2 Fast 2 Furious


ワイルド・スピードX2  (2003年6月)

一昨年を代表するサプライズ・ヒットとなったカー・アクション映画「ワイルド・スピード (The Fast and the Furious)」の続編 (とはいえ内容はあまり関係ないが)。この種の映画は続編がオリジナルを超えることはまずないとわかってはいるのだが、それでも前作を見てない身としては引け目があるし、少なくとも予告編で見るカー・アクションは、やはり面白そうだった。オリジナルからはヴィン・ディーゼル、リック・ユーン、ミシェル・ロドリゲスと、少なくとも3人のスターを生み出した。今回は、オリジナルで主演にもかかわらず、なぜだか一人だけスターダムに乗りそこねた感のあるポール・ウォーカーが前作に引き続き主人公を演じる。今度こそブレイクするか。


プロ・ドライヴァー並みの腕を持ち、今ではマイアミのストリート・レーサーとして生計を立てていた元刑事のブライアン (ポール・ウォーカー) は、またその腕を見込まれ、マイアミのギャング王カーター (コール・ハウザー) の一味を一網打尽にするための協力を要請される。ブライアンは相棒としてローマン (タイリース) を希望、二人は雇われドライヴァーとしてカーターの元に潜り込むが‥‥


最初からカー・アクションだけを見るつもりで劇場に足を運んでおり、出演者や監督には注意していなかった。と言うか、まるで気にしてもいなかった。実際、ストーリーはこの種の映画としてはなかなか苦労してひねりを加えているのもわかるし、そこそこ意外性もあったりして、それなりに頑張っているなとは思ったのだが、そしたら、なんと、いきなりオープニングのクレジットにはジョン・シングルトンの名があるではないか。なんだなんだ、これってシングルトンが演出していたわけ? まるで知らなかった。


こないだ見た「ミニミニ大作戦」も黒人が監督しているということを意識させない作品だったし、今回も、別に黒人監督ということにとりたてて意味があるわけではなく、ただ、アクションがうまく撮れそうな監督ということで演出を任されている。やっと黒人監督が人種意識にこだわることなく作品を撮れる時代が来ているわけで、その点では喜ばしい。特に、やはり初期の作品は人種的こだわりが横溢していたシングルトンがこういう作品を撮るということは、本人もだいぶ軟化したんだろう。あるいは、シングルトンがこれまで撮った作品は、確かにほとんどの作品で黒人が主人公だったにせよ、主題そのものは普遍的なものであったりした。別にシングルトンがこういう作品を撮っても不思議なことはないのかもしれない。


主演のブライアンに扮するポール・ウォーカーは、前作に較べ、コミカルな雰囲気を強くしてややイメージ・チェンジを図っているそうだが、それに効果があったかは疑わしい。少なくとも今回だけを見た限りでは、もっとコミカルにするか、さもなければ逆にシリアス路線で行った方が印象が強まったのにと思った。まあ、前回、シリアスで行って成功しなかったから今回はコミカル・タッチの味付けをされたんだろうけれども。ま、部外者は何とでも言える。いずれにしても、ちょっとキャラクターが中途半端なところが、周りの共演者がスターになっても、本人がスターダムに乗りきれない理由となっているような気がした。


実際、劇場から家に帰ってきたら、既にウォーカーの顔を思い出せなくなっていた。共演のタイリースの印象なんて結構強烈に残っているのに。女たらしという役柄になっているのに、まるでその辺で活躍する展開がなかったのも、印象に残らない理由の一つになっている。女たらしなら、当然ベッド・シーンの一つや二つ絡めるべきじゃないのか。本人はどうもいい人のようなのだが。なんとなく「アメリカン・アイドル」のホストのライアン・シークレストに似ている。


一方のローマンに扮するタイリース・ギブソンは、「サウス・セントラルLA (Baby Boy)」(これもシングルトンだ) が公開された時、予告編で最近では滅多に見ないIntroducing...という紹介のされ方をしていたので、てっきり新人だとばかり思っていたら、ビッグ・ネームではないにしてもCDを何枚か出しているヒップ・ホップ系のアーティストだそうで、既にところによってはかなり知られていたらしい。ややエキゾティックな顔立ちで、アーティストというよりは、多分モデル上がりなんだろうなとばかり思っていた。


しかし、いずれにしても、この作品では、俳優よりも車が本当の主人公であるということは論を待たない。だからこそ私も、別に出演者をまったく気にすることなく劇場に足を運んだのだ。その、本当の意味での今回の主人公は、イーヴォ、こと三菱のエボだ。私はとりたてて車が趣味というわけではないが、しげの秀一の「イニシャルD」を読んでいるので、エボが高い戦闘力を持つ車だということは知っている。ついでに、これはマンガの登場人物も言っていたが、それほど格好いい車ではないとも思っていた。それがアメリカ、しかもいかにも能天気なフロリダ的なド派手なペイントとカラリングを施され、うーむ、はっきり言って、この仕様ではどんなに車自体の性能がよくても、私なら絶対買わないと思わせてくれる。


実は、エボと、そのライヴァル車と目されているスバルのWRXが、最近ここアメリカでも注目されている。車社会のアメリカで、なぜだかラリーでその実力が世界中に既に証明されている2車が、これまで販売されていなかったのだが、一昨年スバル・インプレッツァWRXが販売されると、たちまち話題を集めた (と、これはニューヨーク・タイムズがそう言っていたのの受け売りである)。そして今年エボも販売を開始するに当たって、やっと、小型ながら高い戦闘能力を持つ四駆車が、一般的にも認知されるようになってきたのだ。


そのエボが「ワイルド・スピード×2」でフィーチャーされているわけで、前回予告編で登場して印象を残したホンダ・シビック等と共に、小型日本車が頑張っている。実は最後はいかにもアメ車という感じの車がいいとこさらったりするのだが、ま、アメリカ映画なんだし、そのくらいよしとするか。いずれにしても、西海岸や、今回の舞台となるフロリダのマイアミでは、やはりオープン・カーは気持ちよさそうだ。しかし一度、夏にディズニー・ワールドに行った時、湿気が高くて不快指数高かったというのもあった。本当に暑いところだと、直射日光に当たったまま長時間の運転なんてとてもじゃないけどできないので、実は結局幌を上げたりする。オープン・カーは、やはりフロリダというより西海岸だよなと思いながら、不気味なカラリングのエボを見ていたのであった。







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