10 Cloverfield Lane


10クローバーフィールド・レーン  (2016年4月)

もう10年近くも前! になる「クローバーフィールド (Cloverfield)」は、ある日突然エイリアンが地球にやって来て文明を壊滅させるという話だった。それと近いタイトルを持ち、同様にJ. J. エイブラムスが製作する「10クローバーフィールド・レーン」は、果たして続編なのかそれともまったく異なる作品なのか。


その答えは続編とも姉妹編とも言えるものだが、「クローバーフィールド」を知らなくとも、単体で見ても楽しめる作品になっている。


ある女性が交通事故に遭い、次に目覚めた時は何処とも知れない地下のバンカーの中だった。そこには二人の男がいて、外の世界は核戦争かエイリアン襲来のせいか、人が住める状態ではなくなってしまったという。その女性は半信半疑ながらも男たちと一緒に暮らし、ある時隙を見て脱出を図る。しかし彼女の見たものは‥‥という展開だ。


前半を見ると、似ているのは「クローバーフィールド」ではなく、「ルーム (Room)」「オールド・ボーイ (Oldboy)」だ。また、登場人物の数が3人、途中でちょっとだけ現れる女性を含めても4人しかいない基本室内劇となると、最近で思い出すのは「エクス・マキナ (Ex Machina)」だろう。こういう密室タイプの舞台設定は、SFやホラーに向いている。


この末世思想というか、近々ハルマゲドンによって地球が滅亡するという考えは、わりと多くの者が持っている。元々アメリカ内陸部には、竜巻被害の多い地域に、自宅敷地内の地下に一時避難用のバンカーを持つ者は結構いる。それにさらに末世思想が加わり、一時避難どころか数か月、あるいは数年の長期にわたって生きていけることのできるバンカーを設置する例も現れ始めた。


TVでは地球滅亡の日に備えてバンカーを建設するプレッパーと呼ばれる者たちをとらえるリアリティ・ショウ「ドゥームズデイ・プレッパーズ (Doomsday Preppers)」およびそのスピンオフが、ナショナル・ジオグラフィックで放送されている。こないだCBSの「エレメンタリー (Elementary)」を見ていたら、そういう大型バンカーを作って分譲するビジネス詐欺の話があった。要するに、現実にハルマゲドンが起きるかどうかはともかく、そういうバンカーを個人的に所有するという設定は、眉唾ではなく、大いにあり得る。


そこに事故で気を失ったミシェルが運び込まれる。バンカーの主ハワードは、核戦争か何かで地上はほぼ壊滅したといい、もう一人の男エメットも、地上で何かが起きたのは間違いないとダメ押しする。しかしもちろん、彼らが組んでミシェルを罠にかけようとしてないという保証はどこにもない。一方、核戦争が起きていない、あるいはエイリアンが攻めて来ていないという確信もない。


これは本当に、どうなんだろう、核かエイリアンかそれとも新種の細菌かなんかか、あるいは単に大掛かりなはったりかと、こちらもあれこれ想像を逞しくする。たぶんハリウッド映画としてはあまり予算をかけてない部類に入るのじゃないかと思うのだが、こういうのはやっぱりアイディア次第だと思うのだった。


例えばこの映画、まるで室内劇と上に書いたが、現実に最初から最後まで登場人物は4人しかいない。「エクス・マキナ」の場合、セリフのある登場人物は4人しかいないが、それでもそれ以外の人物がスクリーンに映らないというわけではなく、冒頭のオフィスの場面では何人もの人間が働いている。


ところが「10クローバーフィールド・レーン」では、本当に他に人が出てこない。冒頭ではミシェルは都会に住んでいるのだが、傷心で人目を避けてアパートを出るため、誰とも会わないのだ。ただし電話をかけてくるボーイフレンドの声は聞こえるし、ラジオから声もする。そういう意味では他に人はいないというわけではない。因みに声だけ登場のボーイフレンドの声は、ブラッドリー・クーパーがやっているそうだ。気づかなかった。


ハワードを演じるジョン・グッドマンは、近年は悪役っぽいキャラの方が多く、今回も実は本当はかなり危ないんじゃないかという雰囲気を漂わせ、なかなかよろしい。主人公のミシェルに扮するメアリ・エリザベス・ウィンステッドは、CWの「クレイジー・エクス-ガールフレンド (Crazy Ex-Girlfriend)」のレイチェル・ブルームと、FOXの「ニュー・ガール (New Girl)」のゾーイ・デシャネルを足して割ったような感じ。「ルーム」のブリー・ラーソンほど気が強そうな感じじゃないが、しかしやっぱりやられたままじゃないのだった。エメット役のジョン・ギャラガーJr.は、そのラーソンと「ショート・ターム (Short Term 12)」で共演している。ラーソンが「ルーム」で閉じ込められた後は、今度はギャラガーがバンカーに閉じ込められるのだった。演出はこれがメイジャー・デビューのダン・トラクテンバーグ。












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ミシェル (メアリ・エリザベス・ウィンステッド) は恋人と別れる決心をし、町を出る。しかしクルマを運転している途中、事故に遭う。次にミシェルが目が覚めたのは、四方を壁に囲まれ、窓もない知らない場所だった。やがて男が現れ、ハワード (ジョン・グッドマン) と名乗る。事故に遭ったミシェルを救助してここに連れてきたのだという。さらにそこにはもう一人の男、エメット (ジョン・ギャラガーJr.) がいた。彼らが説明するには、ここは地下のバンカーで、外の世界は核爆発かエイリアン襲来か知らないが壊滅状態で、外に出られないという。半信半疑のミシェルだったが男たちは本気だった。ある時、ハワードの隙をついて外に脱出を図ろうとしたミシェルは、ちょうど外に助けを求めてやって来た女性を見る。彼女は顔が焼け爛れ、外の世界に異変が起こっていることを示していた‥‥


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