Along Came a Spider

スパイダー  (2001年4月)

「コレクター」 に続き心理学者兼プロファイラー兼警察官のアレックス・クロスが活躍する、ジェイムズ・パターソン原作の「クロスもの」シリーズ第2弾。邦題は「多重人格殺人者」。時間の流れから言うと今回の「スパイダー」の方が先になるのだが、もちろんそんなこと関係なく楽しめる。私も「コレクター」は見ていないのだが、関係なく楽しんだ。アレックスに扮するのは、前作に引き続きモーガン・フリーマン。


ワシントンD.C.の政財界の重要人物の子弟が通う私立学校から、政治家の娘が誘拐される。教師として学校に勤めていたソーネジが、2年もの準備期間をかけて完全な誘拐計画を遂行したのだ。「世紀の犯罪」として知られる、大西洋無着陸横断飛行で知られるリンドバーグの息子の誘拐殺人事件に入れ込んでいたソーネジは、自分もまた同様の犯罪を計画していたのである。アレックスの犯罪に関する著作を読んでいたソーネジは、アレックスを連絡担当に指名、二人のイタチごっこが始まる‥‥


映画の冒頭、アレックスが犯罪者を追っていて、自分の判断ミスから女性パートナーを事故で死なせてしまうというシーンが描かれる。その車がダムの下に落ちていくというシーンがあまりにも安っぽいできの悪いCGで、今時こんなチープなCGを平気で使用してしまう製作関係者の神経を疑ってしまった。プレステ2の映像の方がまだリアルだ。フリーマン主演の映画だから安心だろうと高をくくっていたが、もしかしたら私は間違った映画を選択してしまったんじゃないだろうかという後悔がちらと頭をよぎる。しかし、その後はチープなCGなぞなく、多分ここだけセカンドの監督か誰かに任したのではないだろうか。映画の本筋と関係ないシーンに金をかけられなかったという風に見える。


監督のリー・タマホリはニュージーランド出身で、出世作の「ワンス・ウォリアーズ」のアクション/ヴァイオレンス描写がアメリカでも結構話題になり、ハリウッドに招かれた。しかしインディ的な題材へのアプローチの仕方がハリウッド的な映画製作のシステムと合わなかったようで、ハリウッド第1作の「狼たちの街」は、ジョン・マルコヴィッチ、トリート・ウィリアムス、チャズ・パルミンテリ、メラニー・グリフィス等の芸達者を集めながら、ポイントが絞れず、空中分解をした感が否めなかった。アンソニー・ホプキンスとアレック・ボールドウィンを起用して少人数で撮った「ザ・ワイルド」は、「狼たちの街」よりはましになったとはいえ、やはり今一つという感は拭えなかった。この「スパイダー」になって、やっとハリウッドの大作アクションの製作にも慣れたかなという感じがする。


主人公が黒人だという設定から、アレックス役がフリーマンになったのはほとんど必然だったろう。年齢の設定がもう少し若かったらデンゼル・ワシントンでも行けたかも知れないが、しかしフリーマンのアレックス役に不満はまったくない。人情味のある上役的な役をやらせたら、フリーマンほど説得力たっぷりに演じる事のできる役者はそうはいないだろう。「セブン」でも「ショーシャンクの空に」でも、フリーマンが印象に残っているのは、すべてそういう役だ。自分のミスから女生徒を誘拐されてしまい、責任感からその後アレックスと行動を共にするシークレット・サーヴィスのジェズィーに扮するのが、モニカ・ポッター。かすれた声でソーネジを演じるマイケル・ウィンコットと共に、好演している。「13デイズ」に続いてまたまた政府高官として登場するディラン・ベイカーは、この手の役が定着しそうだ。


映画の中でフリーマンがソーネジの指示でワシントンD.C.の市内を振り回されるシーンがある。先週見た「メメント」では、主として限られた登場人物だけでのアクションで知的興奮を与えてくれたが、日中、多くのエキストラを使って大掛かりな撮影を行うこういうのも、いかにも金をかけたハリウッド・アクションという感じがして、やはり捨て難い。このシーンの撮影のためには主要街路の交通をストップさせたり、電車のダイヤを変えたりしたはずだが、こういうのって、たまたま撮影がその日行われるのを知らなくてそこを通りかかると、何時間も足止め食ったりするんだよなあと思いながら見ていた。







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