴァー2」も1月の最終日曜、既に年間視聴率No.1の座が確定しているプロ・アメリカン・フットボール (NFL) の優勝決定戦「スーパーボウル」中継の直後から放送が始まる。今度はオーストラリアを舞台とするが、既に一度見たフォーマットがまた成功するか、お手並み拝見というところである。しかしCBSは番組に自信を持っており、「サヴァイヴァー2」をなんとNBCの最強シットコム「フレンズ (Friends)」の裏番組として編成する。2月からはアメリカTV界、春の陣が始まるといったところか。


これらのリアリティ・ショウのあまりの人気の影に隠れて見落としそうになるが、実は2000年のアメリカTV界は、上質のドラマが健闘した年でもあった。昨年から始まったHBOの「ザ・ソプラノズ (The Sopranos)」とNBCの「ウエスト・ウィング (West Wing)」は、今年大人の視聴にも耐える番組であることを証明し、さらに人気を高めた。地味な内容でありながら着実に視聴者層を開拓しているABCの「ワンス・アンド・アゲイン (Once and Again)」の健闘は、私には実に驚きであった。


もちろん旧来からのドラマ番組も健闘している。NBCの「ER」の強さは相変わらずだし、ABCの「NYPDブルー (NYPD Blue)」も堅実である。昨年番組内で遊び過ぎて人気を落としたWBの「フェリシティの青春 (Felicity)」とFOXの「アリーmyラブ (Ally McBeal)」は、両番組とも今年堅実路線に戻り、人気のあった頃を上回るほどの視聴率を獲得した。「フェリシティの青春」は、たまたま番組の人気の凋落が主人公のフェリシティを演じるケリ・ラッセルが髪を切った頃と重なり、人気を盛り返したのがまた髪を伸ばし始めたのと一致していたため、ラッセルの髪の長さが番組の人気と比例するとあちこちで言われている。


これらの上質なドラマの健闘とは逆に、今年はこれまで人気のあったプライムタイム・ソープの凋落が決定づけられた年でもあった。一時FOXの屋台骨を支えた人気ドラマ「ビバリー・ヒルズ青春白書」がついに最終回を迎え、その代わりとして編成されたダレン・スター製作の「ストリート (The Street)」は放送開始後僅か一と月でキャンセル、アーロン・スペリングがNBCで製作した「タイタンズ (Titans)」も同様の運命を辿った。私はまったくソープのファンではないのでこの傾向が続いて欲しいと思うが、数年後には新しいソープ・ブームがまたやって来そうな気がする。


シットコムに目を移すと、FOXの「マルコム・イン・ザ・ミドル (Malcolm in the Middle)」よりエポック・メイキングな番組の登場を私は思い浮かべることができない。スタジオ収録でない、観客の笑い声(ラフ・トラック)の入らないシットコムというのは、これまでにもあった。かつての人気番組「素晴らしき日々 (Wonder Years)」だってこの範疇に入れてもいいだろう。しかし、「マルコム」はそれでもシットコムであり、ドラマとしての比重が高かった「素晴らしき日々」とはやはり毛色が違う。「マルコム」の現在の笑いは、ギャグというよりも、哀歓漂うペーソスが主体となってきているような気がするが、それでもやはりシットコムである。この手の番組がもっと増えてきてもらいたいと思う。


一昨年から始まったが、昨年から今年にかけてブレイクしたNBCの「ウィル&グレイス (Will & Grace)」は、最近のゲイ・ブームに乗って、主人公のデブラ・メッシングよりも脇の二人のゲイ/レズビアン役が話題となった。かつてABCの人気番組であった「エレン (Ellen)」で主人公を演じるエレン・デジェネレスが番組内でカミング・アウトして以来、ゲイのキャラクターというのは番組になくてはならないものになってきている。NBCは「ウィル&グレイス」以外にも、「フレイジャー (Frasier)」、「ジャスト・シュート・ミー (Just Shoot Me)」等、人気シットコムを多く擁し、その牙城は当分は揺るぎそうもない。


異変が起こるとしたら、数年前から始まっているのに、最近になって急激に人気が上昇してきたCBSの「エヴリバディ・ラヴス・レイモンド (Everybody Loves Raymond)」から辺りか。「レイモンド」はこの数年で初めて、シットコムで「フレンズ」を上回る視聴率を獲得した番組となった。CBSは「レイモンド」が編成されている月曜日に「キング・オブ・クイーンズ (King of Queens)」、「ベッカー (Becker)」、新番組の「イエス、ディア (Yes, Dear)」等の人気シットコムを揃え、NBC追撃に余念がない。


チャンネル別に今シーズンの新番組を見ると、ABCは「ミリオネア」を週4回編成したこともあって新番組を編成する余裕があまりなく、その新番組も大した話題とはならなかった。ジーナ・デイヴィスが主演したシットコム「ジーナ・デイヴィス・ショウ (Geena Davis Show)」と、ゲイブリエル・バーンが主演したシットコム「マディガン・メン (Madigan Men)」は、共にほとんど笑えないという評判が定着してしまい、かろうじて「ジーナ」は今シーズン一杯は続投が決定したものの、「マディガン・メン」は今シーズン限りで姿を消す。唯一のドラマ「ギデオンズ・クロッシング (Gideon's Crossing)」も苦戦している。


NBCも「ER」を筆頭に「ロウ&オーダー (Law & Order)」や「サード・ウォッチ (Third Watch)」等の従来番組群が相変わらずの強さを誇っているため、それほど新番組が健闘したという印象はない。FOXの「マルコム」を模した「タッカー (Tucker)」は、今シーズンに最初にキャンセルされた番組という汚名をかぶせられ、オリヴァー・プラット主演の「デッドライン (Deadline)」もすぐその後に続いた。「となりのサインフェルド」出身のマイケル・リチャーズを主人公に起用した「マイケル・リチャーズ・ショウ (The Michael Richards Show)」も一と月しか持たず、その中ではオフ・ビートのコメディ/ドラマの「エド (Ed)」がかろうじて生き残っているだけといった有り様である。


CBSは、今年最も躍進したネットワークということができるだろう。夏の「サヴァイヴァー」のヒットの勢いは秋の新シーズンになっても治まらず、「C.S.I.」、「ディストリクト (The District)」と、新番組としては最も高い視聴率を獲得するドラマ番組を編成、シットコムでも「イエス、ディア」や「ベット (Bette)」という人気番組を得た。前評判は断トツであった「逃亡者」のリメイク「フュージティヴ (The Fugitive)」が伸び悩んでたり、1月に編成した、ヒットメイカーのはずのスティーヴン・ボチコが製作した「シティ・オブ・エンジェルス (City of Angels)」の失敗という例もあるが、昨年から始まった「ジャッジング・エイミー (Judging Amy)」は頑張っており、「犯罪捜査官ネイビー・ファイル (JAG)」も健闘している。これでもうちょっと若い層に人気のある番組を編成できたら、老人ネットワークという陰口を払拭できるかも知れない。


デイヴィッド・E・ケリーは「アリーmyラブ」に続いて新たな学園ドラマ「ボストン・パブリック (Boston Public)」を、ジェイムズ・キャメロンは初めてのTVシリーズとなるSF「ダーク・エンジェル (Dark Angel)」を共にFOXで製作した。FOXは昨年、編成したすべての新番組をキャンセルせざるを得ないなどどツボに入っていたから、この二つの番組の成功はさぞ嬉しかろう。シットコムでもジョン・グッドマン主演の「ノーマル・オハイオ (Normal, Ohio)」こそ既にキャンセルされたが、「マルコム」、「タイタス (Titus)」に加え、従来アニメーションの「シンプソンズ」や「キング・オブ・ザ・ヒル (King of the Hill)」が健闘している。「フー・ウォンツ・トゥ・メアリ・ア・マルチミリオネア (Who Wants to Marry a Multimillionaire)」のスキャンダルという話もあったが、後半はよく頑張った。来年またふざけたリアリティ・ショウを編成しないことだけを祈る。


WBは「フェリシティの青春」と共に、一時視聴率が目に見えて下がっていた「ドーソンズ・クリーク (Dawson's Creek)」も復活、第2次ブームを産み出している。ティーンエイジャーの流行りすたりは本当に読めない。実はこれらの見映えのする番組の影に隠れてあまり話題にはならないが、WBで最も高い視聴率をとる番組は、人畜無害の家族ドラマ「セヴンス・ヘヴン (Seventh Heaven)」である。私に言わせてもらえれば眠くなる番組の代表であるが、信心深い中流階級に根強い人気がある。しかし、新番組ではこれといったヒットは出なかった。批評家には受けがよかったが今一視聴率が伸びない「ギルモア・ガールズ (Gilmore Girls)」を筆頭に、「グロス・ポイント (Grosse Pointe)」、「ニッキ (Nikki)」、「ハイプ (Hype)」等、すべて伸び悩んでいる。


WBはそれでも、UPNよりはまだましだと言えるだろう。可哀相にUPNで唯一ヒットしていると言える番組はプロレス中継の「WWFスマックダウン! (WWF Smackdown!)」だけで、それ以外の番組を見ているという人を私は知らない。2本のSF「レヴェル9 (Level 9)」、「フリーダム (Freedom)」と、シットコム「ガールフレンズ (Girlfriends)」も低調だ。実はUPNは、黒人ポップ歌手のブランディが主演のシットコム「モエシャ (Moesha)」を放送している。この「モエシャ」、視聴率はそれほど高くはないが、とにかく他の全番組の視聴率が低すぎるために、キャンセルされずに何年も続いている。そのため、誰も見ていないヒット番組というあまりありがたくない言われ方をしている。


シンジケーションでは「アンドロメダ (Andromeda)」のヒットは嬉しいニュースであったが、一方でそれを上回るヒット番組であった「ズィーナ (Xena)」が今シーズン限りで姿を消すことも確定した。「ズィーナ」はシンジケーションでは断トツの人気なのだが、人気番組は契約更改毎に製作費が上がる。製作費に比例するほどの視聴率は得ていないとの判断だった。実はこの主演のズィーナを演じるルーシー・ローレスは以前ブロードウェイのミュージカルで一時主演を務めたことがあるのだが、私はその時たまたまその劇場の前を通りかかって、楽屋入りするローレスを見かけたことがある。TVの何倍も本物の方が美人だった。その「ズィーナ」も姿を消すか。シンジケーションも寂しくなるな。


ケーブル界ではペイTVのHBOが「ザ・ソプラノズ」、「Sex and the City」、「オズ (Oz)」と、人気、実力揃った番組を揃え、他の追随を許さない。年末になってライヴァル局のショウタイムが編成した「クイア・アズ・フォーク (Queer as Folk)」が、どこまでその差を縮めることができるか。ショウタイムはこの他にも「リザレクション・ブールバード (Resurrection Blvd.)」という新番組を編成、来年まで更新しているが、「ザ・ソプラノズ」や「Sex and the City」に較べれば人気の方は今一つ。昨年から始まった「ベガース&チューザース (Beggars & Choosers)」も今シーズン限りが決まっている。あと一つくらい何か話題となるシリーズ番組が欲しいところだ。


ベイシック・チャンネルでは最大手のTNTで、初めてのドラマ・シリーズ、「ブル (Bull)」が始まった。来年は人気を確立できるかどうかの正念場になるだろう。ニッチェ・チャンネルながら女性に圧倒的人気のあるライフタイムは、二人の女医が主人公の医療ドラマ「ストロング・メディスン (Strong Medicine)」の放送を開始、確実に視聴者層を開拓している。来年も新年早々新しい、今度は女性刑事が主人公の群像ドラマ「ディヴィジョン (The Division)」を編成する。来年も目が離せないチャンネルになりそうだ。


ニッチェ・チャンネルといえば、SF専門のSci-Fiは、実はケーブル・チャンネルで最も多くオリジナル番組を編成しているチャンネルである。今年も「インヴィジブル・マン (Invisible Man)」も編成、気を吐いた。来年はいよいよスティーヴン・スピルバーグ製作の10時間SFミニシリーズ「テイクン (Taken)」が放送の予定だ。この番組、実は確か2000年放送と2年前から延々と宣伝していたのにもかかわらず、気がついたらいつの間にか来年放送になっていた。本当に製作しているだろうか。あれだけ宣伝費使っといて今さらキャンセルということはないと思うが‥‥。コメディ・セントラルでは長らく人気を維持している「サウス・パーク (South Park)」のクリエイター、マット・ストーンとトレイ・パーカーが、満を持して今度は実写のコメディ (題未定)を製作する。春頃放送開始の予定だ。「サウス・パーク」に次ぐ人気番組となることができるか。


音楽専門チャンネルのはずがどんどん若者向け総合チャンネルとなりつつあるMTVでは、「2gether」、「リヴ・スルー・ディス (Live Through This)」と、ドラマ・シリーズが続いた。「ジャックアス (Jackass)」なんていう滅茶苦茶ヴァラエティもあった。この傾向は来年も続くはずであり、ますます音楽から離れていく。その他のベイシック・チャンネルでは、FOXファミリーが「ハイヤー・グラウンド (Higher Ground)」、TNNが「13ホイールズ・オブ・ジャスティス (I3 Wheels of Justice)」、USAが「ハントレス (The Huntress)」、「カヴァー・ミー (Cover Me)」等のアクションものを編成、そうそう、USAは今年、一時はキャンセルを発表した「ニキータ (La Femme Nikita)」を、代わりに編成した番組が「ニキータ」より視聴率が悪かったために、キャンセルを撤回、また改めてスケジュールに戻した。「ニキータ」ファンには福音となっただろう。


子供向け番組では相も変わらずニッケルオデオンの「ラグラッツ (Rugrats)」が断トツの人気を誇っているが、「ケイトリンズ・ウェイ (Caitlin's Way)」は既にロウ・ティーンの女の子の必須番組となっている。カートゥーン・ネットワークで始まった「シープ・イン・ザ・ビッグ・シティ (Sheep in the Big City)」やABCの「ティーチャーズ・ペット (Teacher's Pet)」等のアニメーションは、大人の視聴にも耐えると思う。お薦めである。カートゥーンのドル箱アニメーション「パワーパフ・ガールズ (Powerpuff Girls)」は、今年映画となってスクリーンにもお目見えする。アニメーションになったジャッキー・チェンが活躍する「ジャッキー・チェンズ・アドヴェンチャー (Jackie Chen's Adventure)」なる番組もある。ジャパニーズ・アニメーションも、健闘しているのは「ポケモン」だけではない。「ドラゴンボールZ」、「デジモン」、「カードキャプター・サクラ」等も視聴率を伸ばしている。第2の「ポケモン」を目指して、今後も続々和製アニメがアメリカ市場に登場予定だ。


さて、駆け足で今年のアメリカTV界の現状を見て回ったが、来年当たり、デジタル化の波も本格化し、チャンネルもさらに増えると思われる。今でさえ全部のチャンネルに目を配るのは到底無理だというのに、さらに増えるか。いや、まあ、質の高いのが残る競争ならこちらも歓迎だ。受けて立とうではないか。来年がアメリカTV界にとって実りある年でありますように。






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2000年アメリカTV界を振り返って

 
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