アクセンチュア・マッチ・プレイ・チャンピオンシップ

2003年2月26-3月2日   ★★★1/2

カリフォルニア州カールスバッド、ラ・コスタ・リゾート&スパ

ついにエルス vs ウッズの直接対決実現が見れるかとゴルフ・ファンのすべてが期待したアクセンチュア・マッチ・プレイ、なんといきなり初日に、第2シードのエルスがニュージーランドのフィル・タタランギに破れるという波乱が起きる。エルス1アップでリードしていた最終18番パー5のグリーン上で、タタランギはまさかの26フッターを沈めてエルスに追いつき、20ホール目の2番パー3で207ヤードの6アイアンのティ・ショットをピンそば2フィートにつけ、エルスがコンシードして勝負に決着をつけた。これだからマッチ・プレイというのはわからない。それにしても、初日からちょっとがっかりさせてくれる。


実はエルスが負けたこのシーンはスポーツ・ニュースで見たものであって、実際の中継はニューヨーク時間の午後3時から6時までであった。平日でもあることだし、録画しておいて後で見たわけだが、中継が始まった途端、第1シードのウッズ vs ピーターソンの試合が始まり、ちょうど1番ホールでウッズがティ・オフする瞬間だった。そして17番でウッズが2&1で勝負を決めたらちょうど6時になり、中継が終わった。基本的にカメラはほとんどウッズだけを追っかけていたのであるが、あまりにも完璧にウッズの試合だけがきっちりと収まっていたために、ほんとにこれ生中継かと思ってしまった。その時点ではまだエルスの試合は続いていたのだが。


その後も上位シード陣は順調に負け続け、シード・ゴルファーで週末の準々決勝まで残ったのは、第1シードのウッズと第6シードのデイヴィッド・トムスだけ。マッチ・プレイには番狂わせがつきものとはいえ、やはり上位シードの半分くらいは週末までなんとか残っていてもらわないと、勝負が大味になって面白くないのだが。


さて、土曜午前の準々決勝はウッズのできが完璧で、最初ちょっともたついた以外はどこから見ても隙がなく、相手のスコット・ホークを圧倒する。自分でもショットに自信を持っているのがよくわかる調子のよさで、こういう時のウッズに勝てるゴルファーはこの世にいまい。ホークのできが特に悪いというわけでもないのだが、どんどん差が開いていく。2000年のNEC招待の2日目で61を出した時のウッズがまさにこんな感じだった。結局5&4でウッズがホークを下したのだが、勝負後のインタヴュウでホークがウッズを評して「ナイス・ショットでその次がナイス・ショットで、その次がナイス・ショットで‥‥」と諦め顔で言っていたのがおかしかった。13番を終わった時点でストローク・プレイでは7アンダーだったから、そのまま行けばコース・レコードを作ったかもしれない。


そのウッズの午後の準決勝の相手は、オーストラリアの俊英、22歳のアダム・スコット。21歳のアーロン・バッデリーといい、最近、若手ではオーストラリア陣営の活躍が目を引く。マッチ・プレイで一日に2試合以上をこなす時は、調子をそのまま維持するのは難しく、案の定ウッズは決して悪いできではないものの、午前中のようなキレのよさがない。ウッズは一時スコットに対して2ダウンとなるが、しかし、地力を発揮してじりじりと追いつき、15番パー4でバーディを奪ってついに1アップとする。続く16番パー3でウッズのティ・ショットは、グリーンのスロープをゆるゆると下って最終的にピンそば1フィートで止まり、スコットはそれをOKするしかない。しかしスコットも15フィートのバーディ・パットを意地で沈め、1ダウンを維持する。あそこで2ダウンになっていたら、勝負は決していただろう。


スコットはさらに、18番パー5で、スタンスの定まらない難しい第3打のバンカー・ショットをピンそば3フィートに寄せ、バーディを奪って勝負はエクステンデッド・ホールにもつれ込む。やはり16番のバーディ・パットは大きかった。しかし19番目のホールとなった10番パー4で、スコットは今度は3フィートのパー・パットを外し、結局ウッズが19ホールで勝った。スコットは19番以外にも、何回か短いパットを外したのが痛かった。それさえなければ充分勝つチャンスがあったんだが。


それにしてもスコットは、ウッズを手本にしていると自分で言うだけあって、フォームがまるでウッズそっくりだ。身長も体形も似たようなもので、逆光でシルエットになるとほとんど見分けがつかない。特にフィニッシュのフォームはまるで瓜二つ。ボールの飛距離もほとんど一緒だった。ということは、彼もよく飛ばす。スコットの方が少し短いクラブを使っているのか、アドレスでウッズよりも少しだけよけいに前屈みになるが、それ以外はほとんど同じと言ってしまっていいだろう。実況しているABCも面白がって、二人のフォームを並べて較べていたが、本当にまったくそっくりなのには笑ってしまった。


もう一方の準決勝では、トムスがやはりオーストラリアのピーター・ロナードと対戦、終始危なげなくリードを保ち、楽勝かと思われた。しかし2アップで迎えた15番パー4で、15フィートから3パットしてロナードにホールを与えてしまい、ここでトムス1アップ。16番パー3ではロナードがバーディを奪って勝負はオール・スクエアへ。トムスはさらに17番パー4でも4フィートのバーディ・パットを外してしまい、このホールイーヴン、逆に勝利の振り子はロナードに傾いていったかに見えた。しかしトムスは最終18番パー5で、やっと15フィートのバーディ・パットを決め、1アップで勝負に決着をつけた。一時は勝利の女神に見放されたかのように見えたのに、それを力ずくで呼び戻した粘り強さは大したもの。


日曜の36ホールの決勝は、アクセンチュア・マッチ・プレイが始まって5年目にして、初めて上位シード同士での決勝となった。途中番狂わせがあるのは構わないが、やはり決勝は世界ランキング上位者同士の勝負を見たいとすべてのゴルフ・ファンが思っていた願いが、これでやっと実現した。そのうち2度決勝に進出しているウッズは、やはりえらい。


その決勝は、トムスのパッティングが今一つで、いきなり1番パー4で1ダウンとなった後も盛り返せず、結局午前の18ホールが終わった時点でウッズ4アップと、これはこのまま大味な試合となって決着がつくかと思われた。午後の18ホールに入っても、19ホール (1番パー4) でウッズがバーディをとって5アップとなり、続く20ホール目の215ヤード、パー3でも、ホールまで6フィートにティ・ショットをぴたりとつけたウッズに対し、トムズのティ・ショットは40フィートを残し、これでウッズ6アップとなり、もう勝負は決まったなと思われた。


ところがトムスはこれを沈め、一方ウッズが逆に6フィートを外したことで、トムス4ダウンと少し盛り返す。トムスはこれから要所要所を締め、じりじりとウッズに追いつき始める。この20番の攻防が、午後の要だった。トムスは33ホール目の15番パー4でバーディを決め、ついに1ダウンまで追い上げる。しかし35ホール目の17番パー4でグリーンそばの深いラフにつかまったトムスは、そこからのアップ&ダウンに失敗、ボギーとなって力尽きた。


3位決定戦は、スコットが最初からロナードを圧倒し、18ホールの勝負なのに最初の8ホールでスコット6アップと、大きなリードを奪う。こちらも大味な勝負かと思われた矢先からロナードが盛り返し始め、結局スコットは1アップまで追い上げられて、勝負は最終18番パー5までもつれ込む。その18番のグリーン上で、先にバーディ・パットを決めたスコットが、結局1アップで逃げ切った。


ウッズはこれで、ワールド・ゴルフ・チャンピオンシップス誕生5年目にして、ただ一人4つのトーナメント (アクセンチュア・マッチ・プレイ、NEC招待、アメリカン・エキスプレス・チャンピオンシップ、ワールド・カップ) をすべて制した最初のゴルファーとなった。しかしウッズって、マッチ・プレイになると1.5フィートのパットでも容易にコンシードしない。勝負にかける意気込みが違うと言えばそれまでだが、やはりマッチ・プレイで相手にすると本当に嫌な相手だろうなあと思うことしきりであった。







< previous                                    HOME

 
 
inserted by FC2 system