今年は、私が勝手に選定する個人的アカデミー賞を書かなかった。パンデミックのせいでほとんど外に出れず、映画館も開いてなく、新作は家でストリーミングで旧作を交えて細々と見ていただけなので当然だ。むしろ、普段は斜に構えて見ているアカデミー賞を逆に参考にして、ノミネートされている作品をストリーミングで見るようにしていた。
しかしそれはまだいい方で、TV番組視聴の方の被害は甚大、というか、大きな影響を受けた。ただでさえ近年、ストリーミング・サーヴィスが増えて視聴が間に合わず手に余ってきたのに、加えてこれまでアメリカのTVを見るのが仕事の一部だったのに、それがなくなってしまった。
これまでは、アメリカで放送される新番組のほとんどは、その一部ではあってもほぼ全部見ていた。それが仕事だったからだ。仕事というその強制部分がなくなると、正直言って見たくない番組は見ない。ABCの「バチェラー (Bachelor)」に代表されるやらせ的恋愛リアリティや、ブラヴォーの「ザ・リアル・ハウスハイヴズ‥‥ (The Real Housewives...)」フランチャイズ等は、頼まれても見たくない。子供向け番組やティーンエイジャー向けのYAドラマも見ない。
見なくてもいいんだったら、そういう有料チャンネルやストリーミング・サーヴィスを、わざわざ金を払って契約する意味がない。というわけで視聴プランを見直し、NetflixとHuluだけ残し、迷ったものの、HBO、ショウタイム、パラマウント+ (旧CBSオール・アクセス) は、すべて解約する。
元々加入していないディズニー+やamazon、アップルTV+は、実はこれまではどうしても見たい番組がある場合、無料視聴期間を利用していたりした。今後どうするかは、それらのサーヴィスの今後の番組ラインナップ次第だ。
いずれにしても、こうやって視聴プランをリーンにして贅肉を削ぎ落とした結果、ある程度話題になってはいても、見れない番組も増えた。
例えば、7月13日に発表された今年のエミー賞にノミネートされているドラマは、下記の通りだ。
「ザ・ボーイズ (The Boys)」amazon
「ブリジャートン家 (Bridgerton)」Netflix
「ザ・クラウン (The Crown)」Netflix
「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語 (The Handmaid's Tale)」Hulu
「ラヴクラフトカントリー 恐怖の旅路 (Lovecraft Country)」HBO
「マンダロリアン (The Mandalorian)」ディズニー+
「ポーズ (Pose)」FX
「 THIS IS US/ディス・イズ・アス (This Is Us)」NBC
既にネットワークよりケーブル・チャンネルやストリーミング・サーヴィスの方が勢いのあるアメリカTV界においては、ノミネートされている8番組のうち、地上波ネットワーク番組は「ディス・イズ・アス」のみだ。つまり、アンテナだけで無料で見れる番組は、「ディス・イズ・アス」一番組しかない。ベイシックのケーブル・チャンネルを契約しているなら、それにFXの「ポーズ」を見ることができる。しかし、無料もしくは低料金で見れるのはここまでだ。あとは全部、一番安いディズニー+ ($7.99/月) から最も高いHBO (経由するケーブル会社によって異なったりするが、だいたい月10-15ドル程度) まで、月々の視聴料を支払って個別に契約する必要がある。
私の場合、元々amazonとディズニー+は加入しておらず、HBOもキャンセルしたので、「ザ・ボーイズ」、「ラヴクラフトカントリー」、「マンダロリアン」は見られない。まあ、本気で見ようと思ったら前述のように無料視聴期間を利用するなり、何らかの方法はあるのだが、いずれにしても見たい時に見れるわけではない。
コメディの場合、ノミネートされているのは:
「ブラッキ-ッシュ (black-ish)」ABC
「コブラ会 (Cobra Kai)」Netflix
「エミリー、パリへ行く (Emily In Paris)」Netflix
「ハックス (Hacks)」HBO Max
「フライト・アテンダント (The Flight Attendant)」HBO Max
「コミンスキー・メソッド (The Kominsky Method)」Netflix
「ペン15 (Pen15)」Hulu
「テッド・ラッソ (Ted Lasso)」アップルTV+
これだと地上波で見れるのは、やはり「ブラッキ-ッシュ」の一番組のみ。あとはケーブルですらなく、ストリーミング・サーヴィスを契約していなければ見れない。
これがリミテッド・シリーズだと:
「アイ・メイ・デストロイ・ユー (I May Destroy You)」HBO
「メア・オブ・イーストタウン (Mare of Easttown)」HBO
「クイーンズ・ギャンビット (The Queen’s Gambit)」Netflix
「地下鉄道 -自由への旅路- (The Underground Railroad)」Amazon
「ワンダヴィジョン (WandaVision)」ディズニー+
となって、事実上、私が見れるのは「クイーンズ・ギャンビット」だけになってしまう。ただし今年のこのカテゴリーは、私見では近年では最も粒揃いで、見逃す気はなく、一応策を弄してほとんど見てはいる。
かつて20年ほど前に私がこのサイトを立ち上げたのも、実はほとんど日本人はアメリカのTV番組のことを知らないということを知ったからだ。インターネット黎明期を過ぎ、外国ドラマ好きがネットで外国の番組のことを話題にし始めると、それが逆に、ああ日本には本当に一部の情報しか伝わっていないんだなと思わせてくれた。それで、少しでも早く正しいアメリカのTV情報を日本に向けて発信しようと考えたのが、そもそものこのサイトの発足理由だ。
しかし時代は進み、現代ではその気になれば本当に世界中の番組を日本に居ながらにして見ることができる。加えて、ストリーミング・サーヴィスがうようよと増えた結果、アメリカでのTV番組製作本数はうなぎ上りで、正直言って、もう一人で視聴をこなせる数ではない。さらに契約ストリーミング・サーヴィスの数を絞り、見たくない番組は見ないことにすると、少なくとも当初このサイトを発足した意義からは逸脱し始めている。
まあ、当初の発足目標の意義はある程度達したのではないかと、ちょっと自画自賛しないでもない。日本人の知らなかった、埋もれている面白いTV番組をかなり紹介できたのではないかと思う。とはいえ、一人で展開するTV関連サイトの時代はもう過去のものだと、現在の大手TV関連サイトを見ていると思わざるを得ないのも確かだ。というわけで、今後は少なくともTVに関しては、一ファンとして趣味に徹して、自分の気になる番組だけについて書こうと思う。
しかし、まあ、情報だけはまだ持っており、各種アウォーズ予想がそこそこ楽しいのは事実なので、今回まではドラマ、コメディ、リミテッド・シリーズ、リアリティの主要部門番組だけについては、やはり従来通り予想してみることにした。
というわけで、今年の短縮ヴァージョンの私の予想は:
ドラマ:「ポーズ」
コメディ:「テッド・ラッソ」
リミテッド・シリーズ「メア・オブ・イーストタウン」
三つとも外れるのだけはなんとしても避けたいところだが。授賞式は9月19日 (日)。