放送局: A&E
プレミア放送日: 1/15/2001 (Mon) 21:00-23:00
製作: A&Eネットワーク
製作総指揮/脚本/監督: シドニー・ルメット
製作: デイヴィッド・ローゼル、クレイグ・マクニール
撮影: ロン・フォーチュナト
編集: レイ・ハブリー、トム・スワートワウト
音楽: ポール・チハラ
美術: クリストファー・ノヴァク
出演: アラン・アーキン (ジョー・リフキン)、ラターニャ・リチャードソン (アタラ 'クイーニー' シムズ)、ポーラ・デヴィック (シンシア・ベニントン)、ジョゼフ・ライル・テイラー (ボビー・エプソジト)、マニー・ペレス (ラモン・ロドリゲス)
物語: ニューヨークの深夜法廷は始終裁ききれない数の事件を抱えており、検事や裁判官は休む間もなく未決事件の裁決に追われている。ジョー・リフキン判事と同僚のアタラ・シムズ判事も、今日も簡易裁判で次から次へと数々の判決を言い渡していた。今夜リフキン判事の裁判の原告に立ったのは、今日が初仕事のシンシア・ベニントン検事補。しかし彼女の書類を調えた同僚のボビー・エプソジト検事補は、最近の疲れがたたって不首尾な書類を渡してしまい、シンシアはリフキン判事から睨まれる。控え室に帰ってボビーと対立するシンシアだが、そのうちに和解し、ディナーの約束をするまでになる。
シンシアの父は官界の大立者で、自分のコネを使用しないで地道に働くシンシアを過保護なほど心配していたが、しかしシンシアは父を見返すためにも、下積みから出発して出世したいと思っていた。ボビーにはドラッグで問題を起こしている身内がいて、彼になんとかして犯罪の記録が消せないかと相談を持ちかけてくる。ボビーは最初拒否するが、結局はオフィスのコンピュータを操作して記録を抹消してしまう。一方、リフキン判事は情状で釈放した黒人少年が女性警官を射殺してしまい、マスコミから槍玉に上げられる。その女性警官がリフキン判事の知り合いの娘であり、しかもその日が警官となってパトロールに出た初日であったことからも、世論からの非難が集中、リフキン判事は上からも下からも突き上げをくらう‥‥
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TV映画「華麗なるギャツビー」を放送したばかりのA&Eが矢継ぎ早に贈るオリジナル番組第2弾、しかもこのチャンネルが初めて挑戦するドラマ・シリーズが、この「センター・ストリート100番地 (100 Centre Street)」である。センター・ストリートはロウアー・マンハッタンにある実在の地名で、官庁街の一角。その100番地は、深夜法廷等、犯罪取り締まり関係のオフィスが入っているビルが建っている。この番組はその深夜法廷で働く人々の苦悩や活躍を描くものだ。
「センター・ストリート100番地」は、元々TV界出身であるが、現在では映画界の重鎮となっている76歳のシドニー・ルメットが、40年ぶりにTV番組を撮るということで前々から話題になっていた。 「12人の怒れる男」、「未知への飛行」、「狼たちの午後」、「セルピコ」、「プリンス・オブ・シティ」等、社会派の巨匠として知られるルメットであるが、そもそもはTVの黎明期に生放送を主体としたドラマの演出で腕を磨いた。「12人の怒れる男」なんて、なるほど、よくできたTV映画という感じが濃厚にする。
そのルメットがまたTVに帰ってくるというのは、それなりに色々な憶測を呼んだ。周知のように、映画よりランクが下と見られるTVは、名の売れた俳優や演出家は関係しない。TV出身者は名が売れ出すと挙って映画に進出するが、その逆はあまりない。しかし、一度落ち目になった映画界の俳優/監督がTV番組を手がけることによって再び日の目を浴びることもあり、ジョン・フランケンハイマーがHBOのTV映画で復活したことはよく知られている。
まあ、そんなこんなで、TVを撮ると聞いてルメットは落ち目だったのかと反射的に考えたものも多かった。なるほど、近年のルメットは以前のような精彩は欠いている。シャロン・ストーンを主人公に起用した「グロリア」は批評家から叩かれただけじゃなく、興行成績も芳しくなかったし、私が見た中で最も新しい「NY検事局」も、悪くはなかったが、かといって傑出しているわけでもなかった。オープニング(だったかな)の犯罪者が潜んでいる朽ち果てたビルへの突入シーンなんて、結構興奮させられはしたんだけどね。
それに、ジェイムズ・ガンドルフィーニはこの映画での好演が契機となってHBOの「ソプラノズ」でブレイクしたなど、やはりルメットなりの見所はあった。 そういったこともあるから、ルメットが落ち目だったとは一概には言えないが、それでも人々は口さがないものである。ルメットがまたTVに戻る。ルメットがTVねえ。ということで、ルメットはこの企画が自分の現在の評判とは無関係に、自分自身がただやりたいからやるんだということを至る所で説明しなくてはならなかった。
ルメットがTVを撮る理由として第一に挙げていたのが、テクノロジーの発展、つまり、HDTVの登場である。HDTVによって、TVの画質は大幅にアップした。「センター・ストリート」はHDTVを使用することによって、フィルム並みの画質を得ることになった。元々ルメットはTV出身である。TVでも映画並みの質が得られるならば、別にフィルムにこだわる必要はない。
しかもルメットは「センター・ストリート」で、数台のカメラを一度に使用するマルチカメラ撮影という、TVのシットコムやソープでしか用いられない撮影方法を試みているのだ。普通、ドラマ撮影はシングル・カメラで何度も違った角度から撮り直す。マルチカメラは撮影時に観客がセットにいるため何度も撮り直すわけにはいかないシットコムや、毎日放送でとにかく質より速さが要求されるソープでしか用いられない。
その欠点は明らかであろう。カメラの切り返しの角度に限界があるマルチカメラ撮影では、どうしても画面の奥行きに欠ける。シットコムでは画面のこちら側にはセットは組まれてないし、とにかくマルチカメラだと、他のカメラをフレームに入れないように撮影しないといけない。とれる構図に限界がある。ドラマ撮影にマルチカメラが使用されるのは、ルメットがまだTVを撮っていた生放送の時代以降、完全にすたれた撮影方法なのだ。
ところが、ルメットはこのマルチカメラ撮影にもメリットがあるという。その最たるものが、何度も撮り直さずに済むため、撮影時間が大幅に短縮されるということである。アメリカのドラマが年間20数本しか撮影されないのも、基本的にフィルムを使用してシングル・カメラで撮っているため、撮影に時間がかかるからである。フィルムで撮ると、毎週毎週60分のドラマを上げることなんて到底無理なのだ。しかしマルチカメラ撮影なら何度も小刻みな撮影をする必要がなく、時間に余裕ができる。その分を役者は演技の準備に割くことができ、より優れた演技が期待できる上に、俳優のテンションを維持したまま撮影することができる。マルチカメラ撮影を経験したTV出身のルメットらしい発言だ。
また、シングル・カメラ撮影にはフィルムの節約という意味もあった。フィルムは高価である。何台ものカメラで同時に撮影して、そのシーンがNGとなれば、無駄になるフィルム代は嵩む。ところがHDTV撮影であれば、フィルム代など気にせずに気に入らなければ何度でもNGが出せる。その他にもフィルムほど頻繁にテープを交換する必要もなく、そのケアも格段に楽など、HDTVでのマルチカメラ撮影には様々なメリットがある。もうフィルムでのシングル・カメラ撮影にこだわる必要はないわけだ。
プレミアを見る限り、このマルチカメラ撮影はほとんど気にならなかった。完全なマルチカメラではなく、所々シングル・カメラを交えて切り返しの構図も交えているためだと思われる。確かに法廷のシーンなんて、被告、原告、裁判官のそれぞれの視点がないと絶対盛り上がりに欠けるから、当然その辺は押さえているということだろう。要するに全編マルチカメラでなく、必要な時に必要な手段をとる、ということであるようだ。
内容の方も、これまでのルメット作品に較べて特に見劣りがするというようなこともない。NBCの「ロウ&オーダー (Law & Order)」やFOXの「アリーmyラブ」、ABCの「プラクティス」等、アメリカには法廷ドラマは多く、その歴史も長い。しかしリアリティという点では、私の見る限り「センター・ストリート」が最も現実に一番近いのではないか。番組の冒頭、法廷に出廷を求められた被告が次々と判決を言い渡される。被告や弁護人に意見を聞くまでもなく、ほとんど裁判官に扮するアラン・アーキンやラターニャ・リチャードソンが喋りっぱなしで勝手に判決を言い渡すだけという印象を受ける。一つの判決にかける時間はわずか2分。そのスピードでとにかく積もりに積もっている未決事件を次々と処理していかないと、現実に追いつかないのだ。こういった時間に追われながら精一杯自分でやれるだけの仕事をする、というような緊迫感は非常によく出ていた。
演じているものの中では、主演のリフキン判事に扮するアーキンが最もいい。私はこれまでアーキンをあまり人間味のないエキセントリックな役者だとばかり思っていて、こんな厳しいながらも人情味があるという難役がこなせるうまい役者だとはまったく知らなかった。他もシムズ判事に扮するリチャードソン、新米検事補のシンシアに扮するポーラ・デヴィック、その同僚ボビーを演じるジョゼフ・ライル・テイラーら、皆悪くない。流石にレヴェルは高い。昨年のTNTの「ブル」といい、ベイシックのケーブル・チャンネルでもこのくらいのオリジナル番組が出てくるのは嬉しい驚きである。皆頑張っているなあ。
追記 (2001年3月):
普段は番組がキャンセルになったり、よほど話題になるのでもない限り、こう追加して書いたりはしないのだが、この番組については一言。プレミアでは、さっさと釈放した若者が警官を射殺したことが問題となってアーキン扮するリフキン判事が世論の非難にまみれるのだが、結構面白かったので、滅多にないことだが、その後の回も見てたりした。そしたら、次やその次の回の方が格段に面白いのだ。
非難の矢面にさらされたリフキン判事は、彼を辞めさせようとする権力内部の人間、彼の味方をする人間などのパワー・ゲームの真っ只中に巻き込まれる。いやあ、それが無茶苦茶面白いのだ。さすがルメット、この緊張感を持続する演出にはまったく感心させられる。プレミアでボビーが心ならずもオフィスのコンピュータのレコードを操作してしまうのもちゃんと伏線になっていて、それをねたにボビーと恋仲になるシンシアはリフキン判事に不利な証言をするよう迫られる、といった具合だ。「ロウ&オーダー」や「プラクティス」もよくできた番組だと思うが、私は断然「100センター・ストリート」を推す。実はこの番組こそ今シーズン最もできのいい番組だ。
