アメリカTV界の今年の印象を決定づけた重要なポイントを振り返る。その1。




  1. 1. 暴動か謀反か反乱か革命かクーデターか、ただでは退かないドナルド・トランプの悪足掻き 

 

新年早々の、ドナルド・トランプ元大統領の煽動による民衆の国会議事堂占拠は、これはもう、堂々と国家反逆罪で刑務所に入れても文句ない所業としか思えなかった。自分の国の法律を安易に無下にできるやつが、国家の最高職か。それとも、あるいは大統領を経験しているからこそ、自分ならできると思い込めるのかもしれない。 

 

いずれにしても、トランプの口車に乗せられた多くの者たちが国会議事堂に乱入するのをとらえたTV中継は、TVニューズの最高峰というか、めったに見れない圧倒的臨場感であったことは確かだ。乱入側からも一人、女性が警備から撃たれて死亡しているが、撃たれた人間が後ろに跳び跳ねるというのは、ハリウッドの映画の中だけではなく、本当にああなるんだなと知った。 

 

2021年末時点で、まだトランプの責任問題についての決着は見ていない。というか、さらに事態は紛糾しているという印象がある。パンデミックを終わらせることができずに、インフレやプーチン、習近平の武力化を抑えきれないジョー・バイデン大統領の求心力が低下しており、事態はまだまだもつれそうだ。 

 

 

  1. 2. 人種問題に関する裁判の判決中継 

 

今年もアメリカでは極右の台頭や人種差別による事件が多く発生した。その中でも、警官による過剰暴力が問題となったミネソタのジョージ・フロイド死亡事件では、警官のデレク・ショウヴィンが有罪となり、ジョージアでジョギング中のアマド・アーベリーを殺害して同様に有罪となったトラヴィスとグレッグのマクマイケル親子の裁判にも、多くの耳目が集まった。いわばNBCの「ロウ&オーダー (Law & Order)」を見る感じで、TVに釘付けになった者も多かった。 

 

ウィスコンシンでデモにライフルを持って駆けつけ、止めようとした男を撃ち殺したティーンエイジャーのカイル・リッテンハウスには無罪判決が降りた。これは白人少年が白人を撃ち殺した事件で、人種問題というよりも銃規制の点から注目された。 

 

これら以外にも大小様々な人種差別問題、銃乱射事件が発生し、事件報道、裁判中継を人々は注視した。 因みに年末には、自分で人種差別事件を捏造して被害者の振りをしたFOXの「エンパイア (Empire)」のジェシ・スモレットの有罪も確定した。アメリカの法システムが、ちゃんと機能していると信じたい。今年、多くの者がドラマやコメディ、スポーツ中継よりも、ニューズを見ていたことは間違いない。 

 

 

  1. 3. リメイク・リブート花盛り 

 

近年、年間を回顧して毎年のように今年はかつての人気番組のリメイク・リブート・リヴァイヴァルがブームだったと言っているような気がするが、実際、年を追ってその傾向は強くなりこそすれ、ほとんど弱まってはいない。 

 

「ザ・シークレット・ハンター (The Equolizer)」CBS 

「セックス・アンド・ザ・シティ新章 (And Just Like That)」HBO Max 

「ドギー・カメアロハ, M.D. (Doogie Kamealoha, M.D.)」ディズニー+ 

「デクスター: ニュー・ブラッド (Dexter: New Blood)」ショウタイム 

「ゴシップ・ガール (Gossip Girl)」HBO Max 

「CSI: ヴェガス (CSI: Vegas)」CBS 

 

これらは舞台設定が同じでキャラクターが異なるもの、同じキャラクターが再度登場するもの等、それぞれ微妙に体裁は異なっている。例えばかつての人気シットコム「天才少年ドギー・ハウザー (Doogie Houser, M.D.)」リメイクの「ドギー・カメアロハ, M.D.」は、主人公の医者が少年から少女に、舞台もハワイに変更された。「ゴシップ・ガール」も時代に応じ、キャストが多人種になりゲイやバイが加わるなどしている。 

 

一方、キャスト間の不仲が報じられた「セックス・アンド・シティ」では、オリジナル・キャストの一人キム・キャトラルは参加せず、他方、オリジナルでは死亡した「デクスター」のジェニファー・カーペンターが、デクスターを演じるマイケル・C・ホールにだけ見えるゴーストとして復帰するなど、各番組ともマイナー・チェンジが施されている。 

 

CBSでは今秋、かつての人気ドラマ「CSI」の最新スピンオフ、「CSI: ヴェガス」が始まったが、元々オリジナルの「CSI」はラスヴェガスを舞台にしており、舞台が本卦還りしただけとも言える。一方で、主要キャラクターは刷新されてはいるが、オリジナル・シリーズの主人公だったグリッソム (ウィリアム・ピーターセン) とサイドル (ジョージャ・フォックス) は、二人共同じキャラクターのまま、また番組に復活登場している。これはリメイクなのかリブートなのか、それともリザレクションと言うべきか。来年は、NBCの「ロウ&オーダー (Law & Order)」製作が決まっているなど、この傾向はまだまだ続きそうだ。 

 

 

  1. 4. Netflixの世界のTV番組の提供の成功がもたらしたもの 

 

最初「イカゲーム (Squid Game)」を見た時、どこか違和感があって、10分くらいそれが何か気づかなった。それに気づいたのは、キャラクターが英語を喋っていると気づいた時だ。 

 

Netflixは、提供作品にすべて字幕機能を備えているだけでなく、吹き替え機能も完備している。私んちでNetflixでTV番組を見る時、だいたい英米圏の番組であることが多いので、当然のように英語のキャプションが出るように設定している。その時にたぶん実際に聞こえる音声も英語に設定してあったのだと思う。通常見る分には、それでなんの問題もない。 

 

ところが、おかげで本来なら韓国語を話しているはずの「イカゲーム」の登場人物も英語を喋っており、それがキャプションにも出る。おかげでなんか違うと思いながら、最初はそれに気づかなかった。やろうと思えばどこの国の番組でも登場人物に日本語を喋らせ、日本語のキャプションを出すことも可能だ。 

 

このことが、Netflixが海外ドラマをアメリカで流通させる大きな要因となったことは間違いない。外国語番組も、登場人物に英語を話させることができるなら、ながら視聴で音だけを聞きながらでも、ある程度番組を理解することはできる。登場人物が英語を喋ることが、番組に容易に感情移入できる要因となっているのだ。同様にスペイン語番組の「ペーパー・ハウス (Money Heist)」がアメリカでここまで受け入れられたのも、ここに理由がある。 

 

おかげで「イカゲーム」は韓国産番組でありながら、ゴールデン・グローブ賞のTVドラマ部門に堂々ノミネートされていた。元々TVでは外国語部門がなかったせいということもあろうが、この分だとNetflixが映画もTVも多くストリーミングする現在、近い将来アカデミー賞からも国際長編映画賞なんてカテゴリーはなくなってしまうかもしれない。実際、一昨年のアカデミー賞も、やはり韓国産の「パラサイト (Parasite)」が獲ったわけだし。 

 

 

  1. 5. クリス・クオモCNN解雇 

 

ドナルド・トランプ関連を別にすれば、今年最もがっかりさせられたニューズの筆頭と言えばこれだろう。兄のアンドリュウ・クオモニューヨーク州知事のセクハラ疑惑に関連して、著名ニューズ・アンカーという地位を利用していち早くニューズ・ソースに接し、情報漏洩並びに情報操作を試みたことが明るみになり、CNNを解雇された。アンドリュウのコロナ・ウイルス関連のハンドリングは冷静で悪くないと思っていただけに、兄弟して思う存分がっかりさせられた。 





 

以下、次項に続く



 










< previous                                    HOME

 

2021年アメリカTV界10大ニュース。その1

 
inserted by FC2 system