9-1-1   9-1-1 

放送局: FOX 

プレミア放送日: 1/3/2018 (Wed) 21:00-22:00  

製作: ライアン・マーフィ・テレヴィジョン、リームワークス、20世紀FOX TV 

製作総指揮: ライアン・マーフィ、ブラッド・フォルチャク、ティム・ミニア 

出演: アンジェラ・バセット (アテナ・グラント)、ピーター・クラウス (ボビー・ナッシュ)、オリヴァー・スターク (エヴァン・バックリー)、アイシャ・ハインズ (ヘンリエッタ・ウィルソン)、ケネス・チョイ (ハウイ・「チムニー」・ハン)、ロックモンド・ダンバー (マイケル・グラント)、コニー・ブラットン (アビー・クラーク) 

 

物語: LAの緊急電話のディスパッチャーをしているアビーの元には、毎日様々な緊急な事情にいる人間から電話がかかってくる。アビーはその電話の内容を的確に把握し、警察や消防、救急車を現場に派遣する指示を出す‥‥ 


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9-1-1


9-1-1  ★★1/2

警察や医療ドラマはドラマの基本と言えるジャンルであり、いつのどんな時代でも必ずある。医療に限ると、ヴェテランのABCの「グレイズ・アナトミー (Grey's Anatomy)」に、昨秋「ザ・グッド・ドクター (The Good Doctor)」が加わり、今春FOXでも「ザ・レジデンツ (The Residents)」が加わった。 

 

一方NBCの「シカゴ (Chicago)」フランチャイズの一角を占める「シカゴ・メッド (Chicago Med)」は、医療ドラマというよりは救急車乗務の救命隊員を描くもので、実は「9-1-1」は「シカゴ・メッド」を軸とする「シカゴ・P.D. (Chicago P.D.)」、「シカゴ・ファイア (Chicago Fire)」を足して割ってひとまとめにしたようなドラマと言える。ほぼ同時期に、同様の消防署を舞台にする「グレイズ・アナトミー」スピンオフの「ステイション19 (Station 19)」も始まっており、このジャンルは活性化している。 

 

「9-1-1」の新機軸としては、それらの事件の案内役として、最初に緊急の911コールを受けるディスパッチャーのアビーがいることが挙げられる。彼女が電話をかけてくるコーラーから緊急事態の事情を聞くことが、即ち簡潔な事件の説明になっている。なかなかうまい作りだなと思った。 

 

その事件がまた突拍子もないのが、「9-1-1」の特徴だ。上で番組の近似例を挙げるのに、似たような体裁の「シカゴ・メッド」や「シカゴ・ファイア」ではなく「グレイズ・アナトミー」が真っ先に思い浮かんだのも、「グレイズ・アナトミー」では、リアルというよりは意外、奇想天外みたいな病状や怪我をした人間の話がよくあったためだ。要するに、「9-1-1」も、こんなのありか、みたいな突拍子もない事件が頻発する。 

 

番組の冒頭で、プールで溺れて息をしていないという子を助け、次は飛び降り自殺をしようとしている子を助けるのに失敗するというつかみの事件の後は、いよいよ本題だ。次の911コーラーは、壁から赤ん坊の泣き声が聞こえるという。なんで赤ん坊が壁の上にいるのかというアビーの問いに電話主は、違う違う、壁の上ではなく、壁の中から、正確には壁の中の下水パイプの中から聞こえる、つまり、誰かが赤ん坊をトイレに流したんだと言う。 

 

すわ消防隊員が現場に駆けつけると、コーラーはマリファナでハイになっており、妄想かと帰ろうとしたボビーに、確かに赤ん坊の泣き声のようなものが聞こえる。一緒に駆けつけた警官のアテナは、上階に不審な男を発見、屋上階で確かに下水パイプの周りに血の跡を発見する。男の部屋に飛び込んだアテナは、奥の部屋に出産したばかりで身体が弱っているまだ若い女の子を発見する。一方ボビーらは壁を叩き壊してパイプを切り取り出し、中から生後間もない赤ん坊を取り出すと、無事蘇生させることに成功する‥‥ 

 

初っ端からかなりテンション高い事件だが、本当にこんなのってあるのか。と思っていた矢先、番組の舞台でもあるLAで、13歳の少年が下水に落ちて、一晩流されて閉じ込められたという事件があった。ビルの中の配管とは違い、かなり直径のある下水管だったとはいえ、実際に人が落ちることはあるし助かりもする。現実の方が虚構を模倣した。番組はむしろ先見の明があったと言うべきか。 

 

次のコールでは、女性が、助けて、首を絞められているという。これまた消防隊が慌てて駆けつけると、女性が、たぶん違法ペットのニシキヘビに首を絞められて身動きがとれなくなっていた。プレミア・エピソードの最後の大きな事件は、女の子が一人で自宅にいる時に強盗が 入ってきたという状況で911がかかる。しかし越してきたばかりの女の子は、自宅の場所の説明ができない。アビーは逆探知と、近くを走る消防車のサイレンの聞こえ方から家を特定、女の子の救出に成功する。 

 

プライヴェイトではアビーは、自宅にアルツハイマーの母がいるシングルだ。ボビーはドラッグやアルコール問題からなんとか立ち直っているが、いつまた道を踏み外すかわからない。エヴァンはセックス中毒で、見境いなく就業中だろうとセックスしまくるので、一度はクビを宣告される。アテナはティーンエイジャーの一男一女がいるが、この歳になっていきなり、夫から自分はゲイだと告白される。今さらそんなこと言われてもと怒り心頭で、離婚話の真っ最中だ。 

 

等々、起きる事件のみならず、それらを解決し、人を助ける登場人物らからして、皆何か問題を抱えている。問題てんこ盛りなのだ。番組クリエイターはライアン・マーフィで、上で「グレイズ・アナトミー」と比較したが、本当に「9-1-1」が似ているのは、マーフィの出世作となったFXの「ニップ/タック (Nip/Tuck)」だ。あの奇想天外な話をもっと日常に散りばめてみたという印象が強いのが、「9-1-1」だ。こんなん、ありかと思いつつも楽しんでしまう。 

 











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