媒体: USAトゥデイ (USA Today)

発行日: 5/14/2007 (Mon)


内容: USAトゥデイが選出する過去25年間のTVの決定的瞬間ベスト25。


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アメリカにはニューヨーク・タイムズ、ウォール・ストリート・ジャーナル、ワシントン・ポスト、LAタイムズ、デイリー・ニューズ等、著名な日刊紙は多いが、実はこれらの新聞は全部ローカル紙だ。もちろんこれだけ有名になってしまうと、ニューヨーク・タイムズをちゃんと発行日中にテキサスの片田舎でだって買えたりするが、それにはニューヨークのメトロ欄はあっても、テキサスのローカル・ニューズなんて載ってない。つまり、アメリカにおいて本当の意味で業界紙ではない全国紙はたった一つ、USAトゥデイしかない。


そのUSAトゥデイは1982年9月15日から発行を開始した。つまり今年で創刊25周年の節目を迎える。そこで過去25年を回顧する特集を色々と組んでいる。すなわち、過去25年を代表するトレンド、誰それの発言、本、株、NFLドラフト等のベスト25のランキング付けを発表しており、これがなかなか面白い。こういう事件や発言があったなあとか、もうこれがこんな昔の話になっているのか、とか、新しい発見がある。その中でも、TVで放送された決定的イヴェント/瞬間のベスト25のランキングが、私にとって最も興味深かったのは言うまでもない。以下はそのランキングである。私が以前に書いた、TV史上ベスト50番組を選ぶ「50ベスト・ショウズ・オブ・オール・タイム」や、ミニシリーズのベスト10を選ぶ「エピックTV」を参照しながら読むとまた一興だと思う。



25 「M*A*S*H」最終回 (1983)

言わずもがなの、アメリカTV史上最高の視聴率記録を打ち立てた番組エピソード。視聴者の嗜好が多様化して500チャンネル時代に突入している現在、シリーズ番組において視聴率60%、視聴者数1億人というこの記録が今後破られることはないだろう。



24 「ロンサム・ダブ (Lonesome Dove)」と「戦争と追憶 (War & Remembrance)」 (1989)

ネットワークのTVミニシリーズ全盛時代の最良 (「ロンサム・ダブ」) と、最長 (「戦争と追憶」) 番組の2本。「ルーツ」や「将軍」は既に25年以上前の番組になるのか。



23 クラレンス・トマス/アニタ・ヒル公聴会(1991)

あったあった、こんなの。やはり人種とセックスが絡むと、格好のスキャンダルとなることの証明。



22 ジョン・スチュワート「ザ・デイリー・ショウ (The Daily Show)」 (1998)

この番組が始まった時は、ここまで評価され、注目される番組になるとは予想もできなかった。前任者のクレイグ・キルボーンはこの番組を見捨ててネットワークのCBSに移り、結局そこで芽が出ず消えていったというのに。



21 「南北戦争 (The Civil War)」 (1990)

結局ケン・バーンズは、いまだにこの歴史ミニシリーズ・ドキュメンタリーの成功と評判で今も語られているという気がする。



20 「ザ・ジェニー・ジョーンズ・ショウ (The Jenny Jones Show)」殺人事件 (1995)

いくら扇情的に走るのがこの手のトーク・ショウの常とはいえ、全米の視聴者の目の前で男から愛を告白されたもう一人の男は、番組放送の3日後に恥をかかされたとして告白した男を射殺、後味の悪さという点では断トツで忘れがたい。どちらかというとこの番組よりも「ジェリー・スプリンガー・ショウ」で起こるべきだった事件。



19 ダン・クエイルと「マーフィ・ブラウン (Murphy Brown)」(1992)

時の副大統領ダン・クエイルが、未婚の母となったマーフィ・ブラウンことキャンディス・バーゲンを教育上よろしくないと発言して、全米の未婚の母およびその他の米国市民ほぼ全員の反発と嘲笑を食らった事件。なんでこんな時代を読めないやつが副大統領になれたのか、いまだに謎。



18 アップルのTVコマーシャル (1984)

記念碑的なリドリー・スコット演出のアップル・コンピュータのTVコマーシャル。年間で最も高い視聴率を稼ぐNFL決勝戦の「スーパーボウル」の時に初放送され、その時の試合結果が忘れ去られても、いまだにこのコマーシャルは語り継がれている。「スーパーボウル」において、試合内容よりコマーシャルの方が話題となるTVコマーシャル戦争はこの時から始まった。



17 エレンのカミング・アウト (1997)

ABCのシットコム「エレン」主演のエレン・デジェネレスがゲイであることは既に公然の秘密となっていたとはいえ、それを公衆の面前で認めるか認めないかではキャリアに大きく影響する。それを自分の番組の中で、もう一人の自分であるエレンとして笑いをとりながらカミング・アウトしたところがミソだった。少なくともこれ以降、TVに登場するゲイというキャラクターの位置づけ、および視聴者の反応が変わっていったことは確か。



16 「サインフェルド (Seinfeld)」 (1990)

ネットワークでの正時放送中も現在のシンジケーションでの再放送も、人気を二分する「フレンズ」が言及されなくても「サインフェルド」は必ずとりあげられるところが、この番組の評価の高さを物語っている。



15 「アメリカン・アイドル (American Idol)」 (2002)

現在放送中の番組で癖になる番組の筆頭。現在第6シーズンを終了しており、たぶんエピソード総数は300エピソード前後に達すると思うが、私が見逃したのはせいぜい数本程度。第1シーズン第1回からほとんど全部見ている。



14 「ドーソンズ・クリーク (Dawson's Creek)」 (1998)

既に今はなき弱小ネットワークWBの看板番組だった。「バッフィ (Buffy, the Vampire Slayer)」でもなく「フェリシティの青春 (Felicity)」でもなく、この番組が選ばれているというところが興味深い。ドーソンのガールフレンドを演じたケイティ・ホームズは今ではトム・クルーズの奥さん、ミシェル・ウィリアムズは「ブロークバック・マウンテン」出演と、女優陣の活躍が目立つ。



13 「サーティサムシング (thirtysomething)」 (1987)

私が渡米したのとほぼ入れ違いにこの番組は終了しており、実はまともに見たことは一度もない。それこそこの番組に描かれている30代にちょうど足を突っ込んだところだったのだけれども。私にとってはやはりマーシャル・ハースコヴィッツ/エドワード・ズウィックの番組となると、「アンジェラ 15歳の日々 (My So-Called Life)」になるのだった。



12 ダン・ラザーの降板 (2005)

午後のワールド・ニューズのネットワーク3大キャスター、その幕引きの仕方は三者三様だった。ジェニングスの病死、ブロコウの勇退、そしてこのラザーのスキャンダルの引責辞任は、本人が意図していたキャリアの幕切れとはまったく異なるものだったに違いない。



11 ジャネット・ジャクソンの「衣装不具合 (wardrobe malfunction)」 (2004)

まったく日本語訳の難しい新語を勝手に作らないでくれとぼやきたくなる、2004年の「スーパーボウル」でのジャネット・ジャクソンのおっぱいポロリ事件。この事件以降、米連邦通信委員会 (FCC) の検閲機能は強化され、ネットワークが自由に作りたい番組が作れた時代に終わりを告げ、クリエイティヴィティ冬の時代が到来する。そして2007年現在、まだ春は来ていない。



10 ジョニー・カーソンの「トゥナイト (Tonight)」ラスト・エピソード (1992)

ジェイ・レノがカーソンから引き継いだ「トゥナイト」のホストを15年も務めても、いまだにカーソンという名の威光は衰えない。実は私もラスト・エピソードでカーソンに囁きかけるように歌ったベット・ミドラーと、かすかに涙ぐんだカーソンをいまだによく覚えているのだった。



9 「ザ・リアル・ワールド (The Real World)」 (1992)

CBSの「サバイバー」や「ビッグ・ブラザー」、VH1の「ザ・サーリアル・ライフ」にすっかり圧されてしまったが、やはり現在ある形での多人数同居型リアリティ・ショウの先駆的番組と言えばこれだ。かつてほどの人気はないとはいえ、現在もシーズン毎に場所を変えながら続いている。



8 「ザ・コスビー・ショウ (The Cosby Show)」 (1984)

黒人が主人公の黒人シットコムを白人も喜んで見たことで、少なくともTVの中では人種平等が確立されたと言える。



7 「ザ・シンプソンズ (The Simpsons)」 (1989)

プライムタイムに放送されたアニメーションとしてだけでなく、FOXの全スクリプト番組としても放送されている中で最長。「ザ・シンプソンズ」の歴史イコールほぼFOXの歴史でもある。



6 O. J. シンプソン裁判 (1994)

こちらは現実に存在するシンプソン。確かに一時全米中の注目を浴びてたなあ。殺人事件に人種問題、恋愛、不倫、スポーツ、セレブリティとスキャンダルに必要な要素を満遍なくまぶし、怖いものなし。ただし、私としてはメアリ・ケイ・ルトーノー事件も入れたかった。



5 「NYPDブルー (NYPD Blue)」 (1993)

過去25年を代表する刑事ドラマといえば、やはりこれ。「ソプラノズ」がやったことをネットワークという枠の中でできるところまで追求した。この番組で人気が出たことから天狗となり、一時はほぼ完全に干され、俳優を辞める気だったデイヴィッド・カルーソがCBSの「CSI: マイアミ」でようやく復帰するまで、10年近い歳月が必要だった。



4 「ザ・ソプラノズ (The Sopranos)」 (1999)

TVにおけるヴァイオレンス、セックス、悪口雑言の描写の概念を一変させた記念碑的番組。今後アメリカのTV番組は「ソプラノズ」前、「ソプラノズ」以降で語られることになろう。その「ソプラノズ」、現在、ついに最終シーズンを放送中。はたしてソプラノ一家に未来はあるのか。トニーは生き延びるのか。AJは? カーメラは? 実はメドウも可愛くなったと私は思っているのだが。



3 「ジ・オプラ・ウィンフリー・ショウ (The Oprah Winfrey Show)」 (1986)

日中トークの女王、オプラ。実はまだ放送が始まって20年ちょいしか経っていない。TVの歴史が始まって以来ずっとそこにいたような気がする。



2 FOXの放送開始 (1986)

FOXが放送を開始したのが1986年 (実際のTVスケジュールは87年から)、実は「オプラ」と同い年だ。いつの間にかちゃんと米ネットワークの一角を占めるようになった。若い視聴者だとABC、CBS、NBCの3大ネットワークよりもFOXを見ている者の方が多いだろう。そろそろもうちょっと番組を増やして夜11時まで放送してもいい頃なんじゃない?



1 9/11報道 (2001)

誰が選んでもこの1位だけは変わるまい。    






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