アクセンチュア・マッチ・プレイ・チャンピオンシップ

2008年2月20日-2月24日   ★★★1/2

アリゾナ州マラナ、ギャラリー・ゴルフ・クラブ

初日最大のカードは当然ナンバー・ワン・シードのタイガー・ウッズ対、今年FBRを勝って好調のJ. B. ホームズ。二人共飛ばし屋であるだけに好勝負を期待する。ゴルフ・チャンネルの中継は2時から6時までで、2時から二人のマッチが始まるなど、当然時間を合わせているんだろう。


この勝負、いきなりパー5の第1ホールの第1打をウッズが大きく右に曲げ、OB。フェアウェイを100mは外したようだった。このホールをホームズがとった後、3番パー3、5番パー4でもホームズはバーディを奪ってあっという間に3アップ。ホームズは特にパットが好調のようだったが、一方のウッズはドライヴ、アイアン、パットとどれを見てもいつもの切れがない。それでもウッズは6番パー4でバーディをとって一つ返し、8番パー3では今度はホームズがティ・ショットをグリーン右のブッシュに入れて1アップと、差が縮まる。


しかしホームズは10番でまた2アップとし、13番パー4でウッズがまたティ・ショットを右に曲げてブッシュに打ち込み、再度ホームズの3アップ、これは本気でやばいかも思わせる。昨年のニック・オハーンとの時も、確か残り7ホールで4ダウンくらいだったのを、プレイオフで負けたとはいえ一応は追いついたんだよなという記憶が甦るが、しかしいくらウッズといえども、そういう劇的な追撃がそう何度も起こるわけもあるまい。


と思っていたところからのウッズの、14番パー3、15番パー4、16番パー3、17番パー5のバーディ、バーディ、バーディ、イーグルという驚異的なゴルフは本当にすごかった。あんた、調子悪かったんじゃないの。あっという間に3ダウンから1アップと逆転し、特に17番で35フィート下りの速い右曲がりのパットは、こないだのデュバイ・クラシックでの18ホール目で強引に沈めたバーディ・パットを彷彿とさせ、ウッズ得意のすり足ガッツ・ポーズ。思わず私まで椅子から飛び上がってガッツ・ポーズしてしまった。18番パー4でホームズは勝負をオール・スクエアに戻すバーディ・パットがあったがこれを外し、ウッズが1アップで勝った。これがあるからこの男の追っかけはやめられない。しかし、これはホームズは今晩は寝られないよなあ。


勝負としてよりも話として最も面白かったのが、今回初登場のブー・ウィークリーがマッチ・プレイをしたことがなくてルールをまったく知らず、対戦相手のマーティン・ケイマーがパットを10インチに寄せ、ウィークリーがコンシードしてくれるのを待っていたところ、ルールを知らないウィークリーは、なんでケイマーはただじっと立っているのだろうと、こっちもただ待っていたというものだ。しびれを切らしたウィークリーのキャディが彼の代わりにOKを出してやっとケイマーはボールをピックアップしたそうなのだが、遠球先打が原則のマッチ・プレイではケイマーはお先にと言って先にパットを入れるわけにもいかず、かといって10インチでボールをマークするのもバカらしいと思っていたわけで、グリーン上で二人のゴルファーがただお互いにじっと立っているシーンを想像するとなんともおかしい。


2日目のウッズは絶好調とまでは言わないまでも、初日と較べると雲泥の安定度で、特にアイアン・ショットがよくピンに絡まり、アーロン・オーバーホルザーを3&2で下す。その他のマッチではスチュアート・アップルビーがフィル・ミッケルソンを2&1で下した他、スチュアート・シンクがパドレイグ・ハリントンをアップで下す。なんでもシンクはハリントンにマッチ・プレイでまだ負けたことが一度もないそうだ。最ももつれたのはディフェンディング・チャンプのヘンリク・ステンソンが25ホールまでかかってトレヴァー・イメルマンを下したマッチで、だいたい夕方の5時半にはそれ以外のすべてのマッチは終了していたのだが、ステンソン-イメルマン戦だけ7時近くまでやっていた。


ゴルフ・チャンネルも一応6時半までは中継していたのだが、その後にLPGAのフィールズ・オープンが控えていたのでそこでいったんは中継を打ち切った。とはいえ決着が25ホール目で着いた、その25ホール目で二人のボールがグリーンに乗ったところまではやっていた。そこでイメルマンが3パットすることまでは誰にも読めないからな。これはしょうがあるまい。いずれにしてもそれで久しぶりにちょいとLPGAを見て、ミシェル・ウィーが首位に絡んでいるというのを久しぶりに見た。彼女も早く一勝しないと今にLPGAでもあまり騒がれなくなってしまうかもしれない。


3日目、アーロン・バッデリーとの対戦となったウッズは、1番、2番と連続してホールをとり、今日も安泰かと思わせといて、中盤バッデリーが追い上げる。2番でウッズがバーディ・パットを決めた時なんか、バッデリーはほとんど舌を出して諦めというか憤懣やるかたないという表情をしていたものだが、一方的に終わらせないところはさすが。13番パー4ではウッズがティ・ショットをフェアウェイ右に立っていたマーシャルに当て、跳ね返ったボールはブッシュの中に飛び込み、このホール、コンシードせざるを得なくなってオール・スクエア。次の14番パー3でバッデリーがバーディを奪ったことにより、このマッチで初めてバッデリーが1アップとリードする。


しかしウッズも16番でバーディを奪い返し、またもやオール・スクエア。二人はその後もお互い譲らず、勝負はエクステンデッド・ホールへ。19ホールのパー5ではバッデリーが雌雄を決するイーグル・パットがあり、しかも直前で左にそれる瞬間まであれは入ったと思った。ウッズもあそこでは負けを覚悟しただろう。結局その直後の20ホール目でバーディを奪ったウッズがバッデリーをうっちゃったのだが、バッデリーは20フィート、ウッズは15フィートのバーディ・パットで、まずバッデリーがパットを外した後、ウッズは自分のパットがボールがまだカップに達する前から入ることを確信、帽子を脱いで握手のためにバッデリーのところに歩き始めた。なんというか、本当に勝負師というか、絵になるなあこの男。


ウッズがバッデリーに初めてリードを許した13番のティ・ショットは、マーシャルの頭を直撃して大きく跳ね返ってブッシュの中に飛び込んでいってしまったわけだが、マーシャルが右曲がりドッグ・レッグの角に立ってさえいなければ、ボールはそのままフェアウェイに達した可能性は大いにあった。少なくともラフ止まりにはなったはずだ。あるいはマーシャルの立ち方によっては、今度は跳ね返ったボールはきれいにフェアウェイに弾んでいった可能性もあった。微妙な運がマッチ・プレイでは明暗を分ける。これで週末まで駒を進めたのは、ウッズ、K. J. チョイ、ステンソン、ウッディ・オースティン、ジャスティン・レナード、ヴィージェイ・シング、エンゲル・カブレラ、シンクの8人。


土曜午前の準々決勝はウッズ vs チョイ、オースティン vs ステンソン、レナード vs シング、カブレラ vs シンク。ウッズ vs チョイはフロント・ナインはほとんど動きがなかったが、バック・ナインに10番パー5でのウッズのチップ・イン・イーグル以降ウッズのパットが面白いように決まりだし、3&2でチョイを下した。ステンソンはオースティンを2アップで下し、シンクはカブレラを3&2で、レナードはシングを1アップでそれぞれ下す。


午後の準決勝はウッズ vs ディフェンディング・チャンプのステンソンという組み合わせになる。まずウッズがリードしステンソンが追いつくという展開で、ステンソンは16番パー3でバーディをとって再度ウッズに追いつくが、17番でウッズがまたバーディを奪って1アップ、18番ではステンソンの第2打がグリーンに届かず、第3打のチップがショート。この時点でウッズはグリーン上で10フィートのバーディ・パットを待っていたためにステンソンの勝ちの可能性は消え、コンシード。ウッズが2アップで勝った。シンクはレナードを4&2で下し、これで決勝はウッズ vs シンクというカードになった。


日曜の決勝は午前の18ホールを終わった時点でウッズが4アップのリード。ウッズ相手に4ダウンから挽回できると信じることのできるゴルファーはまずいないだろう。ウッズはそれまで同様の精度の高いゴルフだが、シンクは前日までは面白いように決まっていたパットが入らない。やはり多少は意識していることが影響しているか。結局午後もほとんど同様の展開になり、じりじりと差がつき、ウッズが8&7という決勝ではマッチ・プレイ始まって以来の大差でシンクを下した。コンソレーション・マッチはステンソンがレナードを3&2で下した。ウッズは元々勝負師であったわけだが、最近はそれにますます磨きがかかって凄みすら出てきた。怖いくらいだ。






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