トーク・ショウ 

 

トーク・ショウも番組によってリモート収録であったりステュディオ収録であったりと、番組の方向性が出た。例えば、素人目にはほとんど同じ番組である複数女性ホストによるトークでも、ABCの「ザ・ヴュウ (The View)」は基本リモートだが、CBSの「ザ・トーク (The Talk)」は、当初こそリモート収録だったが、現在では全員ステュディオに集合して、各自の間にソーシャル・ディスタンスをとるという体裁だ。以前は一つの大きなデスクの周りに座るスタイルだったものが、現在ではデスクなしで、それぞれが緩やかな曲線上に距離を置いた椅子に座っている。 

 

ドリュウ・バリモアがホストを務める新番組の「ザ・ドリュウ・バリモア・ショウ (The Drew Barrymore Show)」は、本当なら観客をステュディオに招いて収録したかったろうが、現実にはバリモア一人で、ほぼブルー・スクリーンを利用した合成でゲストや観客と話する。 

 

ヴェテラン番組の「ジ・エレン・デジェネレス・ショウ (The Ellen DeGeneres Show)」は無観客に移行したが、よくステュディオ内の観客をステージに上げてゲームしたりする番組では、無観客はちとやりにくかったろう。それよりも番組としての問題は、人好きのよさで知られるデジェネレスがホストの番組が、裏側ではかなり差別したり非友好的だと関係者が暴露したことで、プロデューサーの何人かが首を切られる事態に発展した。さらにはデジェネレス自身もコロナ陽性が発覚、今年は彼女にとっていい年とは言えなかった。 

 

いい年でなかったと言えば、夏にニューヨークのアップステイトの自宅が火事で燃えた「レイチェル・レイ (Rachael Ray)」のレイも、災難だった。番組はそれまでにその自宅からのリモート撮影に移行していたため、視聴者は既に馴染んでおり、あのキッチンから火が出たのかとインパクトあった。煙突の煤に火が燃え移ったということだ。不幸中の幸いで、怪我人はいなかった。レイは現在、新しく借りた家のキッチンからリモートで番組を放送している。話は逸れるが、番組ではレイの夫がカメラを担当しており、最初手持ち撮影でカメラがぶれたり水平とれなかったり、急なズームを繰り返すので見づらく、その度にこの下手くそ、とTVに向かって罵倒していたのだが、さすがに慣れたのか、今では特に不満はない。 

 

ABCの朝の人気トーク/ニューズの「グッド・モーニング・アメリカ (Good Morning America: GMA)」は、一昨年から日中のスピンオフ「GMAデイ (GMA Day)」改め「GMA3: ストレイハン、サラ・アンド・キキ (GMA3: Strahan, Sara and Keke)」を放送していたが、パンデミックによって番組をほとんどコロナ関連情報に特化した「GMA3: ホワット・ユー・ニード・トゥ・ノウ (What You Need To Know)」へと改編した。これによってホストのマイケル・ストレイハンはGMAへ、共同ホストのサラ・ヘインズは「ザ・ヴュウ」へと、共に古巣に復帰した。GMA3の新ホストには、エイミー・ローバックとT. J. ホームズが就任した。 

 

 

深夜トーク・ショウ 

 

収録の止まった深夜トークで最初に放送を再開したのは CBSの「ザ・レイト・ショウ (The Late Show)」で、ホストのスティーヴン・コルベアが自宅のバスルームでバスタブに浸かりながら1時間を乗り切った。以降ネットワークのすべての深夜トークは、ホストの自宅からの中継が中心となった。 

 

だいたい自宅の書斎やリヴィング・ルーム、もしくはゲスト・ルームにカメラを置いて即席のステュディオにしていたが、中には「ザ・レイト・レイト・ショウ (The Late Late Show)」のジェイムズ・コーデンのように、ガレージで収録する者もいた。 

 

印象的だったのが「ザ・トゥナイト・ショウ (The Tonight Show)」のジミー・ファロンで、ロング・アイランドの自宅の広い庭のツリー・ハウス、というか2階建ての別邸で番組を収録した。その収録時にはファロンの二人のまだ幼い娘が始終現れて手伝う、というか邪魔し、その後片隅のトンネルから下階へ滑り降りるというのが、毎回のエンディングだった。自宅の中にトンネル滑り台があるのかよということも驚くが、娘が収録中に邪魔しに来るというアンチ・プロフェッショナリズムが、ファロンの場合マイナス材料にならないというのも人徳か。 

 

現在ではこれらの深夜トークも自宅収録を終え、ほぼ全部ステュディオに戻って無観客で収録しているが、「レイト・ショウ」の場合、エド・サリヴァン・シアターに戻っては来ても、実際の収録は事務所を簡易ステュディオに見立てて撮影しているため、一見自宅の書斎と変わらず、あまり戻ってきている感じはしない。 

 

それよりも、ステュディオに戻って来た現在でも、ほとんどの番組はまだゲストとの会話は基本的にリモートというのが、番組としては最も弱いところだと思う。たまに「トゥナイト」では本当にゲストがステュディオに来てソーシャル・ディスタンスをとりながらファロンとおしゃべりしたりするが、実際に相手が目の前にいる方がやはり話も弾む。リモート・ゲストは臨場感に欠けるのだ。早く通常通りの撮影に戻れるといいのに。 

 

 

ニューズ 

 

基本的にあまり影響を受けなさそうに見えるニューズ番組も、最初の頃は結構混乱した。どこもニューズキャスター間の距離をとることに留意したのは当然で、キャスターも自宅からアンカーを務めていたりした。 

 

一番影響を受けたのはスタッフにコロナ陽性者が出たCBSで、ステュディオを使えなかったため、メインキャスターのモーリス・デュボアとクリスティン・ジョンソンが、二人共57丁目のストリートに出て、夜11時のニューヨークの路上から、二人共iPhone片手にニューズを生放送した。あれは人払いはしてたのだろうか。しかし、ものすごい即興の適応だなと感心した。 

 

 

表彰セレモニー 

 

幸運にもグラミー賞とアカデミー賞の、音楽界と映画界を代表する表彰セレモニーは既にそれぞれ1月と2月に放送済みだったために、難を逃れた。しかし、演劇・ブロードウェイのトニー賞は、夏に予定されていた上、ブロードウェイ自体が春先から完全自粛となったため、無期限延期、すなわちキャンセルされた。 

 

この状態でも開催にこぎつけた9月のTV界のエミー賞は、無観客で開催、各賞のノミニーはそれぞれ自宅やホテル等で待機、受賞した場合は、トロフィーを用意して防護服姿で待機していた関係者が、トロフィーを手渡して去るという段取りになっていた。受賞しなかった場合は、トロフィーを持ち帰った。あれはあれで面白かった。 

 

 

終わらない大統領選 

 

今年もトランプ関係報道がTVのみならずメディア界を席巻した。新型コロナ蔓延がなければ、楽勝で今年最大の話題と誰もが認めるところだ。大統領選に負けて、ごねるだけごねて思い切り飛ぶ鳥跡を濁しまくったトランプの見苦しさは、ある意味さすが大統領級だったと言える。最高裁判事任命をごり押しし、至るところで選挙をめぐる訴訟を起こして却下されまくり、かと思えば各地の選挙関係者に結果に手を加えるよう圧力をかけ、それでもダメだとなると人々を扇動して国会を襲撃させるという暴挙に出たトランプは、はっきり言って犯罪者で、こんなやつ早くとっとと有罪を宣告して一生刑務所から出さないようにしてくれ。 

 

 

お悔やみ 

 

やはりこれも一言言っておくべきだろう。アメリカのTV界を代表するパーソナリティの一人だと言える人物が二人、今年亡くなった。ABCの「フー・ウォンツ・トゥ・ビー・ア・ミリオネア (Who Wants to Be a Millionaire)」のホストで一世を風靡したリージス・フィルビンと、シンジケイションの長寿クイズ・ショウ「ジェパディ (Jeopardy)」ホストのアレックス・トレベックだ。今春ステージ4の膵臓ガンにかかっていることを公表して闘病しながらホストを続けたトレベックの場合、最後の番組を収録して2週間後に亡くなっている。合掌。 

 










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2020年アメリカTV界重大ニュース。その2

 
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