近年、映画、TVを問わず末世ものは多い。エイリアンが来襲したり人々がゾンビ化したり、疫病が流行ったり異常気象天変地異が地上に未曾有の災厄をもたらしたりする。「アフターマス」の場合、それらがどうやら少しずつ全部入っているというところに特徴がある。
最初は異常気象だ。大規模な嵐が迫ってくるため、教師のジョシュアは家に帰ってくる。家には妻のカレン、長男マット、それに双子の姉妹デイナとブルアナが待っている。なんとか嵐の夜を無事にやり過ごしたコープランド家だったが、翌朝助けを求めてきた青年は異常な食欲で礼儀も作法もあったものではなく、見かねたマットが一言言おうとするとまるで人間じゃないように凶暴になり、命の危険を感じたマットは青年を撃ち殺す。
ブリアナは侵入してきた男に捕まえられると、一緒に空高く飛び上がりそのまま姿を消す。男は森の中でブリアナに襲いかかろうとして折れた幹に突き刺さって自滅する。助けを求めるブリアナは運よくパトロール中のシェリフを見かけるが、実はシェリフもおかしくなっていた。
一方コープランド家はキャンピング・カーに乗って避難所を目指しながらブリアナの行方を追う。しかしガス・ステイションの主もまともではなく、道も軍によって統制されていた。民衆は暴徒化しようとし、至るところに不穏な空気が充満していた‥‥
等々、末世SFでもありホラーでもある。正直言って風呂敷を広げ過ぎという気もしないではないが、なかなか印象的なイメージがあるのも確かだ。嵐の翌日、庭先に魚が大量に落ちているのはよくある末世ものという感じがするが、男がマットに襲いかかって撃たれるシーンでは、これはAMCの「ザ・ウォーキング・デッド (The Walking Dead)」同様のゾンビものかと思わせる。
しかし次に何ものかに変貌した若い黒人の男がブリアナを抱えて空高く舞い上がっていくシーンは、「ザ・フォーガットン (The Forgotten)」を彷彿とさせる。ホラーかと思わせといて、次のシーンでは空を飛ぶ。実はゾンビ・ホラーではなく、エイリアンの乗っ取り、アブダクションものか。しかもご丁寧に空を飛ぶ男の視点から見たショットまで入る。確かに面白い映像だが、しかしなぜ突然そこで一人称視点が入る。
そしてさらに、狂ったかゾンビ化したガス・ステイションの経営者が死体の生首でウィンドシールドを拭き、狂ったシェリフのパトロール・カーのトランクからは誰かの腕が覗き、道沿いの家では死体が庭先に吊り下げられている。どちらかというとゾンビものか。と思っていたらプレミア・エピソードの最後は隕石が町を直撃するというやはり天変地異サヴァイヴァルものという感じで、終末観を感じさせるものなら手当たり次第に詰め込んだという印象のごった煮SFホラーだ。今んところ、「フォーガットン」と「ウォーキング・デッド」と、「ワールド・ウォーZ (World War Z)」を足して割ったような感じと言える。
カナダ産の番組ではあるが、舞台はワシントン州だ。出演者の中ではカレンに扮するアン・ヘイシュが最も知名度がある。夫のジョシュアに扮するジェイムズ・タッパーとヘイシュは、かつてABCのラヴ・コメ「メン・イン・ツリーズ (Men in Trees)」で共演していたことがある。その時の舞台はアラスカで、ヘイシュの意中の人がタッパーだった。それが今では成長した子供が3人もいる夫婦だ。一応収まるべきところに収まって、今度は一緒にアルマゲドンを乗り越えようとしている。