Aaron Stone  アーロン・ストーン

放送局: ディズニーXD

プレミア放送日:  2/13/2009 (Fri) 19:00-19:30

製作: シャフスベリー・サーヴィスズ、スリー・ハーツ・プロダクションズ

製作総指揮: ブルース・カリッシュ、スザンヌ・フレンチ

出演: ケリー・ブラッツ (アーロン・ストーン/チャーリー・ランダース)、デイヴィッド・ランバート (ジェイソン・ランダース)、J. P. マノー (S.T.A.N.)、タニア・グナーディ (エマ・ロウ)、ショーナ・マクドナルド (アマンダ・ランダース)


物語: 高校生のチャーリーは父亡き後、母のアマンダ、弟のジェイソンとの3人暮らし。学校のバスケットボール・ゲームではいいところでショットを決めきれないが、得意のヴィデオゲーム「ヒーロー・ライジング (Hero Rising)」ではアーロン・ストーンというアヴァターの元、ほとんど無敵だった。ある時、学校から帰りがけのチャーリーの後を執拗に追いかけてくる男があった。その男スタンは、実は世界を滅ぼそうとしている魔の手から世界を救うには、チャーリーの助けが必要という。最初は本気にしないチャーリーを、スタンは高速飛行艇に乗せてミスター・ホールの元に連れて行く。ホールこそ「ヒーロー・ライジング」の生みの親で、彼はチャーリーが最後の頼みの綱というのだった‥‥


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今さら「ハイ・スクール・ミュージカル (High School Musical: HSM)」の例を持ち出すまでもなく、アメリカに住むミドル・ティーンくらいまでのトゥイーン層にとって、ディズニー・チャンネルの影響力は絶大なるものがある。それはもう、本当に絶大なのだ。ディズニーが放送する番組に主演が決まった場合、それはスターダムへの切符を約束されたも同然だ。


近年では「おとぼけスティーブンス一家 (Even Stevens)」のシャイア・ラブーフ、「リジー&Lizzie (Lizzie McGuire)」のヒラリー・ダフ、「スイート・ライフ (The Suite Life of Zack & Cody)」、および続編「ザ・スイート・ライフ・オン・デック (The Suite Life on Deck)」ディラン&コール・スプラウス、「ウェイバリー通りのウィザードたち (Wizards of Waverly Place)」のセレナ・ゴメズやデヴィッド・ヘンリー、そして現在飛ぶ鳥を落とす勢いの「シークレット・アイドル ハンナ・モンタナ (Hannah Montana)」のマイリー・サイラス等、続々と新しいスターを輩出している。


そのディズニーの新番組「ソニー・ウィズ・ア・チャンス (Sonny with a Chance)」は、2月8日から放送が始まっている。主人公ソニーに扮するデミ・ロヴァトは、遠からぬうちにサイラス級、とまではいかなくても、そこそこのスターになるのはまず間違いない。先頃も深夜のMTVのミュージック・ヴィデオ・クリップ集を垂れ流しで見ていたら、ロヴァトのヴィデオが流れていた。そういえばディズニー番組の主演に必須なのは、歌えることでもあった。


ディズニー番組の特色の一つとして、番組のスターが他の番組に連携してよく登場することが挙げられる。ロヴァトも元はといえば昨年、既にボーイズ・バンドとして圧倒的人気のあったジョナス・ブラザース主演のディズニーTV映画「キャンプ・ロック (Camp Rock)」のヒロイン役に抜擢されたのがそもそものきっかけだった。そのジョナス・ブラザースにしても「ハンナ・モンタナ」にゲスト出演していたりする。ディズニーお抱えという印象の強いアシュリー・ティスデイルは、「HSM」にも「ハンナ・モンタナ」にも「スイート・ライフ」シリーズにも出ているし、とにかく誰もが自分のレギュラー番組以外に、他の番組にちらちらと顔を出していたりする。


一方、愛と感動をビジネスと割り切るディズニーは、それらのスターがどんなに人気を博そうと、彼彼女らがある一定の歳に達すると、ばっさりと縁を切る。出演者が20代後半くらいになると、主要視聴者のティーンエイジャーが自分を番組に投影して感情移入することが難しくなるからだ。あれだけ人気のあった「スティーブンス一家」のラブーフや「リジー&Lizzie」のダフが、番組が人気絶頂であった時に、いとも簡単に契約満了を理由に切られてしまう。


ラブーフはうまく映画界への参入を果たし、「トランスフォーマーズ」に主演するなど現在若手最有望株の一人であるが、そのラブーフよりも人気があったと思えるダフは、今のところキャリアの確立に苦労している。女優としても歌手としても聞かなくなり、たまさかTV映画や人気番組にゲストとして出ているのを見る他は、せいぜいスキャンダル・ネタとして以外は目にしなくなった。サイラスや「HSM」のザック・エフロンやヴァネッサ・ハジェンズも、うかうかしていたらあっという間に蚊帳の外という事態にならないとも限らない。


そうやってディズニーが簡単に人気スターを切ることができるのも、アメリカではその予備軍がいつでもどこにでもうようよしているからだ。だから人気がピークを迎えた俳優を切っても、すぐに次の番組を投入して次世代のスターを構築できる。実際に皆、そこそこの歌と踊りと演技の才能を持っていたりするのだ。この、夢を売っているディズニーの徹底したビジネスライクな姿勢は、ほとんど感動すら覚える。だからこそ夢を売れるのかもしれない。そしてそうやって登場してきた次のディズニー番組「ソニー・ウィズ・ア・チャンス」に注目が集まるのもむべなるかなだろう。


とはいっても、さすがに私としては、ディズニーの、特に女の子向けの番組を見るというのは、正直言って苦痛だ。ロヴァトは魅力的だとは思うし、「ソニー」が人気番組として確立するのは時間の問題だとは思うのだが、それでもどうしても見る気にはなれなかった。


一方ディズニーは、アニメーション専門チャンネルのトゥーン・ディズニーを大々的に模様替えし、アニメーションだけでなく実写番組も揃えて男の子のとり込みを狙う新チャンネル、ディズニーXDを去った2月13日から発足させた。「アーロン・ストーン」こそ、そのディズニーXDの目玉番組に他ならない。これならなんとか私でも見れそうだ。


「アーロン・ストーン」の主人公チャーリーは高校生で、それなりにバスケットボールもこなすが、実はヴィデオゲームはもっと得意という今風の若者だ。日夜オンライン・ゲームの「ヒーロー・ライジング」に入り浸りで、彼のアヴァター、アーロン・ストーンはほとんど無敵だった。ある日、そのチャーリーの前に得体の知れない男が姿を現す。彼はしつこくチャーリーの後を追い続けた上、世界は彼の力を必要としているというのだ。


最初は一笑に付すチャーリーだったが、超高速飛行艇J960「ザ・ブラック・アロウ」に乗せられ、その男スタンがアンドロイドであることを現実に見せられ、「ヒーロー・ライジング」の生みの親であるT. アブナー・ホールに会い、世界がオメガ・デファイアンスによって征服されつつあることを聞かされるのだった‥‥ 番組はその後、ギャグ・テイスト濃厚のスタンと共に、家族や学校の仲間にはそのことを秘密にしながら、学問と正義の味方を両立させる? 現実のヒーロー、アーロン・ストーンとしてオメガ・デファイアンスの悪漢どもと戦うチャーリーの活躍を描く。


ごく普通の高校生が、実は世界征服を企む秘密結社を相手に日夜戦うスーパーヒーローだったという設定は、特に目新しいものでもなく、日本製番組やアニメにもそれこそ掃いて捨てるほどあると思う。主人公がオタクのゲーマーというのも現在では普通だと思うが、しかしかなりコメディの入った番組の乗りは、アメリカ (撮影はカナダだが) の番組、というかディズニーの得意とするものだ。設定としてはヒーローになりきれないオタクのゲーマーというチャーリーではあるが、それでも外見は一般的な日本人やアジア人辺りと較べるとかなり勝っていると言わざるを得ない。チャーリーの弟ジェイソンにいたっては、文句なしに美形と言っていいだろう。


番組のヴィジュアルで最も気になったのは、チャーリーたちのプレイするゲーム「ヒーロー・ライジング」の背景のグラフィックだ。この種の格闘系ゲームの背景には、日本語の看板が描かれていることが最近のお定まりになっている。それは「ヒーロー・ライジング」も例外ではないのだが、どうもそれらの背景や看板をどこかで見たような気がするのは気のせいか。確かに「マンガ喫茶」とか「空手」なんていった看板はどこにでもあるかもしれないが、「三浦病院」なんてのがどこにでもあるとは思えない。しかし、見覚えがあるのだ。私はゲームはしないから、TVか映画で使われたCGの使い回しかオマージュか。いずれにしても、どこかで見たような気がするのだ。もしかしたらゲーマーにとっては誰でも知っているヴィジュアルなのかもしれない。


ディズニーXDは、「アーロン・ストーン」の他に「キッドvsキャット (Kid vs Kat)」、「ジミー・トゥー-シューズ (Jimmy Two-Shoes)」等のアニメーション番組もスタートさせた。以前はディズニー・チャンネルで放送していた「フィニアス・アンド・ファーブ (Phineas and Ferb)」もディズニーXDでも放送されているし、上述の「スイート・ライフ」も放送されていたりする。「アーロン・ストーン」はなんでもそれなりの成績を収めているらしいから、ディズニーの読みは現在のところ当たっていると言えよう。それでも、人気がなくなったらすぐ切られ、人気が出てもある期間経ったら容赦なく切られるんだろうな、実写だとやはり損、と思ってしまうのだった。








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アーロン・ストーン   ★★1/2

 
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