今年もアメリカのTV界の新シーズンまで目前となった。この時期になると、さてネットワークの次のヒットは、あるいは次の失敗作は、と業界がかまびすしくなる。例年、その年の特徴というものがあるのだが、今年はまず、ここ数年の傾向として、リアリティ・ショウの数が増えたことが第一に挙げられる。


リアリティ・ショウというものは、これまでは夏に編成されるか、視聴率を稼げなくてキャンセルされた番組の後釜としてシーズン途中に差し替え番組として編成されるのが常だった。それがABCの「フー・ウォンツ・トゥ・ビー・ア・ミリオネア」とCBSの「サバイバー」、さらにはFOXの「誘惑の島」によって、秋の新シーズンに、新番組として堂々と編成されるようになった。


基本的にクイズ番組以外のリアリティ・ショウは、数回から10回、多くても15回程度で終わる短期決戦型番組である。たとえ新番組として新シーズンに編成されても、1シーズン分編成されるエピソード数などない。それでもそうせざるを得ないほど、現在のリアリティ・ショウというのはアメリカのTV界を席捲しているというわけだ。


そして次の特徴として、まあ、これは結構例年そうなのだが、CIA やFBI、その他の警察機構や秘密結社が活躍するアクション系が多いということがある。今年は特に似たような番組が多く、私はいまだに区別をつけきれない。その中からヒットする番組を指摘できる人間なぞいないだろう。いずれにしても、毎年関係者があれはいい、これがいいといって挙げる番組が当たったためしがないものを私が予測してもしょうがないので、まあ、ここは現在各ネットワークが必死になって番宣している予告編を見ての印象や、私が面白そうだと思う番組の紹介に留めたいと思う。









ABC


注: 月曜9-11時枠の「ザ・ランナー」と「ザ・コート」は、アメリカン・フットボール中継の「マンデイ・ナイト・フットボール」のシーズンが1月に終わった後に編成される。


 


先シーズンまで週4回編成されていた「ミリオネア」が週2回に減らされていて、それだけでも私は嬉しい。月曜8時台の「ミリオネア」は、NBCの同様のクイズ番組「ウィークスト・リンク」と裏番組同士となってつぶし合いをする。クイズ番組というのはブームがあって、ある時えらく盛り上がるのだが、流石に最近は落ち着いてきた。私はもうこれ以上プライムタイムにクイズ番組は見たくない。


火曜10時の「フィリー」は、昨シーズンまで「NYPDブルー」のレギュラーだったキム・デラニーが主人公のドラマ。なんとCBSが同じく火曜10時に編成しているドラマ「ジャッジング・エイミー」も、主人公は元「NYPDブルー」のエイミー・ブレネマンで、奇しくも同じ番組でスターとなった二人が裏番組同士となって勝負することになった。本人たちは嫌だろうと思うけど。


似たようなアクション・ドラマの「エイリアス」と「シーヴス」とでは、「シーヴス」主演のメリッサ・ジョージの方が私には格好よく見える。FOXの「アリー myラブ」を降りたコートニー・ソーン・スミスは、ジム・ベルーシと組んでシットコム「アコーディング・トゥ・ジム」に主演。「サインフェルド」レギュラーだったジェイソン・アレキサンダー主演の「ボブ・パターソン」がヒットする確率は、まるでないと思う。サインフェルドなしのアレキサンダーを人が見たいと思うとは到底思えない。マット・デイモンとベン・アフレックが製作するリアリティ・ショウ「ザ・ランナー」と、サリー・フィールドが主演のドラマ「ザ・コート」は、年明けからの放送。





CBS



木曜夜の「サバイバー3」はもう一度NBCの最強シットコム「フレンズ」に挑む。しかし新番組の「エージェンシー」は、「ER」に挑むにはちと弱いような気が‥‥。リチャード・ドレイファス主演の「エデュケイション・オブ・マックス・ビックフォード」とジェイムズ・クロムウェル主演の「シチズン・ベインズ」は、共にCBSらしい中高年齢層者向けの心暖まるドラマという感じがして、両方とも実力派の映画俳優が主演しているのだが、私はあまり惹かれない。「ガーディアン」も似たような印象を受ける。それよりもちょっとSFがかった「ウルフ・レイク」の方になんとなくそそられるものがある。


リアリティ・ショウの「アメイジング・レース」は映画プロデューサーのジェリー・ブラッカイマー製作で、観客を楽しがらせるツボを心得たブラッカイマーだけに、もしかしたら結構いけるかも知れない。シットコムでは、ダニエル・スターン主演の「ダニー」よりも、エレン・デジェネレス主演の「エレン」の方が面白そう。





NBC



「ロウ&オーダー」からのスピンオフ番組第2弾「クリミナル・インテント」が登場。私はいくらなんでも「ロウ&オーダー」関連番組があり過ぎだと思うのだが。「ロウ&オーダー」自体は面白いし、レヴェルも高いのだが、似たような展開をする番組が同じチャンネルで週3回もあったら、視聴者はそれらを全部見ようという気になるだろうか。しかし、「ザ・セル」が印象的だったヴィンセント・ドノフリオが、TVでどんな演技をするか見てみたい気はする。その「ロウ&オーダー」出身のジル・ヘネシーが主演する「クロッシング・ジョーダン」は、予告編を見る限りではなんとなく面白そう。「UC」は、演じる俳優に惹かれないなあ。


シットコムで行けそうなのは、実は「フレンズ」のすぐ後で高視聴率が確約されている「インサイド・シュワーツ」じゃなくて、病院シットコムの「スクラブス」だと思う。今現在派手に宣伝している各ネットワークの新シットコムの中で、予告編だけで笑わせてくれたのは、これまでのところ「スクラブス」だけだ。セレブリティ・シェフのエメリル・ラガッシがシットコムに初主演する「エメリル」に、生き延びるチャンスはまずないだろう。既に何度も撮り直しを命ぜられたという話が伝わっている。




FOX



推されているのはキーファー・サザーランド主演のアクション「24」、プライムタイム・ソープ「パサディナ」、シットコムの「アンデクレアード」の3本で、これらの番組の予告編は至るところで目にする。「アンデクレアード」なんて、劇場公開映画の予告編でまで宣伝していた。それなのに「ザ・ティック」と「バーニー・マック・ショウ」の予告はまだ一度も見たことがない。しかし、私にはやはりソープの「パサディナ」が生き残れるとは思えない。プライムタイムのソープ・ブームがまたやってくるには、まだあと数年かかるという気がする。最近気になるマーティン・ドノヴァンやデイナ・デラニー主演と、メンツ的には悪くないんだが。


唖然とするのが水曜夜8時の再放送枠で、ドラマやシットコムは元々何度でも再放送するくせに、わざわざシットコムの再放送専門の枠というのを設けてしまうこの神経の図太さである。まったくあきれてしまう。これだからFOXって二流のネットワークと思われているということに早く気がついてくれないだろうか。





WB



日曜夜8時の「リプリーズ・ビリーヴ・イット・オア・ナット」は、実はWBのケーブルでの姉妹チャンネルであるTBS (東京放送のことではありません) が以前から既に放送している番組。実はこの時間帯、当初、新しいリアリティ・ショウ「ロスト・イン・ザ・USA (Lost in the USA)」の編成が既に決まっていた。ところが、8月も末のそろそろ新シーズンに突入する目前となって、いきなりWBは考えを変えて番組のキャンセルを発表、慌てて編成し直したのが、「リプリーズ・ビリーヴ・イット・オア・ナット」である。この番組、いわゆる奇人変人ショウで、ホストを「ロイス& クラーク」のディーン・ケインが担当している。



それにしても一度は発表があったのに、一度も放送されないうちからキャンセルされてしまう番組というのは‥‥。私の覚えている限りでは、99年にFOXが映画「クルーエル・インテンションズ」の続編として企画した「マンチェスター・プレップ (Manchester Prep)」でやって以来だな。



WB は今シーズン、看板番組の一つだった「バフィ恋する十字架」と、人気が上がり始めていた「ロズウェル」を揃ってライヴァル局のUPNにとられてしまった。製作者がもっと金払えというのを渋っていたら、横からUPNに持ってかれてしまったのだ。おかげで今秋の新番組では、その穴を埋めるために大量のシットコムを用意しなければならなくなった。なぜドラマの穴埋めにシットコムを持ってきたのかはわからないが。



その中で最も評判のいいのは「メイビー・イッツ・ミー」だが、これって結構ほのぼの路線っぽくて、私はそんなに惹かれない。カントリー・シンガーのリーバ・マッケンタイヤ主演の「リーバ」、「フルハウス」のボブ・サガット主演の「レイジング・ダッド」、その他「メン・ウーメン&ドッグス」、「オフ・センター」等と、今イチっぽいのが多い。リアリティ・ショウの「エリミデイト・デラックス」は、ねるとん的恋愛リアリティ。実は私が一番惹かれているのは、たった一本だけ編成されたドラマの、スーパーマンの若い頃を描くという「スモールヴィル」だったりする。





UPN






























UPN はWBからかっさらってきた「バフィ」と「ロズウェル」、それに新番組とは名ばかりの「スタートレック」最新シリーズ「エンタープライズ」の3本を編成するため、実質上の新番組はシットコムの「ワン・オン・ワン」1本のみである。とにかく、大枚はたいて手に入れた「バフィ」と「ロズウェル」がどこまで新規視聴者を開拓できるかがポイントだろう。果たしてプロレス中継の「WWFスマックダウン!」だけで持っていると陰口を叩かれるUPNが挽回なるか。











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2001年アメリカ・ネットワーク新番組

 
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