信じられないものを見てしまった。PGAツアー公式戦5連勝で、6連勝目がかかったタイガー・ウッズ。しかし3日目(雨で1日順延されたから実質的には4日目だが)終了時点で首位のマット・ゴーゲルに5打差。そりゃあ昨年のボブ・ホープのデイヴィッド・デュヴォールのように7打差をひっくり返したという例はないではないが、そんな、59がそう簡単に出るとも思えないし、常識的にはまず逆転はありえない。最終日、ウッズは地道にスコアを伸ばすが、一方のゴーゲルはそれ以上に出来がいい。ウッズはフロント・ハーフを3バーディ・ノー・ボギーの33で回るが、ゴーゲルは5バーディ・ノー・ボギーの31で回り、追い上げるどころか逆に7打差と引き離される。


ウッズがこれまでどんなにドラマティックな逆転劇をしてこようとも、残り9ホールで7打差を逆転するのはプロの世界ではありえまい。ウッズの12番のバーディは焼け石に水ってところか。しかし、ここでゴーゲルが少し崩れ、11、12番で連続ボギーを叩き、一挙に3つ縮まる。それでもウッズが14番を終わった時点で11アンダー、まだゴーゲルに4打差あり、頑張りはしたがこれまでかと誰もが思う。連勝記録は5で止まったか。いや、しかし、よくやった、それでも世界ランキングNo.1を疑うのは誰もいまい。と思った時点から始まった、怒涛のイーグル、バーディ、パー、バーディ・フィニッシュ。あっという間に4ホールで4つスコアを縮め、逆にゴーゲルは15番でもボギーを叩き、気がついたらウッズが単独トップ。ウッズはなんと最終日64、15アンダーでラウンドを終える。本当かよ、おい。特に15番パー4での第2打を直接カップに放り込んだ当たりからはまさに神がかりとしか言い様がなく、TVの解説も「信じられない」、「人間業じゃない」としか言えなかった。


しかしゴーゲルにだってまだチャンスは残されている。が、彼のバーディ・パットはことごとく僅かに外れる。特に17番での30フィートのバーディ・パットなんて、最後の最後の瞬間にすっと左に逸れてホールの1インチ横で止まるまで綺麗にラインに乗っており、これは絶対入ると思ったのに。1打差を追って残された最後のチャンスの最終18番でのバーディ・パットも左に外し、この瞬間、ウッズのツアー6連勝が決まった。アンビリーバブル。ゴーゲルは、この後がいかにも勝ち星なしのゴルファーらしいのだが、返しのパットまで外し、目も当てられない痛恨の3パットでヴィージェイ・シングと同率2位になってしまい、終わってみれば完全にウッズの引き立て役、可哀相にとしか言い様がない。解説のケン・ヴェンチュリがまた、「ショック」だとか、「見ていられない」だとか、「彼は今自分がどこにいるのかもわからないに違いない」とか、死者に鞭打つようなコメントで哀れを引き立てていた。


実は私はこのトーナメントがあまり好きではない。何が好きではないのかって、あのプロ・アマって奴だ。プロの技術を見たいのに、何を好き好んでアマチュアのゴルフまで見なきゃならんのだ。そんなの見るくらいなら自分の素振りをヴィデオにとって研究していた方がましだ。私はクリント・イーストウッドの映画を愛するものであり、「ティン・カップ」のケヴィン・コスナーだって楽しんで見たが、それでも彼らの生のゴルフまで見たいとは思わない (新聞に出ていたが、コスナーのハンディキャップは16だそうだ)。


そういうスター目当てのギャラリーもいるから、彼らはリップ・サーヴィスをしながらラウンドする。そのため1ラウンド6時間もかかり、到底TVの放映時間内には終わらない (最終日は流石に時間を延長して最後まで中継するが)。悪い意味で華やいだ雰囲気があるから、ゴルファーも勝負に徹しきれず、変ににたにたしながらラウンドしてたりする。ああ、つまんない! 人気シットコム「エヴリバディ・ラヴス・レイモンド」の主役レイモンドとして知られるレイ・ロマノなんて、波打ち際に打ち込み、そのボールを犬がくわえて持ってったり、打とうとしたら寄せてきた波にボールを持ってかれたりして、その時は確かに思わず笑ってしまったが、しかし、そんなの見なくても全然平気だ。せめてプロ・アマは予選だけにして、週末くらいはプロだけにするとかいう風にならないものか。このトーナメントは結構人気が高く、毎日TVでも中継するが、私が本当に楽しんで見たのは最終日の最後の1時間だけだ。


ところで、初日6アンダーでトップに立っていたデイヴィッド・デュヴォールが、2日目、3日目と大きく崩れ、予選落ちしてしまったのにはびっくりした(このトーナメントは最初の3日間で3つの異なったコースを全部回るため、足切りは3日目終了後にある)。最近彼は調子悪いなあ。どうしたんだろう。







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AT&Tペブル・ビーチ・ナショナル・プロ-アマ

2000年2月3-7日   ★★★

カリフォルニア州ペブル・ビーチ、スパイグラス・ヒル、ポピー・ヒルズ、ペブル・ビーチ・ゴルフ・コース

 
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