アメリカTV界の今年の印象を決定づけた重要なポイントを振り返る。




  1. 1.「トゥナイト (Tonight)」そして新深夜トーク・ショウ時代の幕開け


ジェイ・レノ−コナン・オブライエン−ジェイ・レノとホストが移り変わったNBCの「トゥナイト」は、ついに本当の本当にレノ版の最終回を迎え、今ではホスト交代におけるあのごたごたはいったいなんだったのかと思えるくらい、レノの後を継いだジミー・ファロンがつつがなくホストを務めている。


その直後に編成されている「レイト・ナイト (Late Night)」にはセス・マイヤーズが着任、こちらも淡々と回を重ねる一方、CBSの「レイト・ショウ (Late Show)」ホストのデイヴィッド・レターマンも来季限りでの引退を発表、かと思えばその後に編成されている「ザ・レイト・レイト・ショウ (The Late Late Show)」ホストのクレイグ・ファーガソンも、辞めると発表して速攻最終回を迎えてしまった。


ABCでは、これまで零時過ぎ開始だったジミー・キメルがホストの「ジミー・キメル・ライヴ (Jimmy Kimmel Live)」が11時半開始となり、ABC、CBS、NBCの3大ネットワークが同じ時間帯で深夜トークが始まるという、史上初の事態が出来した。「レイト・ショウ」次期ホストに決まったスティーヴン・コルベアはコメディ・セントラルを去り、さらには重鎮ジョン・スチュワートも「デイリー・ショウ (Daily Show)」を去ることを発表した。


これでたぶん、来年度に「レイト・ショウ」と「レイト・レイト・ショウ」の新ホストが就任し、スチュワートの後釜が決まれば、今度こそ近年の深夜トーク界をめぐるごたごたは収束し、やっと落ち着きを取り戻すはず‥‥なのだが、数年前にもそう思ったから、必ずしも事態が予想通りに進むとは限らない。果たしてまだ事態は二転三転する余地を残しているか。




  1. 2. 「ザ・ウォーキング・デッド (The Walking Dead)」とディストピア 


ケーブル界における「ウォーキング・デッド」の一人勝ちは今に始まったことではないが、若年層においてはソチ冬季五輪中継を上回る視聴率を記録、ますます強さを印象づけた。その影響もあって、文明の崩壊やその後のペシミスティックな世界を描く、ディストピアものがTV界を席巻した。


  1.     へリックス (Helix) SyFy

  2.     リザレクション (Resurrection) ABC

  3.     エクスタント (Extant) CBS

  4.     ザ・ストレイン (The Strain) FX

  5.     ザ・ラスト・シップ (The Last Ship) TNT

  6.     ザ・ロッテリー (The Lottery) ライフタイム

  7.     ザ・レフトオーヴァーズ (The Leftovers) HBO

  8.     Zネイション (Z Nation) SyFy


この傾向は、年が明けても、「ザ・ラスト・マン・オン・アース (The Last Man on Earth)」(FOX) や「iゾンビー (iZombie)」(CW)  等、コメディにも広がりを見せて続く。人々は文明の滅亡はもはや避けられないと思っているのか。しかし最近の世界の事件を見ると、そうなる可能性は高そうだなと思わざるを得ない。




  1. 3. 勝ち抜きクッキング・バトル・リアリティの定着


「料理の鉄人」ことフード・ネットワークの「アイアン・シェフ (Iron Chef)」はこのジャンルを定着させ、その後ブラヴォーの「トップ・シェフ (Top Chef)」やFOXの「ヘルズ・キッチン (Hell's Kitchen)」等の番組を生み出した。今では勝ち抜きクッキング・バトル・リアリティは、はっきりと視聴者に定着していると言っていい。


しかしそれでも手を変え品を変え多様化するこのジャンルは、今ではニッチの枠を超えた一大ジャンルへと成長した。昨年のエスクワイアの「ナイフ・ファイト (Knife Fight)」は、ジャンルがアンダーグラウンド化することによってさらにジャンルが変化成長していく気配を感じさせたが、案の定、今年もいくつも新種のバトル系クッキング・リアリティが編成された。音楽専門チャンネルのはずのMTVまでがクッキング・リアリティを製作すると、もうこれはニッチではないと思わされる。それにしてもアメリカ人って勝ち負けを決めるのが好きだ。



  1. スナック-オフ (Snack-Off)  MTV

  2. ハウス・オブ・フード (House of Food MTV

  3. アメリカズ・ベスト・クック (America's Best Cook) フード・ネットワーク

  4. フランケンフード (Frankenfood) スパイクTV

  5. リラップト (Rewrapped) フード・ネットワーク

  6. キッチン・カジノ (Kitchen Casino) フード・ネットワーク

  7. ワールド・フード・チャンピオンシップス (World Food Championships) FYI

  8. アンダーグラウンド・バーベキュー・チャレンジ (Underground BBQ Challenge) トラベル

  9. フード・ファイターズ (Food Fighters)  NBC

  10. ミッドナイト・フィースト (Midnight Feast) FYI

  11. オン・ザ・メニュー (On the Menu) TNT

  12. フード・トラック・フェイス・オフ (Food Truck Face Off) クッキング・チャンネル

  13. レイト・ナイト・シェフ・ファイト (Late Night Chef Fight) FYI

  14. キッチン・インフェルノ (kitchen Inferno) フード・ネットワーク





  1. 4. ネイキッド・ショウ


昨年の、男女ペアで裸になってのディスカバリーのサヴァイヴァル・リアリティ「ネイキッド・アンド・アフレイド  (Naked and Afraid)」は、一気にこの手のリアリティ・ショウの登場人物の肌の露出度を上げた。登場人物がほぼ全裸になるリアリティはこれまでになかったわけではなく、同様にサヴァイヴァル系の「ネイキッド・キャスタウェイ  (Naked Castaway)」(ディスカバリー) や、ボディ・ペインティングの勝ち抜きリアリティ「ネイキッド・ヴェガス (Naked Vegas)」(SyFy) 等が既にあった。しかし「ネイキッド・アンド・アフレイド」はその敷居をさらに下げ、なんでもかんでも裸にしてしまえ的メンタリティを持ち込んだ。


  1. スキン・ウォーズ (Skin Wars) GSN   (勝ち抜きボディ・ペインティング・リアリティ)

  2. デイティング・ネイキッド (Dating Naked) VH1 (素っ裸でのデイティング・リアリティ)

  3. バイイング・ネイキッド  (Buying Naked) TLC (ヌーディスト・コミュニティの不動産物件を探し)

  4. マルーンド  (Marooned) ディスカバリー (サヴァイヴァル・リアリティ)



しかしよく考えると、例えばファッション・デザイン勝ち抜きリアリティのライフタイムの「プロジェクト・ランウェイ (Project Runway)」や特殊メイク勝ち抜きリアリティのSyFyの「フェイス・オフ (Face Off)」でも、モデルがメイクや衣装合わせのために素っ裸に近くなって、ぼかしが入るというのは結構よくある。この辺でいっそベイシック・チャンネルでも思い切って解禁、というのはどうか。 




  1. 5. ストリーミング・サーヴィスの台頭 


「ハウス・オブ・カーズ (House of Cards)」と「オレンジ・イズ・ザ・ニュー・ブラック (Orange Is the New Black)」によってTV界の黒船 (という言い方がアメリカに適さないのはわかっているが、しかし感覚としてはまさに黒船だ)  として認識されたネットフリックス (Netflix) に続けとばかり、今年通販最大手のアマゾン (Amazon) もこの分野に参入、性転換をした父親を描くコメディ「トランスペアレント (Transparent)」がゴールデン・グローブ賞を獲得するなど、見事金的を射止めた。


さらにアマゾンの「モーツァルト・イン・ザ・ジャングル (Mozart in the Jungle)」も注目度は高く、ストリーミング・サーヴィスのオリジナル・コンテンツは台風の目となりつつある。


そしてさらにソニーのプレイステーションを利用した新サーヴィスが、マーヴェル・コミックスの「パワーズ (Powers)」を製作、そうするとこれはストリーミング・サーヴィスというのかとすらあやふやだ。たまたま我々はスマートTVという機器を持ち、それにアップルTVとかグーグルのクロームTVが接続されているからなんとなく見れてしまうが、新テクノロジーにあっぷあっぷしているという視聴者も少なくあるまい。というところに飛び込んできた、ついにアップルが本格的に自社のストリーミング・サーヴィスを展開するという発表は、事態を混乱させこそすれ、あまり視聴者の役に立っていないのではないかという気にさせる。












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2014年アメリカTV界10大ニュース。その1

 
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