Alien: Covenant


エイリアン: コヴェナント  (2017年5月)

「エイリアン: コヴェナント」は、「エイリアン (Alien)」シリーズの第6作であり、前作「プロメテウス (Prometheus)」の続編に当たる。そもそものオリジナルの第1作をリドリー・スコットが監督した後、2作目から4作目までを別監督が演出したが、「プロメテウス」でまたスコット演出に戻った。「コヴェナント」もスコットが演出している。因みにランス・ヘンリクセンが出ていても、「エイリアン vs プレデター (Alien vs Predator)」は、「エイリアン」シリーズとしてはカウントしないようだ。まあそうだろう。


シリーズとして見ると、タイトルに「エイリアン」とつかない「プロメテウス」が最も異色なのは一目瞭然だ。実際の話、「プロメテウス」はある意味パターン化していた「エイリアン」シリーズに新しい展開を持ち込むため、一度話を解体して組み直す必要があった。そのため、一見しての印象はホラーではないSF作品だ。エイリアンと対を成す、人間側の主人公リプリーも登場しない。一言で言うと、まったく「エイリアン」らしくない。一緒に映画を見た女房は、見終わってからも私が言及するまで、「プロメテウス」が「エイリアン」シリーズの最新作だと気づいていなかった。


今回「コヴェナント」を見た後も、私が、やはり一緒に見た女房に、もうほとんど「プロメテウス」忘れているから、主人公のエリザベスがどうなったか覚えてなかったと言うと、女房は、えっ、エリザベス、誰、それ状態だった。彼女の記憶からはほとんど「プロメテウス」が抜け落ちていた。まあ確かにあれは「エイリアン」としては異色だったから記憶があまり繋がらないのは無理ないかもしれないが、しかし、マイケル・ファスベンダーのデイヴィッドとか、シャーリーズ・セロンとか、超老けメイクのガイ・ピアースといった、視覚的に印象的だった絵くらいは覚えてないか、今回のオープニングは「プロメテウス」そのままだったぞと言うと、そこで初めて、そういえば、と思い出したようだった。いずれにしても、「プロメテウス」がシリーズの鬼子的存在であるのは確かなようだ。


その点「コヴェナント」は、ある程度「プロメテウス」から第1作の「エイリアン」に繋がる作品として機能している。多くの新惑星への入植者を人工冬眠で運ぶコヴェナント号は、宇宙線の嵐に遭って機体に損傷を負い、航行の世話役だったアンドロイドのウォルターは乗組員を起こす。


というこの事件の発端は、今春の「パッセンジャー (Passengers)」と一緒だ。航行に何百年もかかるため人工冬眠中の乗員、もしくは乗組員が、不慮の事故によって目覚めさせられる。こんなの見せられると、将来人工冬眠で宇宙に出ようとする人間が減りそうだ。


そしてカプセル、もしくはポッドの中から登場人物が何かを叫んでいるという幕切れのイメージは、かなり「ライフ (Life)」を彷彿とさせる。一方イメージは似てても、言っていることは逆だったりする。これ以上言うとネタバレになりそうなので避けるが、宇宙ものって、似たようなことを似たような時期に考えるってのはありそうだ。


さて「コヴェナント」は、コヴェナント号の乗組員が降り立った惑星で、エイリアンと遭遇する話だ。そしてそこには、「プロメテウス」にも登場したデイヴィッドがいた。上述したように実は既に「プロメテウス」の話の大半は忘れてしまっていたので、なぜここにデイヴィッドがいるのかという話がよく見えない。エリザベスは‥‥彼女は人間だからもう死亡してしまったのだろうなというのはわかる。


デイヴィッドはガイ・ピアースの命によって不死を研究し、エイリアンを培養しようとしていたから、それがまだ続いているのか。しかし、なぜアンドロイドのデイヴィッドの髪が伸びている? 彼自身が生命体になったのか? そして、地上に累々と広がるミイラ化か炭化したような人間のような死体の群れは、これは「プロメテウス」に出てきていたエンジニアと同一なのか、どうもよくわからない。しかし考え始めるとストーリーに置いてきぼりを食らうので、ここはとにかくスクリーン上で起きていることだけに集中する。


面白いなと思ったのが、宇宙船乗組員は、ほとんどがカップルであることだ。ダニエルズ (キャサリン・ウォーターストン) の夫 (ジェイムズ・フランコ) は船長だし、操縦士のテネシー (ダニー・マクブライド) とマギー (エイミー・サイメッツ)、新船長になるオラム (ビリー・クラダップ) とカリーヌ (カルメン・イジョゴ)、リックス (ジェシー・スモレット) とアップワース (キャリー・ヘルナンデス)、護衛のロープ (デミアン・ビチル) とハレット (ナサニエル・ディーン) に至るまでゲイのカップルだ。


これはわからんではない。人類のいない惑星への植民船なのだ。たとえ船に何千人も乗っていようとも現地で伴侶を見つけるのは難しいだろう。ここは最初から既にできているカップルを乗組員として選ぶ方が効率がいい。しかしゲイ・カップルは植民星で子供を養子にとることができるだろうかと、いらぬことを考える。


「プロメテウス」でのデイヴィッドは微妙に動きをぎこちなくさせていたが、時代が経っているので、デイヴィッドの次世代アンドロイドであるウォルターの動きはまるで人間だ。いつの間にやらデイヴィッド自身も髪が伸びたことといい、やはり進化を遂げているのだろうか。


異色だった「プロメテウス」からは原点の「エイリアン」に近くなったとはいえ、やはり「コヴェナント」はホラーというよりもSFアクションに近い。その理由としては、タネが尽きたからというよりも、我々観客がエイリアンに慣れてしまったからということが一番大きいように思う。


初期の頃はいるかいないか出るか出ないか、来たーっと、姿を現しただけで怖がらせたエイリアンが、今では特に怖いと感じさせない。今では彼らにも母性があり、子を育てようと精一杯戦っているという、感情移入する要素があるため、怖いだけじゃなくなっている。しかも「コヴェナント」では、その生みの親がデイヴィッドという設定のため、ますます心情的には近い。どうもエイリアンはデイヴィッドを親と思っているようなのだ。


「エイリアン3 (Alien 3)」でも生みの親であるリプリーをエイリアンが殺さないという設定があったが、この時はリプリーを驚愕と絶望が襲った。しかし今回は、生まれてきたエイリアンの子にデイヴィッドは純粋に喜びを感じている。それなのに時間軸的にはこの後続いていくはずの「エイリアン」では、そのエイリアンたちは恐怖の権化となならなければならない。「エイリアン」シリーズは、今後もまだまだ展開するのだろうか。やっぱりエンジニアの素性は、きっちりと説明をつけてもらいたいと思う。











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人類が移住する地を目指して宇宙を旅しているコヴェナント号が宇宙線の嵐に遭遇、アンドロイドのウォルター (マイケル・ファスベンダー) は乗組員を起こし、事態に対処するが、船長 (ジェイムズ・フランコ) は命を落とす。その時船の通信設備がどこからかの信号をとらえる。最初意味がわからなかったその信号は、かつてのアメリカのカントリー・シンガー、ジョン・デンヴァーのヒット曲「カントリー・ロード」であることが知れる。なぜ、どうして宇宙の片隅の惑星から人類の音楽が流れてくるのか、その理由を知りたい新船長のオラム (ビリー・クラダップ) は、反対するダニエルズ (キャサリン・ウォーターストン) の意見を制して、惑星に降り立つ。そこには小麦が茂り、明らかに人類の足跡があった。そしてまた、エイリアンの卵もあった。卵の胞子は空気感染によって乗組員の一人の体内で孵化し、パニクった他の乗組員のために偵察艇は爆発炎上する。そこに現れたのが、かつての宇宙船プロメテウス号に搭乗していた、まったくウォルターと同一の容姿をしているアンドロイド、デイヴィッド (マイケル・ファスベンダー) だった。彼が音楽を宇宙に向け発信していたのだ‥‥


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